電験3種過去問解説 平成22年機械問16

(a)

平滑リアクトル(コイル)が挿入されている点がポイントです。

コイルに電流を流した状態にしておき、その電流を減少させようとすると、コイルは電流の変化を嫌い、その内部に蓄えられたエネルギ(=電流によって作られた磁気エネルギ)を使って、それまで流れていた電流を維持する方向に電圧を作り出すという性質を持っています。この性質により、サイリスタブリッジ回路において電源電圧がゼロから負方向に向かうときも(選択肢のグラフでいえば、角度がπを過ぎて電源電圧が負方向に向かい出した部分)、コイルが作り出した逆電圧と交流電源の電圧の合計がゼロになるまではサイリスタは電流を流し続けます。

この性質を念頭に置いて考えると、選択肢(1)(3)(4)のedの波形は、平滑リアクトルが挿入されていない場合の電流波形なので誤りということになります。

選択肢(2)と(5)は、直流電流が流れるタイミングが異なります。この見分け方ですが、まずこのグラフは負荷電流のグラフではなく、回路図左上のサイリスタに流れる電流iTを表したグラフであることに注意なければなりません。制御遅れ角π/3で左上のサイリスタがONとなり、4π/3でOFFになる間に負荷電流が流れるわけですから、当然グラフは(2)のようになります。答えは(2)です。

(b)

制御遅れ角がπ/2の時のedの波形を手書きしました。

ここでπ/2~3π/2の電圧波形を平均すると、このグラフはπを中心とした点対称の波形で、π/2~πとπ~3π/2を足すとゼロになることが分かります。したがって答えは(1)です。

 

電験3種過去問解説 平成28年機械問16

(a)

この回路は、負荷が抵抗しかない(コイルやコンデンサのような、電力を一旦蓄えてから負荷に流すような素子が無い)ので、サイリスタでスイッチングされた波形がそのまま負荷に掛かります。

  • T1・T4のゲート信号が与えられない場合

サイリスタは、ゲート信号が与えられる前は電流が流れず、ゲート信号が与えられた後はダイオードと同じ挙動を示します。したがって、T1・T4のゲート信号が与えられないのであれば、回路からT1とT4を取り去ってしまって構わないことになります。

T1・T4を取り去った回路は、電源から負荷に対してサイリスタが2個入っただけの回路です。このとき、サイリスタの向きを考えると、電源電圧vsが+の時はサイリスタが逆方向になるので電流は流れません。vsがマイナスの時はサイリスタに電流が流れます。サイリスタにゲート信号が与えられるのはπ/2・3π/2・5π/2…ですから、波形3が正解となります。

  • 正しくゲート信号が与えられた場合

この場合は全てのサイリスタが動作するため、回路全体としては「ゲート電流が与えられた点から電流が流れだすダイオードブリッジ回路」とみなせます。したがって波形2が正解です。以上より、答えは(5)です。

(b)

制御遅れ角α=0、つまりサイリスタが完全にダイオードと同じ状態を考えると、cosα=1ですから、

(1)Ed=0.45V

(2)Ed=0.9V

(3)Ed=V

(4)Ed=0.45V

(5)Ed=0.9V

となり、(1)(3)(4)は明らかにおかしいことが分かります。

次に、制御遅れ角α=π、つまりサイリスタが全周期にわたって完全に非導通の場合を考えます。すると、cosα=-1ですから、これを式に代入すると、

(2)Ed=0V

(5)Ed=-0.9V

となり、全波整流なのに出力がマイナスになる(5)は明らかにおかしいことが分かります。以上より、答えは(2)です。

電験3種過去問解説 平成24年理論問17

(a)

単純な倍率器の問題です。電圧計を単なる抵抗と置き、直列抵抗をつないでオームの法則より電圧配分を求めるだけです。

1kΩと14kΩを直列につないで15Vを掛けると、両抵抗に流れる電流は同一であることから電圧比は1:14となり、1kΩには1Vが掛かることになります。答えは(3)です。あまりに簡単な問題と言っていいでしょう。

(b)

重ね合わせの原理、キルヒホッフの法則、テブナンの定理などどんな解き方でも解くことができます。ここではテブナンの定理で考えます。

電圧計Vの両端を切り離して2端子を取り出し、開放した状態で端子間に発生する電圧を求めます。このとき、回路は16Vと4Vが逆接続されて差し引き12V、そこに合計40kΩの抵抗が接続されているので、回路に流れる電流は0.3mAです。したがって10kΩの電圧降下は3Vとなり、端子間には13Vの電圧が発生することが分かります。次に2端子を短絡したときの電流を求めると、1.6mA+0.13mA=1.73mAとなります。以上より、「開放したときに13V、短絡すると1.73mAの電流が流れる」回路と同じですから、13Vの電池と7.5kΩの直列とみなせることが分かります。(もちろん、10kΩと30kΩが並列で7.5kΩでも結構です)

電圧計を挿入するということは、ここに15kΩの抵抗を接続するのと同じですから、13Vの電池に22.5kΩの抵抗を接続した回路に流れる電流を求めればよいことになります。これを求めると0.58mAと求まります。

「最大目盛1V、内部抵抗1kΩ」の電圧計は、1V÷1kΩ=1mAの電流が流れたときにフルスケールとなるので、0.58mAの電流が流れたときはフルスケールの58%まで振れることになります。ここでは倍率器を付けて最大15Vの目盛りとしているので、15×0.58=8.7Vが電圧計の指示値です。答えは(2)です。

電験3種過去問解説 平成27年理論問17

(a)

この回路は、負荷側がY結線、負荷に並列に接続されるコンデンサがΔ結線であるところまではすぐ分かりますが、電源側がΔのうち2相しかないV結線となっています。

題意より、eaとebの間の位相が120°ということは、Δ結線から一相分抜けているecはeaに対して-240°となり、負荷から見ると三相Δ結線と同じに見えることが分かります。どうしてecが-240°になるかは、図で示します。

図中で定義されたecについて、ecのベクトルの始点から終点に向けて考えると、ec=-ea+(-eb)となります。ベクトルの引き算は、逆ベクトルの足し算ですから、図のように-ebと-eaを足したものは、eaから+120°(-240°)のベクトルとなり、ea・eb・ecは120°ずつの位相差の三相交流となることが求まります。

電源電圧は、Δ結線の線間電圧がEsin(ωt)の式、ω=2πfであることと照らし合わせると、電圧の最大値が100√6[V]、周波数fが50Hzであることが分かります。したがって、線間電圧の実効値は100√6を√2で割って100√3[V]です。

コンデンサを切り離した回路において、コイルのリアクタンスはjωLで求まります。電源周波数が50Hzなので、リアクタンス値はj×2×π×50×16×10^-3≒j5Ωとなります。したがって、一相当たりのインピーダンスは5Ωとj5Ωの二乗和で5√2Ωとなります。

Y結線負荷の相電圧は、線間電圧の√3分の1ですから、負荷の相電圧は100Vです。したがって負荷に流れる電流は100/5√2[A]=10√2[A]、この電流が5Ωの抵抗に流れるので、抵抗の消費電力は(10√2)^2×5=1000[W]です。これが3相分ですから、答えは3kWと求まります。

(b)

題意より、コンデンサを接続することで負荷の力率が1になるようにすれば良いことが分かります。「iaの波形はeaの波形に対して位相が30°遅れていた」ことがなぜ力率1になるかという説明は、こちらを参照ください。

まずY結線のCで考えます。5+j5Ωのインピーダンスに並列にコンデンサを接続し、虚数分をゼロにすればいいわけです。したがって、1/(5+j5)のアドミタンスとjωCのサセプタンスを足し、これの虚数をゼロにします。この条件からY結線のCが求まり、これをΔ型に変換すれば答えが求まります。計算は図にします。

電験3種過去問解説 平成27年理論問16

(a)

ΔーY変換の公式を知らないと解けないような気がしますが、そんなの知らなくても簡単に解けます。

Δ-Y変換は、要するに外部から見て回路の挙動が全く同じであればいいわけです。ここで図2のb-c間(b-d間、c-d間でもOK)を見ると、3μFのコンデンサと、1.5μF(←3μFのコンデンサが2個直列)が並列になっていると見なせます。つまり、4.5μFの静電容量です。

図3の回路を見ると、b-c間、あるいはb-d、c-d間は、いずれも2個のCが直列になっているように見えます。これが4.5μFであればいいので、Cは9μFと求まります。答えは(5)です。

(b)

(a)の結果を用いて回路のb-c-d間を置き換えると、aから(9μFと9μFの直列)と(18μFと9μFの直列)が並列となり、その次に9μFが直列に入ってdに至る回路となります。あとはコンデンサの並列・直列の式を使って計算するだけです。答えは(3)になります。

電験3種過去問解説 平成25年理論問12

コイル(やコンデンサ)の過渡現象については良く出題されています。一見難しそうですが(確かに数学的な解析をしようと思えば微分方程式を解く必要があるので難しいです)、電験3種では定性的な性質を知っていれば十分解けます。

コイルに電圧を掛けた瞬間、コイルは内部に電流を流したくないので、電流を流さないように全力で抵抗します。しかし、外部から加えられた電圧に負けて徐々に電流を流していき、最後は可能な限り最大の電流を流す(=単なる0Ωの電線と同じになる)という特性を持ちます。これは何故かというと、電流を流すことによって発生する磁界が変化を嫌うからです。

逆に、今一定の電流が既に流れているコイルの電流を切断しようとすると、やはりコイルは変化を嫌うため、今現在流れている電流を維持するために辻褄の合う電圧を発生させて電流を継続して流そうとします。しかし、段々とエネルギが切れてしまい、最後は電流が0となって終わります。これも、磁界が変化を嫌うために起こる現象で、「今現在流れている電流を維持するために辻褄の合う電圧を発生」させるためのエネルギ源は磁界のエネルギなのです。

以上のことを押さえて回路を見ると、スイッチSを入れた瞬間、コイルは電流を流さないので回路は30Vの電源に10Ωと20Ωが単に直列に接続されたものと同じです。したがって、スイッチを入れた瞬間の電圧vは20Vです。この時点で答えは(4)か(5)に絞られます。

t=15msのとき、コイルには上から下に3Aの電流が流れています。ここでスイッチを切ると、コイルは上から下に3Aの電流が流れる状態を維持するために辻褄が合う電圧を発生させます。スイッチSを切ったとき、回路はコイルと20Ωが並列になった回路ですから、コイルが発生させる電圧は下側が+で60Vであることが分かります。したがって、答えは(4)です。

このように、コイルの性質を上手に使うと電源電圧よりも高い電圧を作り出すことができます。これを応用したのが、自動車の中で交流100Vが使えるようにするインバータや、カメラのストロボなどです。

電験3種過去問解説 平成26年理論問13

オペアンプを用いた増幅回路の増幅率の公式だけを暗記していた人には解けない問題です。

オペアンプは、次のような動作をします。

  • +入力端子の電圧>-入力端子の電圧のとき…出力電圧はどこまでも上昇する
  • +入力端子の電圧<-入力端子の電圧のとき…出力電圧はどこまでも下降する
  • +入力端子の電圧=-入力端子の電圧のとき…出力電圧の変動は止まる
  • 入力端子には電流が流れ込まない。出力端子はいくらでも電流を流しだし、あるいは吸い込むことができる

この性質を利用し、出力端子から入力端子側にフィードバックさせることで、入力電圧が微弱な変化をしてもすぐにそれに追従して、常に+入力端子と-入力端子の電圧が同じ電圧となる状態で使用するのがオペアンプ回路です。

さて、題意の回路において、仮にVIN=VOUT=5Vの状態を考えます。すると、オペアンプの-入力端子も5Vであり、回路内には一切電流が流れない状態で安定します。

ここで入力電圧を3Vに下げると、20kΩの右側が5V、左側が3Vですから、20kΩには右→左に電流が流れます。この電流はオペアンプの出力端子→10kΩ→20kΩ→入力端子と流れるので、オペアンプの-入力端子の電圧は5Vより下がります。すると、オペアンプの出力電圧は上昇します。どこまで行けばオペアンプの出力電圧の上昇が止まるかというと、-入力端子の電圧が5Vになった時点で止まることになります。

10kΩと20kΩに流れる電流は同一値ですから、20kΩの両端の電圧が2V、そして10kΩの両端の電圧が1Vとなればこの条件に合致します。したがって、出力電圧は5+1=6Vです。

電験3種過去問解説 平成26年理論問9

LC共振回路の共振周波数は、1/(2π√LC)で求められます。角周波数ωで書けば、ω=1/√LCです。

したがって、LCの積が大きいほど共振周波数は下がることになります。

回路A…ω=1/√LC

回路B…ω=ω=1/√2LC

回路Cは、コイルが2個直列、コンデンサが2個直列です。直列コンデンサの合成静電容量はC/2となります。

コイルの直列の場合、相互インダクタンスをMとしてL1+L2+2Mで求められますが、ここでは特に相互インダクタンスに関する言及がないので、M=0として構いません。すると、合成インダクタンスは3Lということになります。

以上より、直列接続回路の共振周波数を求めると、

ω=1/√(3L・C/2)=1/√(3LC/2)

となることが求まります。したがって、答えは(5)です。

電験3種過去問解説 平成25年理論問9

  • 抵抗は、電圧の位相と電流の位相が同じ
  • コイルは、電圧に対して電流の位相が90°遅れる
  • コンデンサは、電圧に対して電流の位相が90°進む
  • コイルのリアクタンスはjωL
  • コンデンサのリアクタンスは1/jωC

ということが分かっていれば即座に求まります。

R>>ωLということは、コイルのリアクタンスに対して抵抗の値がかなり大きいことを意味し、抵抗に流れる電流分はベクトル上で無視できることを意味します。また、ωL=2/ωCということは、コイルのリアクタンスがコンデンサのリアクタンスの2倍であることを意味します。以上より、この回路で最も大きな電流が流れるのがコンデンサ、そしてその半分の電流がコイルに流れ、これらを合成するとコンデンサの進み電流が優勢になることが分かります。したがって、ベクトル図は電流が90°進んだウとなり、時間軸のグラフではカとなります。答えは(5)です。

 

電験3種過去問解説 平成21年理論問7

100∠0°や200∠0°というのはフェーザ表示といって、電源相互間の位相差を強調して表す表記法です。出題の回路で言えば、b端子からa端子に対しての電圧と、c端子からb端子に対しての電圧が全く同電圧・同位相であることを意味します。そして、c端子からa端子に対しては、b~a間とc~b間を足した200Vの電圧(位相はb~a間・c~b間と同じ)になることを示します。要するに、単相3線式回路です。

以上のことより、Iab、Iac、Ibcをそれぞれベクトルで求め、Ia=Iab+Iac、Ib=Iab-Ibc、Ic=Ibc+Iacを計算すれば答えは求まります。しかし、この問題は直感的に答えが求まるので、その考え方を示します。

まず、a~b間の負荷は、3Ωの抵抗と4Ωのコイルですから、インピーダンスは二乗平均を計算して5Ωです。同様に、b~c間も5Ω、そしてa~c間は10Ωです。したがって、Iab、Iac、Ibcの絶対値は全て20Aということが分かります。

ところで、a~b間の負荷は3+j4Ωに100∠0°の電圧、a~c間の負荷は6+j8Ωに200∠0°の電圧が掛かりますから、IabとIacは同位相であることが分かります。Iab、Iac、Ibcのうち明らかに同位相なのはIabとIacだけですから、これらの和であるIaが最も大きな電流であることが分かります。これを元にして選択肢を吟味すると、答えは(2)しかありません。

もちろんベクトル計算を全部すれば数学的に答えは求まるのですが、試験時間に余裕がない電験3種の試験ですから、出題側もある部分に気が付けば正解が絞られるように問題を作っている事が多い(というか、そういう問題の方がずっと多い)と感じます。問題を解く際は、出題側が気付いてほしいポイントはどこなのか?を考えるようにすると、用意されている近道が見えるようになることが多いでしょう。

(多くの受験生が求めているのは、馬鹿正直に?数値計算した結果を見せられるよりも、そういう「目の付け所」を知りたいと思っていると思いますので…)

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