SAT電験3種講座 理論 質問回答(可動鉄片形計器の性質)

可動鉄片形計器についての質問です。直流で使用するには、鉄ブタ部分が磁化する影響で、交流専用とありました。もし、一度直流で使用してしまうと、交流計器での使用は磁化するので使用出来ないのでしょうか?

一度磁化してしまった鉄片でも、その後交流の交番磁界を与えられているうちに、段々と偏った磁化が消えていくという性質があります。したがって、直流で使用して鉄片が偏って磁化してしまっても、交流で使用しているうちに元に戻ります。

このような性質を積極的に活用したのが消磁器(脱磁器とも言います)という装置で、例えば磁化してしまったドライバの磁化を消したい場合など、消磁器を使って交流磁界を与えることで磁化を中和するということが行われています。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成19年 機械 問1・平成23年 機械 問16 直流電動機の性質)

機械編のテキストのP9の例題の質問です。はじめの例題でE=kΦNでこれを機械出力P=EIに代入するとp=(kΦN)Iになり、どうして解答のp=kNI^2になるのですか?

直流直巻電動機は、固定電磁石として回転コイルに対して磁界を与える界磁巻線と、磁界を発生しながら回転し、界磁によって与えられた磁界との間で磁石の吸引・反発力を生み出す回転コイルの巻線とが直列に接続されているのが特徴です。

小学校の理科の電磁石の実験でも分かるように、電磁石の強さは、流す電流に比例します。従って、界磁巻線が作る磁界の強さΦは、比例定数をkとしてΦ=kI(電流に比例する値)として表すことができます。

一方、回転コイルの逆起電圧は、界磁電流をIとして、界磁によって与えられた外部磁界Φ=kIとコイルの巻数Nに比例するのでkNΦ=k’NI(左辺のkとは異なる定数になるのでk’としました)であり、それと回転コイルに流れる電流Iを掛けたものが出力Pとなるのですが、前述のように界磁巻線と回転コイルの巻線は直列ですので、結局k’NI×IでIが2乗になるわけです。

次の例題で逆起電力を求めるのに電動機が600rpmで回転しているときの誘電起電力200Vに2.2と0.5を掛けていますが、電機子に発生する起電力は磁束と回転数に比例するということで2.2をかけているのですか?2.2と0.5を掛けているのはどうしてですか?

2.2を掛けている理由はその通りです。これも小学校の理科の実験で、コイルに棒磁石を入れると電流が流れるという実験があったと思いますが、棒磁石をゆっくり入れると小さな電流、素早く入れると大きな電流が流れました。これは、コイルに発生する電圧は、磁界の変化の速度に比例するからです。電動機の回転数が速いほど、回転コイルから見た磁界の変化速度も速くなりますから、回転数が2.2倍だと逆起電圧も2.2倍ということになります。

0.5は、界磁電流を半分にしたためです。回転コイルに対して与えられる磁界は、固定された電磁石である界磁巻線によって与えられますが、当然この巻線に流す電流が大きければ大きいほど強い磁界を発生するわけです。界磁電流が半分なら、発生する磁界も半分、したがって回転数が同じであれば、界磁電流を半分にした時に回転コイルに発生する逆起電圧も半分です。

そしてトルクT=KΦIより、界磁電流半分で同一トルクをうむためには電機子電流が2倍必要と書いてありますが、ここの意味が理解できませんでした。

最初の項で書きました通り、電動機は、固定された電磁石によって発生する磁界と、回転コイルによって発生する磁界同士が反発したり引きつけ合ったりする力を用いて電力を機械的な力に変えています。したがって、生み出す力は、回転コイルに流れる電流と、固定電磁石に流れる電流の両方に比例することになります。

以上のことより、界磁電流を半分にするというのは、固定電磁石が作り出す磁力を半分にすることを意味していますから、その前と同じだけの力を生み出すためには、回転コイルに流す電流を2倍にしなくてはいけないわけです。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コンデンサの静電エネルギ計算)

理論101ページ例題の8×10の-6乗と、8×10の-3乗がどこから、出て来たのか理解出来ません。答えが、なぜ 2Jになるのかも分かりません。計算方法も教えて下さい。

Qクーロンの電荷が蓄えられ、極板間電圧がVボルトとなっているコンデンサに蓄えられる静電エネルギWは、

  • W=(1/2)QV

で求められます。エネルギとは、物理学的な仕事ができる能力のことで、物理学的な仕事は基本的に力×距離で定義されます。

コンデンサの性質として、Cファラドの静電容量を持つコンデンサにQクーロンの電荷を貯めると、極板間電圧はQ/Cとなりますから、先ほどの静電エネルギの式は

  • W=(1/2)QV=(1/2)CV^2=(1/2)(Q^2/C)

とも変形することができます。

この問題では、まず8μFのコンデンサに1000Vの電圧をかけて充電していますから、Q=CVより8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられることが求まり、次いでこのコンデンサの極板間距離を変えて静電容量を16μFにしていますから、

8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられた16μFのコンデンサに蓄えられる静電エネルギW

を求めれば良いことになります。したがって、W=(1/2)(Q^2/C)の式を用いて、

  • W=(1/2)×(8×10^-3)^2/(16×10^-6)

で値が求まることになります。

式の計算は、図を添付しますのでご確認ください。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成28年 理論 問9 並列共振と直列共振)

電験三種のH28年度の過去問題集の問9の並列共振角周波数ω2の値が求めれません。平方根の指数計算が間違っていると思うのですが、分かりません。教えてください。

この回路の並列共振は、CとL2の部分のみを考えれば求めることができます。もしかしたら、電源電圧Vを通ってC・L2と(L1+R)も並列になっているように見なせる?と思って複雑に考えすぎているのかもしれませんが、この場合L1とRは並列共振に関係しません。

何故かと言えば、並列共振というのは、LとCが直接並列接続されていて、コイルが蓄えるエネルギとコンデンサが蓄えるエネルギが1:1で相互に直接やり取りされる結果、この並列部分に流れ込む電流が見かけ上ゼロになってしまう現象だからです。もしLとCの間に電源が入っていれば(この回路で言えば、C-L1-R-V-Cのループ)、電源はエネルギを供給するので共振とはなりません。

念のため、直列共振と並列共振両方を計算したものを添付いたします。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問16 コンデンサのΔ-Y変換)

電験3種の理論のテキストP35の解説部分の9行目「Y回路を見ると、b-c間はCが2個直列になっています。この合成静電容量が4.5μFとなればよいので、求めるべきCは9μFです」この結論のプロセスがよくわかりません。計算も含めて教えていただけますでしょうか。

Y-Δ変換、またはΔ-Y変換というのは、抵抗やコイル、コンデンサなどの3素子で構成された3端子回路において、それらをΔ型に接続した回路とY型に接続した回路で、相互に変換できることを指しています。

出題の図でいえば、3μFのコンデンサ3個をΔ型に接続した左側の回路と、何かしらのコンデンサ3個をY型に接続した右側の回路で、外部から見た挙動が全く同じものにできるというわけです。

まず1つ目の考え方です。Δ型回路のb-c(あるいはc-d、b-dで考えても良いです)の2端子間を見ると、これは3μFのコンデンサ1個がb-c間に接続され、それにb-d、d-cと2個のコンデンサが直列に接続されたものの並列と見なせます。

3μFのコンデンサを2個直列にすると、直列接続したコンデンサの合成静電容量の式より、1.5μFになることが分かります。したがって、b-c間には、3μFのコンデンサと1.5μFのコンデンサが並列接続されているように見えます。コンデンサの並列静電容量は単純な足し算ですから、b-c間の静電容量は4.5μFに見えることになります。もちろん、c-d、b-d間も4.5μFに見えます。

ここで右のY回路を考えると、b-c間、c-d間、b-d間のどこを取っても、CμFのコンデンサが2個直列に接続されているように見えます。Δ-Y変換は、3端子から見た挙動が全く同じであれば良いので、C=9μFとすることによりb-c、c-d、b-d間どれを取っても4.5μFに見えることになり、これが答えとなります。

2つ目の考え方は、抵抗のΔ-Y変換と同じ式を使う方法です。

もしコンデンサではなく抵抗であれば、Δ型回路の抵抗値を1/3にしてY型に接続すれば変換できます。抵抗の代わりにコンデンサのリアクタンス1/ωCを使えば、1/ωCを1/3にしてY型に接続すれば変換できることになります。

ここで、(1/ωC)×(1/3)=1/ω3Cですから、Cを3倍つまり9μFが答えとなります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(抵抗とコイルの過渡現象)

Sのスイッチを閉じた状態でコイルが0オームになった際、電流がコイルに3A流れます。その際コイルと並列にある20オームの抵抗部分には電流が流れない認識でよろしいのでしょうか。

おっしゃる通り、コイルが0Ωで3Aの電流が流れているとき、並列の抵抗には全く電流が流れません。

一見、いくら何でも少しは電流が流れそう?な気がしてしまいますが、コイルが0Ωということはコイルの両端に発生する電圧も0ボルトです。ということは、並列になっている20Ωの抵抗の両端の電圧も0ボルトになります。

オームの法則から、抵抗に流れる電流は、I=V/Rで求められますので、V=0であれば電流Iも必ずゼロとなるわけです。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(三相交流のΔ結線とY結線)

理論テキストp77の例題の質問です。①の電源をΔ結線に変換した場合で200VのY型結線電源をΔ結線に変換した場合、線間電圧は200Vの√3倍になるのはどうしてですか?

三相交流というのは、互いに120°ずつ位相がずれた3個の単相交流電源を、Y型もしくはΔ型に接続したものです。具体的な波形をエクセルで作ってグラフにしたものを以下に示します。


ここでは、それぞれの電圧の最大値を1としてグラフにしているので、Δ結線にすれば線間電圧もそのまま最大値が1となります。

これらをY結線にした場合、互いに120°位相がずれた単相交流2つの電圧差が線間電圧となります。したがって、これもエクセルでグラフにしてみました。黒の線が位相差ゼロの電源、赤の線が位相差120°の電源、そして青の線が、それら2つの電圧の差を取ったものです。

グラフからも分かるように、差を取った最大値は約1.7倍になっていることが見て取れるかと思います。

なお、方眼紙に手書きでベクトル図を描いたものも添付します。cos30°の2倍、つまり(√3/2)×2で√3倍になるのが分かるかと思います。

理論のテキストの例題などを復習した後、過去問に取り組もうと思うのですがどのように進めていけばよろしいですか?

勉強の進め方は人それぞれ好みがありますから、このように勉強するのが絶対的に正しい、というものはありませんが、参考までに私なりの勉強方法は次の通りです。

ある程度理解できたと思ったら、過去数年分の過去問をまずは何も見ずに解いていき、今の知識で解けるものと解けないものに分けます。解けない問題については、ある程度途中まで見当がつく問題から順に、解説や資料、ネット上の情報などを活用して解き方を見つつ、何も見ずに解けるようになるまで練習していきます。これを繰り返すことで、次第に何も見ずにほとんどの問題が解けるようになるのではないでしょうか。

言うまでもなく、意味は分からないけど答えは何番、という暗記をしても無意味ですから、きちんと納得できる理屈を理解するというのが大切です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成19年 理論 問17a)

理論123ページの最後の項目の10/1.6×10の-19乗×1.69×10の 23乗の答えが3.7×10の-4になるのか、分かりません。計算方法を教えて下さい。

丁寧に計算したもののスキャンを添付しますので、ご確認いただければと思います。

「10の何乗」とか小数・分数が入り混じってくると計算が大変になりますが、一歩ずつ進めていただければ回答は出ますし、試験にも電卓が持ち込めますので、そう恐れる必要はないでしょう。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(平滑回路におけるコイルとコンデンサの働き)

電験3種機械14ダイオードに関する質問です。脈絡をなくすためにコイルは負荷に直列、コンデンサは並列に接続すると例題でおっしゃられていましたがなぜですか。

まず、コイルとコンデンサの性質についておさらいします。

コイルは、直流に対してはゼロΩ、そして交流に対しては、周波数に比例したリアクタンスを持ちます。つまり、直流を通し、交流を通しにくい性質を持ちます。

コンデンサは、直流に対しては電流を流さず、交流に対しては周波数に反比例したリアクタンスを持ちます。つまり、直流を阻止し、交流を通しやすい性質を持ちます。

脈流というのは、直流と交流が混ざっている状態です。したがって、負荷に向かって電流が流れる途中にコイルを入れると、直流は素通しし、交流に対しては通しにくいことになります。コンデンサを並列に挿入すると、負荷に流すべき直流は通過させず、負荷に流したくない交流成分を負荷に流さずコンデンサの中を通してしまう役割を果たします。

これらの働きにより、脈流を直流化して負荷に供給することができます。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成28年 機械 問4 過去問解説 誘導電動機の二次入力、滑りと機械出力)

解説の中で、回転速度、同期速度から、滑りを求めています。そこから、下記計算によって、二次入力を求めています。

  • 二次入力×(1-S)=機械出力
  • P×(1-0.045)=20

以上から、二次入力は、20.9W
この部分↓の考え方が分からないです。

  • 二次入力×(1-S)=機械出力

参考書をみると

  • 二次入力:二次銅損:機械出力=1:S:(1-S)

となる、とあります。(覚えるとのこと)

これからすると、確かにそのような式になるのですが、なぜそのようになるのでしょうか?

そのように覚えればいいのですが、納得のいく理解ができていません。テキストを見直しましたが、その理由がいまいちわかりませんでした。解説の方ををお願いいたします。

 

滑りが0のとき、どうして二次回路に誘起される電圧がゼロになるのですか?滑りが1のとき、二次回路に誘起される電圧が最大値になるのはどうしてですか?s=0.1のとき、二次回路に発生する電圧は静止状態のときの0.1倍になるのはどうしてですか?一次側一相に換算した全抵抗分が90Ωになるのはどうしてですか?

それでは、順番に考えていきます。

誘導電動機というのは、三相交流によって作られる回転磁界の中に、両端を低抵抗で短絡された(巻線型誘導電動機の場合は、その抵抗を外部に引き出して特性を調整できます)回転コイルが挿入されているものです。電源が投入されると、回転コイルを横切る磁界が加えられますから、ファラデーの電磁誘導の法則にしたがい、回転コイルである二次側回路にも電圧が誘起されます。

これはちょうど変圧器と全く同じ構造ですが、二次側のコイルが機械的に回転するところが変圧器と異なる部分です。変圧器であれば、一次側に50Hzの電流を流せば二次側も50Hzとなりますが、誘導電動機の場合、もし仮に二次側コイルが、電源周波数によって作られる磁界の回転速度(同期速度)の半分の速さで回転していたとすると、相対的な周波数は25Hzとなり、二次側回路に発生する電圧の周波数は25Hzです。これはちょうど、100km/hで走る車を止まって見れば100km/hですが、60km/hで走る車から見ると相対的に40km/hに見えるのと同じ原理です。

ここで、滑りsを定義します。滑りは、

  • 磁界の同期速度に対して、回転速度の差が同期速度の何割であるか

の値です。s=1なら二次側の回転速度はゼロで、s=0なら、回転速度=同期速度です。例えば、s=0.1であれば、回転速度は同期速度の90%となります。

このとき、二次側に誘起される交流の周波数は、同期速度と回転速度の差になりますから、s=0なら50Hz、s=0.1なら5Hzです。つまり、二次側コイルの回転速度によって、二次側コイルに流れる電流の周波数は50Hz~0Hzまで変化することになります。
以上の事を前提として、誘導電動機の二次側の等価回路を考えます。

二次側回路は、変圧器の二次側巻線に直列抵抗と直列リアクタンスが入ったものですから、下図のように表せます。

s=1、つまり停止時に誘起される電圧をE2、その時のコイルのリアクタンスをxとします。

回転が上がってくるとs値は1~0の間の値になります。ファラデーの電磁誘導則から、コイルに発生する電圧は単位時間あたりに横切る磁束に比例するため、二次側に誘起される周波数だけでなく電圧も低下していきます。

したがって、二次側回路の電圧源をsE2、そしてコイルのリアクタンスも周波数に比例しますからsx、そして抵抗は周波数や電圧・電流に関係なくrとなるため、上図のような回路と見なすことができます。この回路は、

  • 電圧がsE2
  • 負荷がr+sx

なので、二次回路に流れる電流は、図中にも書いたように

  • I=sE2/√(r^2+s^2x^2)

です。電圧・抵抗・リアクタンスを全てsで割っても回路電流は同じはずですから、図で書いたように

  • I=E2/√((r/s)^2+x^2)

と書くこともできます。

次に、この回路に機械的出力を生み出す負荷抵抗に相当する抵抗Rを入れます。先ほどの回路でr/sとした二次回路の抵抗をrに戻し、その代わりR=(r/s)-rと置くことで、図の回路の全体的な電圧・電流・抵抗・リアクタンスを同じにすることができます。

何故r/sをrに戻したかというと、二次回路に流れる電流Iは仮想的な値ではなく実電流であり、その実電流の2乗に、仮想的なr/sではなく実抵抗のrを掛けたもの(P=r×I^2)が実銅損になるからです。

Rは、もちろん実際に回路に挿入される実抵抗ではなく、機械出力となる仮想抵抗です。この仮想抵抗はどこに存在するかというと、一次巻線と二次巻線との相互作用により、二次巻線に誘起される力率1の電圧として現れます。

電気回路・交流回路の基本に立ち返って考えてみると、

  • 電流Iが流れたとき、電圧Vが発生すれば、それは抵抗R=V/I
  • 交流電流Iが流れたとき、それと全く同位相の電圧Vが発生すれば、それは実電力を消費する力率1の抵抗R=V/I

だったはずです。したがって、一次巻線との相互作用により、二次巻線に流れる電流Iと同相で電流を妨げる向きの電圧Vが発生すれば、それは仮想的に抵抗V/Iと同じなのです。この仮想抵抗で消費される電力は、もちろん熱となるのではなく、電動機の機械的出力となります。

この抵抗Rを挿入した回路において、実電流Iが流れたときの電力損失を求めると、全電力はI^2(R+r)、銅損はI^2r、そして機械出力はI^2Rとなり、これらの比は1:s:(1-s)となります。