電験3種過去問解説 平成30年理論問1

(ア)…反発力

クーロン力は同種電荷間では反発力です。そもそも、吸引力だったら導体球どうしがくっついてしまうのでこの図のようになり得ません。

(イ)…3Q^2/4πε0d^2

クーロン力の式に代入するとこの値になります。

(ウ)…16πε0l^2mg/3Q^2

ちょっと計算がややこしいですが、F^2+(mg)^2=T^2の両辺の√を取るとT=の式になるので、この式をF/T=d/2lに代入します。すると{1-(d/2l)^2}=(mg)^2(d/2l)^2となり、

両辺の√を取って出題文のような形に式を変換するとこの式が求まります。

(エ)…増加

クーロン力の式より、3QとQの積よりも2Qと2Qの積の方が大きくなるため、一旦接触させた後の方がクーロン力は強くなります。

答えは(1)です。

いよいよ電験3種の試験日ですね

明日日曜日は年に一度のイベント、電験3種の試験日です。「試験の出題予想は?」なんて聞かれることもありますが、適当な事を言うわけにもいかないし、いつも通り電気物理の基本からちゃんと理解していれば大丈夫、としか言いようがないです。

とはいえそれも何なので、何か書いておきます。

  • 理論

例年、最初の方の抵抗組み合わせ問題は、「何か」に気付かないと無駄に計算時間を浪費するように仕組まれた問題が良く出ています。例えば、多数の抵抗を組み合わせた回路で、良く回路を見ると電流が全く流れない抵抗が何個もあり、それを取り去ってしまえば超簡単な回路になる、それに気付けば即座に答えが求まるけれど、それに気付かない人は複雑なキルヒホッフの連立方程式の計算に時間を浪費してしまうようなもの。したがって、どうも複雑だな?と思った場合、ちょっと立ち止まって別の角度から見てみると良いかもしれません。

後は、どの科目もそうですが、残り1日で出来る直前対策として、過去数年の過去問の中から知識問題(知ってれば解けるし知らなきゃ出来ない問題)のみをピックアップし、それを集中的に覚えておきましょう。「次のうち誤った記述はどれか」式の問題は、正解となる誤った記述以外の正しい記述を覚える感じで。

  • 電力

電力は知識問題の比率が高いので、上に書いた直前対策みたいな感じで宜しいかと思います。敢えて言えば何だろう?太陽光とか風力とか、自然エネルギー関連がここ最近のトレンドかな?(外したらごめん)

  • 機械

ここ最近、直流機についての掘り下げた問題は出てない気がします。基本的に、界磁磁束×コイルの断面積×巻数×回転速度が逆起電圧(発電機の場合は発電電圧)で、そこから巻線の抵抗の影響を考えたものが端子電圧…ってことが分かってれば何とかなるのが直流機。なので界磁巻線と電機子巻線が直列の直巻は特徴的な性質を示す、と。

同期機・誘導機については必ず出題されるだろうけど、基本的な性質を抑えてあれば大丈夫な気がする。そういえばインバーター制御の問題なんか出ても良いんじゃないかと思うけど(こういうことを言って外すのもアレではある)。

自然エネルギー関係も近年良く出てるから、太陽電池とか風車、小水力発電あたりも。

  • 法規

例えば3.11の後は計画停電の問題が出たりと、割と最近起こったニュースに関するトレンドが出題される傾向がある。じゃあ最近は何があったかというと、…

ん~…

何かあったかな?

まぁ、近年太陽光発電がトレンドではあるかな?

試験直前の1日で出来る対策と言えば、ここ数年の過去問の出題文のカッコの中に正解を入れて黙読(音読でも良いけど)する、位かな?

もちろん全く同じ問題が出題はされないけど、同じあるいは近接した法律について出題される事はあるからね、と。

 

まぁ、残り1日の直前対策は、どの科目についても過去数年の知識問題をピックアップして黙読あるいは音読、これでしょう。

 

皆様の試験合格をお祈り申し上げております。

[日記]職業訓練校にて一陸特講座開催の予定。

どうやら多摩職業能力開発センター府中校にて、来年の2月2・3日の二日間で一陸特の試験直前対策講座を開講することになりそうです。

まだ本決まりではありませんが、決定されれば

https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/vsdc/fuchu/worker.html

このページ辺りに載るかと思われます。

もし、よろしければ。

【日記】SAT社の収録の下準備、その他。

毎年夏休みにはSAT社の講座収録の仕事を入れてますが、今年は消防設備士4類の講座の全面再集録と、電験3種の誤り箇所の再集録に行ってきます。

電験3種の誤り箇所ですが、挙げてみると結構ありまして。

  • 電力 P.13
  • 機械 P.42、P.70、P95、P.100、P.107
  • 理論 P.26、P.33、P.63、P.70、P.75、P.79、P.89、P.125
  • 過去問解説 H26理論問15、H27理論問17、電力問3、H28電力問10、法規問13、H29理論問15、理論問16、機械問7

こんな感じでリストアップされとります。

過去問解説は、実働2~3日で解答を作って収録に行ってたので、特に計算式を数式エディタに突っ込んでいるところで抜けがあったりしましたねえ…。

講座では、本は正しいのに口で別の事を喋ったりとか、テキストの誤植があったりとか。何かゴメンナサイ感一杯でございます。


気が付いたらもう8月も下旬。夏休みも残り少なくなってまいりました。

某高校で生徒に出している夏休みの宿題もボチボチ送られてきています。著書の原稿執筆は4冊抱えています。明日は午前中面接官の仕事、午後から大阪に移動して大阪泊。ゴタゴタしている内にあっという間に9月に入りそうです。

そんな感じです。

電験3種過去問解説 平成22年機械問16

(a)

平滑リアクトル(コイル)が挿入されている点がポイントです。

コイルに電流を流した状態にしておき、その電流を減少させようとすると、コイルは電流の変化を嫌い、その内部に蓄えられたエネルギ(=電流によって作られた磁気エネルギ)を使って、それまで流れていた電流を維持する方向に電圧を作り出すという性質を持っています。この性質により、サイリスタブリッジ回路において電源電圧がゼロから負方向に向かうときも(選択肢のグラフでいえば、角度がπを過ぎて電源電圧が負方向に向かい出した部分)、コイルが作り出した逆電圧と交流電源の電圧の合計がゼロになるまではサイリスタは電流を流し続けます。

この性質を念頭に置いて考えると、選択肢(1)(3)(4)のedの波形は、平滑リアクトルが挿入されていない場合の電流波形なので誤りということになります。

選択肢(2)と(5)は、直流電流が流れるタイミングが異なります。この見分け方ですが、まずこのグラフは負荷電流のグラフではなく、回路図左上のサイリスタに流れる電流iTを表したグラフであることに注意なければなりません。制御遅れ角π/3で左上のサイリスタがONとなり、4π/3でOFFになる間に負荷電流が流れるわけですから、当然グラフは(2)のようになります。答えは(2)です。

(b)

制御遅れ角がπ/2の時のedの波形を手書きしました。

ここでπ/2~3π/2の電圧波形を平均すると、このグラフはπを中心とした点対称の波形で、π/2~πとπ~3π/2を足すとゼロになることが分かります。したがって答えは(1)です。

 

電験3種過去問解説 平成28年機械問16

(a)

この回路は、負荷が抵抗しかない(コイルやコンデンサのような、電力を一旦蓄えてから負荷に流すような素子が無い)ので、サイリスタでスイッチングされた波形がそのまま負荷に掛かります。

  • T1・T4のゲート信号が与えられない場合

サイリスタは、ゲート信号が与えられる前は電流が流れず、ゲート信号が与えられた後はダイオードと同じ挙動を示します。したがって、T1・T4のゲート信号が与えられないのであれば、回路からT1とT4を取り去ってしまって構わないことになります。

T1・T4を取り去った回路は、電源から負荷に対してサイリスタが2個入っただけの回路です。このとき、サイリスタの向きを考えると、電源電圧vsが+の時はサイリスタが逆方向になるので電流は流れません。vsがマイナスの時はサイリスタに電流が流れます。サイリスタにゲート信号が与えられるのはπ/2・3π/2・5π/2…ですから、波形3が正解となります。

  • 正しくゲート信号が与えられた場合

この場合は全てのサイリスタが動作するため、回路全体としては「ゲート電流が与えられた点から電流が流れだすダイオードブリッジ回路」とみなせます。したがって波形2が正解です。以上より、答えは(5)です。

(b)

制御遅れ角α=0、つまりサイリスタが完全にダイオードと同じ状態を考えると、cosα=1ですから、

(1)Ed=0.45V

(2)Ed=0.9V

(3)Ed=V

(4)Ed=0.45V

(5)Ed=0.9V

となり、(1)(3)(4)は明らかにおかしいことが分かります。

次に、制御遅れ角α=π、つまりサイリスタが全周期にわたって完全に非導通の場合を考えます。すると、cosα=-1ですから、これを式に代入すると、

(2)Ed=0V

(5)Ed=-0.9V

となり、全波整流なのに出力がマイナスになる(5)は明らかにおかしいことが分かります。以上より、答えは(2)です。

電験3種過去問解説 平成24年理論問17

(a)

単純な倍率器の問題です。電圧計を単なる抵抗と置き、直列抵抗をつないでオームの法則より電圧配分を求めるだけです。

1kΩと14kΩを直列につないで15Vを掛けると、両抵抗に流れる電流は同一であることから電圧比は1:14となり、1kΩには1Vが掛かることになります。答えは(3)です。あまりに簡単な問題と言っていいでしょう。

(b)

重ね合わせの原理、キルヒホッフの法則、テブナンの定理などどんな解き方でも解くことができます。ここではテブナンの定理で考えます。

電圧計Vの両端を切り離して2端子を取り出し、開放した状態で端子間に発生する電圧を求めます。このとき、回路は16Vと4Vが逆接続されて差し引き12V、そこに合計40kΩの抵抗が接続されているので、回路に流れる電流は0.3mAです。したがって10kΩの電圧降下は3Vとなり、端子間には13Vの電圧が発生することが分かります。次に2端子を短絡したときの電流を求めると、1.6mA+0.13mA=1.73mAとなります。以上より、「開放したときに13V、短絡すると1.73mAの電流が流れる」回路と同じですから、13Vの電池と7.5kΩの直列とみなせることが分かります。(もちろん、10kΩと30kΩが並列で7.5kΩでも結構です)

電圧計を挿入するということは、ここに15kΩの抵抗を接続するのと同じですから、13Vの電池に22.5kΩの抵抗を接続した回路に流れる電流を求めればよいことになります。これを求めると0.58mAと求まります。

「最大目盛1V、内部抵抗1kΩ」の電圧計は、1V÷1kΩ=1mAの電流が流れたときにフルスケールとなるので、0.58mAの電流が流れたときはフルスケールの58%まで振れることになります。ここでは倍率器を付けて最大15Vの目盛りとしているので、15×0.58=8.7Vが電圧計の指示値です。答えは(2)です。

電験3種過去問解説 平成27年理論問17

(a)

この回路は、負荷側がY結線、負荷に並列に接続されるコンデンサがΔ結線であるところまではすぐ分かりますが、電源側がΔのうち2相しかないV結線となっています。

題意より、eaとebの間の位相が120°ということは、Δ結線から一相分抜けているecはeaに対して-240°となり、負荷から見ると三相Δ結線と同じに見えることが分かります。どうしてecが-240°になるかは、図で示します。

図中で定義されたecについて、ecのベクトルの始点から終点に向けて考えると、ec=-ea+(-eb)となります。ベクトルの引き算は、逆ベクトルの足し算ですから、図のように-ebと-eaを足したものは、eaから+120°(-240°)のベクトルとなり、ea・eb・ecは120°ずつの位相差の三相交流となることが求まります。

電源電圧は、Δ結線の線間電圧がEsin(ωt)の式、ω=2πfであることと照らし合わせると、電圧の最大値が100√6[V]、周波数fが50Hzであることが分かります。したがって、線間電圧の実効値は100√6を√2で割って100√3[V]です。

コンデンサを切り離した回路において、コイルのリアクタンスはjωLで求まります。電源周波数が50Hzなので、リアクタンス値はj×2×π×50×16×10^-3≒j5Ωとなります。したがって、一相当たりのインピーダンスは5Ωとj5Ωの二乗和で5√2Ωとなります。

Y結線負荷の相電圧は、線間電圧の√3分の1ですから、負荷の相電圧は100Vです。したがって負荷に流れる電流は100/5√2[A]=10√2[A]、この電流が5Ωの抵抗に流れるので、抵抗の消費電力は(10√2)^2×5=1000[W]です。これが3相分ですから、答えは3kWと求まります。

(b)

題意より、コンデンサを接続することで負荷の力率が1になるようにすれば良いことが分かります。「iaの波形はeaの波形に対して位相が30°遅れていた」ことがなぜ力率1になるかという説明は、こちらを参照ください。

まずY結線のCで考えます。5+j5Ωのインピーダンスに並列にコンデンサを接続し、虚数分をゼロにすればいいわけです。したがって、1/(5+j5)のアドミタンスとjωCのサセプタンスを足し、これの虚数をゼロにします。この条件からY結線のCが求まり、これをΔ型に変換すれば答えが求まります。計算は図にします。

電験3種過去問解説 平成27年理論問16

(a)

ΔーY変換の公式を知らないと解けないような気がしますが、そんなの知らなくても簡単に解けます。

Δ-Y変換は、要するに外部から見て回路の挙動が全く同じであればいいわけです。ここで図2のb-c間(b-d間、c-d間でもOK)を見ると、3μFのコンデンサと、1.5μF(←3μFのコンデンサが2個直列)が並列になっていると見なせます。つまり、4.5μFの静電容量です。

図3の回路を見ると、b-c間、あるいはb-d、c-d間は、いずれも2個のCが直列になっているように見えます。これが4.5μFであればいいので、Cは9μFと求まります。答えは(5)です。

(b)

(a)の結果を用いて回路のb-c-d間を置き換えると、aから(9μFと9μFの直列)と(18μFと9μFの直列)が並列となり、その次に9μFが直列に入ってdに至る回路となります。あとはコンデンサの並列・直列の式を使って計算するだけです。答えは(3)になります。

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