①スイッチSが「開」で運転時の電圧波形(Ed):LがあるためEdの発生時間が長くなるということは理解できますが、ダイオードがあるのになぜ電圧Edがマイナス側になるのですか?
コイルの特性について確認します。電流が流れていない状態から電圧をかけると、コイル自身に流れる電流が増加するのを嫌い、時間が経つにつれて徐々に電流が流れ出すという性質と、コイルにすでに電流が流れている場合、それを絶とうとしても電流の変化を嫌い、コイル自体が(コイルを貫いて生じている次回のエネルギーをもとにして)電圧を発生し、電流を流し続けようとする性質です。
これをもとにして、交流電源の電圧が0→最大値と増加する部分について考えると、負荷のコイルにかかる電圧も時間とともに増加し、コイルに流れる電流は90度の遅れ位相差をもって増加していきます。交流電源の電圧が最大値→0と減少する部分について考えると、これも90度の遅れ位相差をもってコイルの電流が変化(増加)していきます。
さて、交流電源の電圧が0になった瞬間について考えます。コイルは電源電圧に対して90度の遅れ位相差を持った電流がすでに流れています。コイルは、一度流れた電流を流し続けようとするので、コイルの下側にプラスの電圧を発生させます。すると、コイルの下側端子→(0Vの交流電源)→ダイオード→コイルの上側端子の順で電流が流れ続けることになります。さらに時間が進んで、交流電源が下側に+の電圧を発生させている状態になっても、コイルが発生する、コイルの下側端子をプラスとした電圧よりも、交流電源の電圧の方が低いうちは、回路に電流が流れ続けます。この状態でedの電圧を測定すると、上側端子よりも下側端子の方が高い電圧ですから、答えの波形は波形1のようになります。なお、コイルの発生電圧が交流電源の電圧よりも小さくなった時点で回路に流れる電流はゼロとなります。
(簡単化のために、より具体的に、例えばコイルの逆起電圧が下側に10V、交流電源電圧が下側に5Vとなっている瞬間をイメージしてもらえば、edがマイナスの電圧で、かつ電流が流れ続けるという状況が理解できるかと思います)
②スイッチSが「開」で運転時の電流波形(Id):Edにマイナス電圧が発生するのになぜIdはマイナスの電流が流れないのですか?ダイオードにはマイナスの電圧はかかるけどマイナスの電流は流れないという法則があるのですか?
問題の波形5に関しての疑問かと思います。これも、「コイルにすでに電流が流れている場合、その電流を減らそうとするとコイルはそれに逆らって、電流を継続させる働きをする向きに電圧を発生させる」原理で説明できます。コイルLは下向きに電流が流れるので、その電流を減らそうとする外力(電源電圧が低下する、など)に対して、下側にプラスの電圧を発生させて電流を流し続けようとします。すると、コイル-R-交流電源-ダイオード-コイルの回路が構成されるので、その途中に入っているダイオードに順方向電圧がかかればダイオードは電流を流し、逆方向電圧がかかれば電流はゼロになる、という動作以外の何物でもありません。
③スイッチSが「閉」で運転時の電流波形(Id):なぜスイッチSに電流が流れている間、Edが0Vなのですか?
ダイオードは、あくまでも「順方向に電圧がかかればいくらでも電流が流れ、その両端に発生する順電圧は非常に低い」「逆方向に電圧がかかれば、電流を全く流さない」という性質を発揮しているだけです。なので、スイッチを閉にしてしまえば、「コイルが電流を流し続けようとして下側をプラスとした電圧を発生」している間は、コイルと(スイッチで接続された)ダイオードの間で電流が循環します。ダイオードの順方向電圧は非常に低いので(この問題では、理想的なものとしてゼロVとしている)、この間のコイル両端の電圧はゼロとなります。