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平成29年度電験3種問題解説・理論問8

【解答】(5)

第二種電気工事士レベルで解けるサービス問題です。

まず、R1とR2の並列抵抗を1つの抵抗とみなすと、単純なRL直列回路となります。100Vの電源から20Aの電流が流れだしていますから、RL直列部分のインピーダンスは5Ωです。

RL直列回路のインピーダンスは、コイルのリアクタンスと抵抗値の二乗平均ですから、

  • √(4^2+R^2)=5

となります。これより、R1とR2の並列抵抗Rは3Ωと求まります。

出題文よりR1とR2の電流比は1:3なので、抵抗値は3:1であることから、

(R1×R2)÷(R1+R2)=(3R2×R2)÷(3R2+R2)=(3/4)R2=3

以上より、R2は4Ωと求まりますから、R1はその3倍の12Ωと求まります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問7

【解答】(1)

このような抵抗の組み合わせ回路は、単純化できる部分から順に単純化していきます。

まず、一番右の1Ωと右から2番目の1Ωは直列接続されているので2Ωの抵抗ひとつに置き換えることができます。すると、右から3番目の2Ωとこの2Ωは並列接続されていることになるので、この合成抵抗は1Ωです。右から4番目の1Ωとこの1Ωは直列接続なので、これらの合成抵抗は2Ωとなり、右から5番目の2Ωと並列であることから、これとの合成抵抗は1Ωです。したがって、この回路は、

  • 12Vの電源の+端子~1Ω~1Ω~12Vの電源の-端子

と接続されているだけの回路に単純化されてしまいます。したがって回路に流れる電流は6Aとなり、(ア)の選択肢は「大きい」です。

電流の正体は電子(自由電子)の流れですが、歴史的な経緯より、電流が流れる向きと電子の流れる向きは逆と定義されています。したがって、(イ)の選択肢は「上から下」です。

この回路は、12Vの電源に、2本の1Ωの抵抗が直列に入っている回路と等価です。したがって、個別の抵抗で消費される電力は、電源が供給する電力に対して半分ずつです。これより(ウ)の選択肢は「0.5」です。なお、問題中に「0.25sの間に」とありますが、この値を計算に使う必要はありません。

抵抗で消費された電力は熱エネルギとなります。これは空気中などに放散されていきますが、移動する熱量は、発熱体とその周囲との温度差にほぼ比例します。たとえば、暖かい時期は熱い飲み物が冷めにくく、真冬では熱い飲み物もすぐに冷めていくことからも理解できると思います。したがって、(エ)の選択肢は「ほぼ比例」です。

平成29年度電験3種問題解説・理論問6

【解答】(5)

この回路が定常状態ということは、

  • コイルは単なるゼロΩの導線
  • コンデンサは完全に切り離された状態

とみなせることになります。したがって、C1とC2を取り去り、L1とL2を短絡した回路に置き換えると、これは100Vの電池に20Ωと30Ωの抵抗が直列に接続された回路とみなすことができ、回路に流れる電流は2Aと求まります。

さて、コンデンサに蓄えられる静電エネルギとコイルに蓄えられる磁気エネルギは、

  • CファラドのコンデンサにVボルトの電圧が掛かっているとき…CV^2/2
  • LヘンリーのコイルにIアンペアの電流が流れているとき…LI^2/2

で求められます。ここで、C1にかかる電圧はR1にかかる電圧と同じで、2A×20Ω=40V、L1に流れる電流は2A、C2にかかる電圧は2A×30Ω=60V、L2に流れる電流は2Aであることから、

  • C1の静電エネルギ…(1/2)×400×10-6×402
  • C2の静電エネルギ…(1/2)×600×10-6×602
  • L1の磁気エネルギ…(1/2)×20×10-3×22
  • L2の磁気エネルギ…(1/2)×40×10-3×22

で求まり、これを全部足すと1.52Jとなります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問5

【解答】(3)

大サービス問題だと気付きましたでしょうか。

一番上の5Ωの両端の線をたどると、一周まわって短絡されていることが分かります。したがってこの5Ωには電流が流れないので、取り去ることができます。

次いで2本の10Ωの両端をたどると、こちらも2本が並列接続されていることが分かります。したがって、この回路は、25Vの電源に、20+5=25Ωの抵抗が接続されているものと同じですから、電流は1Aです。

 

平成29年度電験3種問題解説・理論問4

【解答】(5)

知識問題です。BH曲線とは、磁性体にHの磁場(横軸)を与えたとき、内部に発生する磁束密度B(縦軸)との関係を描いたグラフです。

まず原点から飽和磁束密度まで磁界の強さを大きくした後、外部磁界を取り去ると磁性体内部にはaの磁束密度が残ることになります。これを残留磁気といい、磁性体内部の微小磁石が外部からの磁場によって向きを変えられた後、元に戻らない微小磁石が多ければ多いほどaの値は大きくなります。この状態から逆方向に外部磁場を与えていくと、磁性体内部の微小磁石の合成磁束がゼロになる点があり、これがグラフ中のbとなります。

このヒステリシス曲線が囲む面積が大きければ大きいほど、外部から与えた磁場に対して磁性体内部の微小磁石の向きが変わりにくいことを表し、変圧器などにはヒステリシス曲線に囲まれる面積が小さいものが、永久磁石にするためには面積が大きいものが適していることになります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問3

【解答】(2)

2つのコイルが自己インダクタンスL1・L2と相互インダクタンスMを持つとき、それらを和同接続(互いに同じ方向に磁束を発生させ、それが互いを貫いている状態)の場合の合成インダクタンスは

  • L1+L2+2M

差動接続(互いに逆方向に磁束を発生させ、それが互いを貫いている状態)の場合の合成インダクタンスは

  • L1+L2-2M

であることを知っていれば答えが求まります。

ここで、コイル1とコイル2は共に自己インダクタンスがLであることから、

  • 2L+2M=2.0
  • 2L-2M=1.2

を解けば正解が求まります。

平成29年度電験3種問題解説・理論問2

【解答】(2)

コンデンサの静電容量Cは、極板間距離をd、極板面積をS、極板間の誘電率をεとして、

  • C=ε・S/d

で求められます。

静電容量CのコンデンサにVの電圧を掛けたとき、蓄えられる電荷量Qは

  • Q=CV

で与えられ、この時に蓄えられる静電エネルギWは

  • W=(1/2)QV=(1/2)CV^2=(1/2)(V^2/C)

で求められます。また、距離dの間に電位差Vがある場合、この間の電界の大きさEは、

  • E=V/d

となります。以上の関係式を用いれば答えを導くことができます。

まず、最初の状態でコンデンサに蓄えられた電荷量を求めます。なお、具体的な電源電圧は与えられていないので、コンデンサAの電圧を基準に考えます。

  • コンデンサA…電源電圧V、静電容量εS/d 、蓄えられた電荷量εSV/d
  • コンデンサB…電源電圧V、静電容量2εS/d 、蓄えられた電荷量2εSV/d
  • コンデンサC…電源電圧2V、静電容量εS/2d 、蓄えられた電荷量εSV/d

次いで、これを用いて各コンデンサの静電エネルギを求めれば良いのですが、文字式を用いて計算すると式展開が大変になるので、分かりやすくするためにコンデンサAの静電容量を1F、コンデンサAの電源電圧を1Vと決めてしまいます。すると、

  • コンデンサA…電源電圧1V、静電容量1F、蓄えられた電荷量1C
  • コンデンサB…電源電圧1V、静電容量2F、蓄えられた電荷量2C
  • コンデンサC…電源電圧2V、静電容量0.5F、蓄えられた電荷量1C

と簡単化することができます。これより、各コンデンサの静電エネルギは、

  • コンデンサA…0.5J
  • コンデンサB…1J
  • コンデンサC…1J

となり、合計2.5Jです。これらを並列にした場合、合成静電容量は和になりますから、

  • 1+2+0.5=3.5F

です。また、蓄えられた合計の電荷量は4Cであることから、静電エネルギは

  • Q^2/2C=16/7=2.29J

となります。したがって、

  • 2.29/2.5=0.92

が求まります。

なお電源から切り離されている以上蓄えられた電荷量は変化しませんが、静電エネルギは変化します。これは並列接続されたコンデンサの間で電荷を移動させるエネルギとして消費されます。