「電験3種」カテゴリーアーカイブ

平成29年度電験3種問題解説・理論問7

【解答】(1)

このような抵抗の組み合わせ回路は、単純化できる部分から順に単純化していきます。

まず、一番右の1Ωと右から2番目の1Ωは直列接続されているので2Ωの抵抗ひとつに置き換えることができます。すると、右から3番目の2Ωとこの2Ωは並列接続されていることになるので、この合成抵抗は1Ωです。右から4番目の1Ωとこの1Ωは直列接続なので、これらの合成抵抗は2Ωとなり、右から5番目の2Ωと並列であることから、これとの合成抵抗は1Ωです。したがって、この回路は、

  • 12Vの電源の+端子~1Ω~1Ω~12Vの電源の-端子

と接続されているだけの回路に単純化されてしまいます。したがって回路に流れる電流は6Aとなり、(ア)の選択肢は「大きい」です。

電流の正体は電子(自由電子)の流れですが、歴史的な経緯より、電流が流れる向きと電子の流れる向きは逆と定義されています。したがって、(イ)の選択肢は「上から下」です。

この回路は、12Vの電源に、2本の1Ωの抵抗が直列に入っている回路と等価です。したがって、個別の抵抗で消費される電力は、電源が供給する電力に対して半分ずつです。これより(ウ)の選択肢は「0.5」です。なお、問題中に「0.25sの間に」とありますが、この値を計算に使う必要はありません。

抵抗で消費された電力は熱エネルギとなります。これは空気中などに放散されていきますが、移動する熱量は、発熱体とその周囲との温度差にほぼ比例します。たとえば、暖かい時期は熱い飲み物が冷めにくく、真冬では熱い飲み物もすぐに冷めていくことからも理解できると思います。したがって、(エ)の選択肢は「ほぼ比例」です。

平成29年度電験3種問題解説・理論問6

【解答】(5)

この回路が定常状態ということは、

  • コイルは単なるゼロΩの導線
  • コンデンサは完全に切り離された状態

とみなせることになります。したがって、C1とC2を取り去り、L1とL2を短絡した回路に置き換えると、これは100Vの電池に20Ωと30Ωの抵抗が直列に接続された回路とみなすことができ、回路に流れる電流は2Aと求まります。

さて、コンデンサに蓄えられる静電エネルギとコイルに蓄えられる磁気エネルギは、

  • CファラドのコンデンサにVボルトの電圧が掛かっているとき…CV^2/2
  • LヘンリーのコイルにIアンペアの電流が流れているとき…LI^2/2

で求められます。ここで、C1にかかる電圧はR1にかかる電圧と同じで、2A×20Ω=40V、L1に流れる電流は2A、C2にかかる電圧は2A×30Ω=60V、L2に流れる電流は2Aであることから、

  • C1の静電エネルギ…(1/2)×400×10-6×402
  • C2の静電エネルギ…(1/2)×600×10-6×602
  • L1の磁気エネルギ…(1/2)×20×10-3×22
  • L2の磁気エネルギ…(1/2)×40×10-3×22

で求まり、これを全部足すと1.52Jとなります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問5

【解答】(3)

大サービス問題だと気付きましたでしょうか。

一番上の5Ωの両端の線をたどると、一周まわって短絡されていることが分かります。したがってこの5Ωには電流が流れないので、取り去ることができます。

次いで2本の10Ωの両端をたどると、こちらも2本が並列接続されていることが分かります。したがって、この回路は、25Vの電源に、20+5=25Ωの抵抗が接続されているものと同じですから、電流は1Aです。

 

平成29年度電験3種問題解説・理論問4

【解答】(5)

知識問題です。BH曲線とは、磁性体にHの磁場(横軸)を与えたとき、内部に発生する磁束密度B(縦軸)との関係を描いたグラフです。

まず原点から飽和磁束密度まで磁界の強さを大きくした後、外部磁界を取り去ると磁性体内部にはaの磁束密度が残ることになります。これを残留磁気といい、磁性体内部の微小磁石が外部からの磁場によって向きを変えられた後、元に戻らない微小磁石が多ければ多いほどaの値は大きくなります。この状態から逆方向に外部磁場を与えていくと、磁性体内部の微小磁石の合成磁束がゼロになる点があり、これがグラフ中のbとなります。

このヒステリシス曲線が囲む面積が大きければ大きいほど、外部から与えた磁場に対して磁性体内部の微小磁石の向きが変わりにくいことを表し、変圧器などにはヒステリシス曲線に囲まれる面積が小さいものが、永久磁石にするためには面積が大きいものが適していることになります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問2

【解答】(2)

コンデンサの静電容量Cは、極板間距離をd、極板面積をS、極板間の誘電率をεとして、

  • C=ε・S/d

で求められます。

静電容量CのコンデンサにVの電圧を掛けたとき、蓄えられる電荷量Qは

  • Q=CV

で与えられ、この時に蓄えられる静電エネルギWは

  • W=(1/2)QV=(1/2)CV^2=(1/2)(V^2/C)

で求められます。また、距離dの間に電位差Vがある場合、この間の電界の大きさEは、

  • E=V/d

となります。以上の関係式を用いれば答えを導くことができます。

まず、最初の状態でコンデンサに蓄えられた電荷量を求めます。なお、具体的な電源電圧は与えられていないので、コンデンサAの電圧を基準に考えます。

  • コンデンサA…電源電圧V、静電容量εS/d 、蓄えられた電荷量εSV/d
  • コンデンサB…電源電圧V、静電容量2εS/d 、蓄えられた電荷量2εSV/d
  • コンデンサC…電源電圧2V、静電容量εS/2d 、蓄えられた電荷量εSV/d

次いで、これを用いて各コンデンサの静電エネルギを求めれば良いのですが、文字式を用いて計算すると式展開が大変になるので、分かりやすくするためにコンデンサAの静電容量を1F、コンデンサAの電源電圧を1Vと決めてしまいます。すると、

  • コンデンサA…電源電圧1V、静電容量1F、蓄えられた電荷量1C
  • コンデンサB…電源電圧1V、静電容量2F、蓄えられた電荷量2C
  • コンデンサC…電源電圧2V、静電容量0.5F、蓄えられた電荷量1C

と簡単化することができます。これより、各コンデンサの静電エネルギは、

  • コンデンサA…0.5J
  • コンデンサB…1J
  • コンデンサC…1J

となり、合計2.5Jです。これらを並列にした場合、合成静電容量は和になりますから、

  • 1+2+0.5=3.5F

です。また、蓄えられた合計の電荷量は4Cであることから、静電エネルギは

  • Q^2/2C=16/7=2.29J

となります。したがって、

  • 2.29/2.5=0.92

が求まります。

なお電源から切り離されている以上蓄えられた電荷量は変化しませんが、静電エネルギは変化します。これは並列接続されたコンデンサの間で電荷を移動させるエネルギとして消費されます。

平成29年度電験3種問題解説・理論問1

9月17日にSAT社のスタジオにて今年度の電験3種の試験問題解説動画を収録するのですが、それに当たって解説を作成しています。出し惜しみするようなモノでもないので、解説を作り次第ここに上げていこうと思います。

【解答】(2)

電気力線は、電界の様子を表す仮想的な線で、電界の様子を可視化するために考えられたものです。電荷と磁荷、電界と磁界は相似性がありますが、電荷の電気力線に対応するものは磁荷の磁力線ですから、N極からS極に向かう磁力線を思い浮かべれば回答できるでしょう。

  • 同じ向きの電気力線(磁力線)どうしは反発しあう(交差しない)。
  • 電気力線は正の電荷(磁力線はN極)から出て、負の電荷(磁力線はS極)に入る。
  • 電気力線(磁力線)は途中で分岐したり、他の電気力線(磁力線)と交差しない。
  • 任意の点の電気力線(磁力線)の密度は、その点の電界(磁界)の強さを表す。
  • 任意の点における電界(磁界)の向きは、電気力線(磁力線)の接線の向きと一致する。

なお、Qクーロンの電荷から、電気力線はQ/ε本出る、と定義されています。

 

 

SAT電験3種講座 機械 質問回答(分巻式直流発電機の負荷特性)

直流電動機(2)-b分巻式

お世話になります。機械での質問です。発電回路の場合、界磁電流が下がると、界磁電流により発生する磁界も弱くなる。そうなると、発電機に対する逆起電力が少なくなり、発電回路の電流値(電圧値)は増える。とわたしは思ったのですが、   先生は、発電機を動かし続けると電圧(電流)は落ちて行くとおっしゃってます、すいません。どうしてでしょうか、他励式を基本に考えているつもりなのですが、理解出来ませんでした。宜しくお願い致します。

おっしゃる通り、界磁回路の電圧が下がると界磁電流が下がり、発生する磁界も弱くなります。すると、発電コイルに誘起される電圧も低下する、ここまでは合っています。

分巻式の場合、そうなると界磁回路の電圧が低下するため、界磁電流がさらに低下し、磁界低下→誘起電圧低下→界磁電圧低下→界磁電流低下→磁界低下→誘起電圧低下…というサイクルになります。

このままではどんどん誘起電圧が低下してゼロになってしまうような気がしてしまいますが、発電機には負荷が接続されていることを忘れてはいけません。

発電機の発生電圧が低下すれば負荷に流れる電流も減少しますから、ある一定のところで界磁電流・誘起電圧・負荷電流が平衡した点に落ち着きます。

従って、負荷電流を増加させる(負荷抵抗を小さくする、負荷を重くする)と、それによって段々と発電電圧は落ちるものの、ある程度のところに落ち着いて運転が継続される、という特性になります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成28年 理論 問15 抵抗のΔ回路に流れる電流の計算)

電験3種理論平成28年度過去問からです。問15のB問題の解説で

  1. 電源から見ると3分の8rの抵抗が接続されてるとありますがどういう流れで3分の2rから3分の8rになったのか?
  2. rと2rの電流比は2対1というのはrに2、2rに1ということか?
  3. 8r分の3V×3分の1の3分の1はどこからでてきたのか?

以上の3点の回答お願いします!

×部分で切り離した回路を考えると、

a端子ーr-(rと2rの並列抵抗)ーr-c端子

になります。rと2rの並列抵抗は2r/3ですから、a端子とc端子の間で考えると、これにrが2個直列に追加されたものになるので、2r/3+6r/3=8r/3です。

その通りです。rと2rを並列にした場合、流れる電流は抵抗の逆比で2:1になります。(オームの法則で証明できます。I=V/Rなので、Vが一定のときIはRに反比例するため)

これは②と同じことですが、rと2rの並列抵抗に流れる電流を求めると、2:1になります。すなわち、この並列抵抗全体に流れる電流を1とすれば、rに流れる電流は2/3、2rに流れる電流は1/3になります。

端子aから回路を通って端子cに抜ける電流のうち、図中Iは「rと2rの並列抵抗のうち、2r側に流れる電流」ですから、上述のように1/3が出てきます。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成28年 理論 問5 重ね合わせの原理を適用した回路)

H28理論過去問の問5についてですが、重ね合わせの原理を用いた回答をお教え下さい。よろしくお願い致します。

重ね合わせの原理は、「回路中の複数の電源について、1つを残して他の電圧源は短絡、電流源は解放して各部の電圧・電流を求め、それを電源の個数分だけ繰り返して重ね合わせる」という理論です。

従って、9Vの電池のうち3個を短絡して1個を残した回路が重ね合わせの原理を使った回路になります。

この回路は、9Vの電池から見ると、0.1Ωと、その次に(3個の0.1Ωと0.5Ω、合計4個の抵抗の並列)が入った回路になります。回路全体の抵抗値は0.13125Ωで9Vの電池から流れる電流は68.6Aとなりますから、0.5Ωに流れる電流は4.3Aとなり、電池が4個あるのでこれを4回重ね合わせて0.5Ωに流れる電流を求めると17.1Aです。これより電力を求めると、確かに147Wとなり、正解と一致します。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問17 インピーダンスの計算)

過去問124ページ 理論 問17 の(a)問題で、【負荷抵抗=5+j5】が、5√2になるまでの計算過程がいまいち分からないので、教えて下さい。

私は過去問の冊子を持っていないため間違っていたら申し訳ないのですが、内容からして平成27年の問17かと思います。

RL直列回路のインピーダンスは、(RL直列素子に掛かる電圧)÷(RL直列素子に流れる電流)で求められます。

ここで、直列ですから電流はいかなる場合でも同じですので、ある電流が流れた場合のRL直列の電圧に注目することになります。

すると、5Ωの抵抗は電流を全く同じ位相でその電流の5倍の電圧を発生させることになります(オームの法則より、V=RIなので)。

コイルは、電流に対して電圧が90°進んで発生し、リアクタンスが5Ωですから、電流の5倍の電圧を発生させることになります。

従って、互いに位相差が90°である電圧を合成することになるので、三平方の定理からV^2=5^2+5^2で求められることになり、

√50=√(5×5×2)=5√2

が求まることになります。