SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成26年 機械 問10 スイッチング回路における電圧・電流波形)

①スイッチSが「開」で運転時の電圧波形(Ed):LがあるためEdの発生時間が長くなるということは理解できますが、ダイオードがあるのになぜ電圧Edがマイナス側になるのですか?

コイルの特性について確認します。電流が流れていない状態から電圧をかけると、コイル自身に流れる電流が増加するのを嫌い、時間が経つにつれて徐々に電流が流れ出すという性質と、コイルにすでに電流が流れている場合、それを絶とうとしても電流の変化を嫌い、コイル自体が(コイルを貫いて生じている次回のエネルギーをもとにして)電圧を発生し、電流を流し続けようとする性質です。

これをもとにして、交流電源の電圧が0→最大値と増加する部分について考えると、負荷のコイルにかかる電圧も時間とともに増加し、コイルに流れる電流は90度の遅れ位相差をもって増加していきます。交流電源の電圧が最大値→0と減少する部分について考えると、これも90度の遅れ位相差をもってコイルの電流が変化(増加)していきます。

さて、交流電源の電圧が0になった瞬間について考えます。コイルは電源電圧に対して90度の遅れ位相差を持った電流がすでに流れています。コイルは、一度流れた電流を流し続けようとするので、コイルの下側にプラスの電圧を発生させます。すると、コイルの下側端子→(0Vの交流電源)→ダイオード→コイルの上側端子の順で電流が流れ続けることになります。さらに時間が進んで、交流電源が下側に+の電圧を発生させている状態になっても、コイルが発生する、コイルの下側端子をプラスとした電圧よりも、交流電源の電圧の方が低いうちは、回路に電流が流れ続けます。この状態でedの電圧を測定すると、上側端子よりも下側端子の方が高い電圧ですから、答えの波形は波形1のようになります。なお、コイルの発生電圧が交流電源の電圧よりも小さくなった時点で回路に流れる電流はゼロとなります。

(簡単化のために、より具体的に、例えばコイルの逆起電圧が下側に10V、交流電源電圧が下側に5Vとなっている瞬間をイメージしてもらえば、edがマイナスの電圧で、かつ電流が流れ続けるという状況が理解できるかと思います)

②スイッチSが「開」で運転時の電流波形(Id):Edにマイナス電圧が発生するのになぜIdはマイナスの電流が流れないのですか?ダイオードにはマイナスの電圧はかかるけどマイナスの電流は流れないという法則があるのですか?

問題の波形5に関しての疑問かと思います。これも、「コイルにすでに電流が流れている場合、その電流を減らそうとするとコイルはそれに逆らって、電流を継続させる働きをする向きに電圧を発生させる」原理で説明できます。コイルLは下向きに電流が流れるので、その電流を減らそうとする外力(電源電圧が低下する、など)に対して、下側にプラスの電圧を発生させて電流を流し続けようとします。すると、コイル-R-交流電源-ダイオード-コイルの回路が構成されるので、その途中に入っているダイオードに順方向電圧がかかればダイオードは電流を流し、逆方向電圧がかかれば電流はゼロになる、という動作以外の何物でもありません。

③スイッチSが「閉」で運転時の電流波形(Id):なぜスイッチSに電流が流れている間、Edが0Vなのですか?

ダイオードは、あくまでも「順方向に電圧がかかればいくらでも電流が流れ、その両端に発生する順電圧は非常に低い」「逆方向に電圧がかかれば、電流を全く流さない」という性質を発揮しているだけです。なので、スイッチを閉にしてしまえば、「コイルが電流を流し続けようとして下側をプラスとした電圧を発生」している間は、コイルと(スイッチで接続された)ダイオードの間で電流が循環します。ダイオードの順方向電圧は非常に低いので(この問題では、理想的なものとしてゼロVとしている)、この間のコイル両端の電圧はゼロとなります。

 

 

「SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成26年 機械 問10 スイッチング回路における電圧・電流波形)」への5件のフィードバック

  1. 解説読ませていただきました。

    還流ダイオードを入れることで、
    コイルに発生する電圧をなくせるのと、コイルに蓄えたエネルギーを利用でき、力率が上がることはわかりました。

    しかし、今回の回路では還流ダイオードがなくても電源を通して電流が負荷に流れているのでスイッチを閉じても開いても変わらないように見えてしまいました。

    スイッチを閉じて還流ダイオードを利用すると電源からの影響を受けないため、コイルに蓄えた残留磁気をすべて利用できるということでしょうか?

    1. はい、大雑把に言えばそういう事になります。
      「還流ダイオードが無くても電源を通じて電流が負荷に流れている」というのは確かにそう見えるのですが、電源は交流ですから、位相が遅れた負荷電流が流れようとしているタイミングでは電源は既に逆向きの電圧を持っている状態になるため、コイルのリアクタンス作用による電圧と電源電圧が相殺し合って電流が流れなくなってしまう訳です。
      ここで還流ダイオードを入れると、リアクタンスによる電流が電源の電圧と打ち消し合う事なく流れるため、残留磁気を全て利用して流し切ることができることになります。

      1. お忙しい中、返信ありがとうございます。
        電源が交流ということを考慮したら納得できました。ご解説ありがとうございました。

  2. 読ませて頂きましたが、
    以下の理解で良いのか教えてください。

    (ア)波形1
    交流電源が逆になるタイミングでコイル作用によりidを流す電圧をコイルが発生させるが、電源の影響があるためにedがマイナスまで振れる。
    (電圧イメージ:ed=L+R+交流電源であり、L=R+交流電源)
    (ウ)波形2
    交流電源が逆になるタイミングでコイル作用によりidを流す電圧をコイルが発生させるが、還流ダイオードの経路からidが流れるために、edに電圧を発生させる必要がない。
    (電圧イメージ:ed=L+Rであり、L=R)

    1. コメント有難うございます。先週頭より風邪を引いておりまして、遅くなりました。
      >(ア)波形1
      それで大丈夫です。電源電圧がマイナス側に振れだしたときでも、コイル作用で発生している電圧と差し引きした結果ダイオードが導通する間は電流が流れ続ける、したがってこんな感じの波形になる訳です。
      >(ウ)波形2
      その通りです。

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