電験3種過去問解説 平成25年理論問12

コイル(やコンデンサ)の過渡現象については良く出題されています。一見難しそうですが(確かに数学的な解析をしようと思えば微分方程式を解く必要があるので難しいです)、電験3種では定性的な性質を知っていれば十分解けます。

コイルに電圧を掛けた瞬間、コイルは内部に電流を流したくないので、電流を流さないように全力で抵抗します。しかし、外部から加えられた電圧に負けて徐々に電流を流していき、最後は可能な限り最大の電流を流す(=単なる0Ωの電線と同じになる)という特性を持ちます。これは何故かというと、電流を流すことによって発生する磁界が変化を嫌うからです。

逆に、今一定の電流が既に流れているコイルの電流を切断しようとすると、やはりコイルは変化を嫌うため、今現在流れている電流を維持するために辻褄の合う電圧を発生させて電流を継続して流そうとします。しかし、段々とエネルギが切れてしまい、最後は電流が0となって終わります。これも、磁界が変化を嫌うために起こる現象で、「今現在流れている電流を維持するために辻褄の合う電圧を発生」させるためのエネルギ源は磁界のエネルギなのです。

以上のことを押さえて回路を見ると、スイッチSを入れた瞬間、コイルは電流を流さないので回路は30Vの電源に10Ωと20Ωが単に直列に接続されたものと同じです。したがって、スイッチを入れた瞬間の電圧vは20Vです。この時点で答えは(4)か(5)に絞られます。

t=15msのとき、コイルには上から下に3Aの電流が流れています。ここでスイッチを切ると、コイルは上から下に3Aの電流が流れる状態を維持するために辻褄が合う電圧を発生させます。スイッチSを切ったとき、回路はコイルと20Ωが並列になった回路ですから、コイルが発生させる電圧は下側が+で60Vであることが分かります。したがって、答えは(4)です。

このように、コイルの性質を上手に使うと電源電圧よりも高い電圧を作り出すことができます。これを応用したのが、自動車の中で交流100Vが使えるようにするインバータや、カメラのストロボなどです。

電験3種過去問解説 平成26年理論問13

オペアンプを用いた増幅回路の増幅率の公式だけを暗記していた人には解けない問題です。

オペアンプは、次のような動作をします。

  • +入力端子の電圧>-入力端子の電圧のとき…出力電圧はどこまでも上昇する
  • +入力端子の電圧<-入力端子の電圧のとき…出力電圧はどこまでも下降する
  • +入力端子の電圧=-入力端子の電圧のとき…出力電圧の変動は止まる
  • 入力端子には電流が流れ込まない。出力端子はいくらでも電流を流しだし、あるいは吸い込むことができる

この性質を利用し、出力端子から入力端子側にフィードバックさせることで、入力電圧が微弱な変化をしてもすぐにそれに追従して、常に+入力端子と-入力端子の電圧が同じ電圧となる状態で使用するのがオペアンプ回路です。

さて、題意の回路において、仮にVIN=VOUT=5Vの状態を考えます。すると、オペアンプの-入力端子も5Vであり、回路内には一切電流が流れない状態で安定します。

ここで入力電圧を3Vに下げると、20kΩの右側が5V、左側が3Vですから、20kΩには右→左に電流が流れます。この電流はオペアンプの出力端子→10kΩ→20kΩ→入力端子と流れるので、オペアンプの-入力端子の電圧は5Vより下がります。すると、オペアンプの出力電圧は上昇します。どこまで行けばオペアンプの出力電圧の上昇が止まるかというと、-入力端子の電圧が5Vになった時点で止まることになります。

10kΩと20kΩに流れる電流は同一値ですから、20kΩの両端の電圧が2V、そして10kΩの両端の電圧が1Vとなればこの条件に合致します。したがって、出力電圧は5+1=6Vです。

電験3種過去問解説 平成26年理論問9

LC共振回路の共振周波数は、1/(2π√LC)で求められます。角周波数ωで書けば、ω=1/√LCです。

したがって、LCの積が大きいほど共振周波数は下がることになります。

回路A…ω=1/√LC

回路B…ω=ω=1/√2LC

回路Cは、コイルが2個直列、コンデンサが2個直列です。直列コンデンサの合成静電容量はC/2となります。

コイルの直列の場合、相互インダクタンスをMとしてL1+L2+2Mで求められますが、ここでは特に相互インダクタンスに関する言及がないので、M=0として構いません。すると、合成インダクタンスは3Lということになります。

以上より、直列接続回路の共振周波数を求めると、

ω=1/√(3L・C/2)=1/√(3LC/2)

となることが求まります。したがって、答えは(5)です。

電験3種過去問解説 平成25年理論問9

  • 抵抗は、電圧の位相と電流の位相が同じ
  • コイルは、電圧に対して電流の位相が90°遅れる
  • コンデンサは、電圧に対して電流の位相が90°進む
  • コイルのリアクタンスはjωL
  • コンデンサのリアクタンスは1/jωC

ということが分かっていれば即座に求まります。

R>>ωLということは、コイルのリアクタンスに対して抵抗の値がかなり大きいことを意味し、抵抗に流れる電流分はベクトル上で無視できることを意味します。また、ωL=2/ωCということは、コイルのリアクタンスがコンデンサのリアクタンスの2倍であることを意味します。以上より、この回路で最も大きな電流が流れるのがコンデンサ、そしてその半分の電流がコイルに流れ、これらを合成するとコンデンサの進み電流が優勢になることが分かります。したがって、ベクトル図は電流が90°進んだウとなり、時間軸のグラフではカとなります。答えは(5)です。

 

電験3種過去問解説 平成21年理論問7

100∠0°や200∠0°というのはフェーザ表示といって、電源相互間の位相差を強調して表す表記法です。出題の回路で言えば、b端子からa端子に対しての電圧と、c端子からb端子に対しての電圧が全く同電圧・同位相であることを意味します。そして、c端子からa端子に対しては、b~a間とc~b間を足した200Vの電圧(位相はb~a間・c~b間と同じ)になることを示します。要するに、単相3線式回路です。

以上のことより、Iab、Iac、Ibcをそれぞれベクトルで求め、Ia=Iab+Iac、Ib=Iab-Ibc、Ic=Ibc+Iacを計算すれば答えは求まります。しかし、この問題は直感的に答えが求まるので、その考え方を示します。

まず、a~b間の負荷は、3Ωの抵抗と4Ωのコイルですから、インピーダンスは二乗平均を計算して5Ωです。同様に、b~c間も5Ω、そしてa~c間は10Ωです。したがって、Iab、Iac、Ibcの絶対値は全て20Aということが分かります。

ところで、a~b間の負荷は3+j4Ωに100∠0°の電圧、a~c間の負荷は6+j8Ωに200∠0°の電圧が掛かりますから、IabとIacは同位相であることが分かります。Iab、Iac、Ibcのうち明らかに同位相なのはIabとIacだけですから、これらの和であるIaが最も大きな電流であることが分かります。これを元にして選択肢を吟味すると、答えは(2)しかありません。

もちろんベクトル計算を全部すれば数学的に答えは求まるのですが、試験時間に余裕がない電験3種の試験ですから、出題側もある部分に気が付けば正解が絞られるように問題を作っている事が多い(というか、そういう問題の方がずっと多い)と感じます。問題を解く際は、出題側が気付いてほしいポイントはどこなのか?を考えるようにすると、用意されている近道が見えるようになることが多いでしょう。

(多くの受験生が求めているのは、馬鹿正直に?数値計算した結果を見せられるよりも、そういう「目の付け所」を知りたいと思っていると思いますので…)

電験3種過去問解説 平成26年理論問5

この問題は、キルヒホッフの法則でも解けますし、重ね合わせの原理でも解けます。キルヒホッフの法則を使う場合、電圧Vと電流Iの代わりに電圧Vと流れた電荷量Qを使って式と立てます。ここでは重ね合わせの原理を説明します。

重ね合わせの原理は、「複数の電源がある回路において、各部の電圧や電流の値は、ある1つの電源だけを残し、他の電圧源は短絡、電流源は開放して各部の電圧や電流を求め、それを回路内にある電源の個数だけ繰り返したものの重ね合わせになる」というものです。この原理は抵抗だけでなくコイルやコンデンサが含まれる回路でも成立しますので、これを利用します。

①20Vの電源だけを残した場合

20Vの電源を残して10Vの電源を短絡した回路を考えます。すると、20Vの電源のプラス-10μF-(20+10)μF-20Vの電源のマイナスという回路になります。コンデンサの直列回路では、電圧配分は静電容量に反比例しますから、上の10μFは左側を+として15V、20μFと下の10μFは、右側を+として5Vの電圧が発生します。

②10Vの電源だけを残した場合

10Vの電源を残して20Vの電源を短絡した回路を考えます。すると、10Vの電源のプラス-(10+20)μF-10μF-10Vの電源のマイナスという回路になります。したがって、上の10μFと20μFは、左側を+として2.5V、下の10μFは右側を+として7.5Vの電圧が発生します。

 

以上より、20μFのコンデンサには、

①:右側を+として5V

②:左側を+として2.5V

の電圧が発生しますから、これらを重ね合わせると右側を+として2.5Vの電圧が発生することが分かります。つまり、a点から見たb点の電圧は、+2.5Vです。答えは(3)です。

電験3種過去問解説 平成27年理論問5

ファラデーの電磁誘導の法則の問題です。

電磁誘導の法則は、「コイルに発生する電圧は、コイルの中を貫く正味の磁束量の時間変化に比例する」というものです。コイルを貫く正味の磁束量は、

  • 磁束密度×(その磁束内を貫く)コイルの面積×コイルの巻き数

で求まります。電圧の向きは、フレミングの右手の法則に従います。

さて、この問題で時刻Tを過ぎてからは、コイルの三角形の部分が磁束の中に入ります。図を見れば分かるように、コイルが進めば進むほど、コイルが磁束の中に入る面積の増加分は増えていきますから、選択肢(3)か(5)のように電圧が上昇していくグラフになるはずです。コイルが全部磁束内に入ってしまったら、コイルの内部を貫く磁束の時間変化はゼロになるので、発生する電圧もゼロになります。したがって、答えは(5)しかあり得ません。

電験3種過去問解説 平成21年理論問2

(1)…誤り 和→積

(2)…誤り 距離に→距離の2乗に

(1)と(2)はクーロンの法則より求まります。

(3)…正しい

(4)…誤り 面に沿った→面に垂直な

等電位面は、現実世界で言えば等高線のようなものです。等高線上にある物体は、等高線の方向に力を受けることはありませんが、等高線に対して垂直な方向、つまり転がり落ちる方向に重力を受けます。

(5)…誤り

コンデンサに電荷が蓄えられ、電源から切り離されている状態であれば、誘電体を入れると誘電体の誘電率に反比例して電界は減少します。コンデンサが電源に接続されたままであれば、誘電体を入れても電界は変わりません。いずれにしても誘電体を挿入することで電界が増大することはありません。

電験3種過去問解説 平成28年理論問6

回路右の200Ωと150Ωは直列だから350Ω、それと100Ωが並列だから並列の式で(350×100)÷(350+100)…

と計算し始めたら負けです。

この問題は、I1とI2の電流比を求める問題です。この比は、電源電圧が何ボルトであろうと変わりません。したがって、I2=1Aと勝手に置いてしまい、そこから逆算してI1を求めれば良いのです。

I2=1Aと置くと、右側100Ωの両端は350Vですから、100Ωに流れる電流は3.5Aです。したがって回路真ん中上の150Ωに流れる電流は、1+3.5=4.5Aとなり、この両端の電圧は4.5×150=675V。したがって電源電圧は350+675=1025Vとなります。このとき回路左の200Ωには、1025÷200=5.125Aが流れますから、I1は5.125+4.5=9.625Aとなります。以上のことからI2/I1を求めると約0.1となります。

電験3種過去問解説 平成25年理論問6

この問題は、テブナンの定理、重ね合わせの原理、キルヒホッフの法則などが適用できる問題ですが、ここではテブナンの定理で考えます。

テブナンの定理は、「どんなに複雑な回路であっても、その回路から2端子を取り出したとき、その2端子から回路側を見ると、1個の電圧源と1本の直列抵抗に置き換えられる」というものです。これは交流回路でも成り立ちます。

「1個の電圧源と1本の直列抵抗」の値の求め方は、その2端子を開放したときに現れる電圧が電圧源の電圧で、その2端子を短絡したときに流れる電流は、電圧源の電圧を直列抵抗で割った値になることから求まります。学習参考書を見ると、テブナンの定理の直列抵抗の求め方は、その2端子から回路内を見たときの抵抗値であるとよく書かれていますが、それはもちろん正しいのですが結果論であって、本来的にはブラックボックスから出ている2端子を開放・短絡することで挙動を求めるというのが本質論だと思います。

(なお、テブナンの定理を利用するためには線形回路である必要があるのですが、その説明については割愛します)

さて、この出題の回路でテブナンの定理を応用するために、回路左側の60V-40Ω-40Ωの部分で切断して取り出します。つまり、60V-40Ω-40Ωの、2つ目の40Ωの両端から2端子を取り出します。このとき、この2端子を開放したときに現れる電圧は30Vです。また、短絡したときに流れる電流は1.5Aです。したがって、60V-40Ω-40Ωの部分は、30Vの電池と20Ωの1本の直列抵抗に置き換えることができます

次に、回路右側の80V-60Ω-60Ωの部分で切断して取り出します。つまり、右側2つ目の60Ωの両端から2端子を出すことになります。このとき、2端子を開放したときに現れる電圧は40Vで、短絡したときに流れる電流は4/3Aです。したがって、この部分は40Vの電池と、30Ωの1本の直列抵抗に置き換えることができます

このようにして置き換えた回路を元の回路に戻して考えると、30V-20Ω-10Ω-30Ω-40Vという回路に置き換えられます。30Vの電池と40Vの電池は互いに逆接続ですから差し引き10V、したがって、回路は10Vの電池と60Ωの抵抗を接続しただけのものと等価になります。

この時10Ωの抵抗に流れる電流は1/6Aですから、10Ωの抵抗で消費される電力はI^2Rより、10/36W、つまり約0.28Wと求まります。

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