電験3種過去問解説 2019年理論問10

RC直列回路の時定数は、τ=RCで求められます。

時定数というのは、放射能の半減期のようなもので、どのくらいの早さで減少していくかという目安の値です。RC直列回路の場合、コンデンサCの静電容量が大きいほど大量の電荷が貯まっているので放電に時間がかかりますし、また抵抗Rの値が大きいほど流れる電流も小さくなるため、やはり放電に時間がかかります。これらを考えると、RCの積が時定数となることが分かります。なお、RL直列回路の場合は、コイルLの作用が大きいほど時間変化が緩やかになりますが、抵抗Rが大きいほどそもそも回路に流れる電流自体が小さいためコイルの作用が相対的に弱くなります。したがってRL直列回路の場合の時定数はτ=L/Rとなります。

以上より、この回路の時定数を計算すると、

τ=100×10^-6×1×10^3=0.1

ですので、正解は(1)(2)(3)のどれかになります。

次に、十分時間が経過したときに抵抗で消費されるエネルギは、放電前にコンデンサに蓄えられていたエネルギになります。これは

W=CV^2/2

で計算できますので、これを求めると、

W=(1/2)×100×10^-6×1000×1000=50

となり、50Jと求まります。以上より正解は(2)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問9

まず、各々の周波数におけるコンデンサとコイルのリアクタンスを求めます。コンデンサは1/jωC、コイルはjωLです。

  • ω1…コンデンサ-j20[Ω]、コイル+j5[Ω]
  • ω2…コンデンサ-j10[Ω]、コイル+j10[Ω]
  • ω3…コンデンサ-j3[Ω]、コイル+j30[Ω]

以上より、ω2の場合に並列共振となり、回路電流は最小になることが分かります。この時点で正解は(3)か(4)です。

次にω1とω3の比較です。馬鹿正直にコイルとコンデンサの並列合成リアクタンスを計算し、電源電圧1Vを用いて実際に流れる回路電流を計算しても良いのですが、

LC並列部分に流れる電流は、LとCの電流が互いに逆位相であるため、各々の電流の差が合成電流となる

ことを念頭に置いて考えれば、すぐに正解が求まります。

  • ω1…リアクタンス5Ωのコイルに流れる電流から、リアクタンス20Ωのコンデンサに流れる電流を引いたものが合成電流
  • ω3…リアクタンス3Ωのコンデンサに流れる電流から、リアクタンス30Ωのコイルに流れる電流を引いたものが合成電流

なので、ω3の方が合成電流が大きくなることは即座に求まります。(どうしても実際に計算してみないと気が済まないのであれば、電源電圧を30Vにして計算してみると楽です。ω1の合成電流は4.5A、ω3の合成電流は9Aになります)

したがって正解は(3)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問8

これは少し悩んだ問題ではないでしょうか。重ね合わせの原理を使う所までは求められても、そこから先悩んだかと思います。

電源が複数存在する線形回路ですから、重ね合わせの原理を使います。

まず交流100Vの電源を残して考えると、抵抗に流れる電流は10[A]、コンデンサに流れる電流は90度位相が進んだ+j10[A]です。この二つの合成電流は、1:1:√2の三角形より、10√2[A]と求まります。

次に直流電源だけを残した回路です。このとき定常状態ではコンデンサに電流が流れないので、回路電流は10[A]です。

以上の二つの電流(交流の10√2[A]と、直流の10[A])の重ね合わせの実効値を求めるためには、実効値の定義「2乗の√」を用います。これを計算すると、

√{(10√2)^2 + 10^2 ) =√300=10√3≒17.32…[A]

従って答えは(3)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問7

これもラッキー問題です。

直流電源をつないだ定常状態において、コンデンサには電流が流れません。また、コイルは単なる電線として振る舞います。したがって、この回路は、電源電圧Vと並列にR3とR2が接続されているだけの回路と等価です。

R2とR3の並列抵抗を求める式は、

1/R=1/R2 + 1/R3

より、

R=1/(1/R2 + 1/R3)

です。したがって、回路に流れる電流は、電源電圧Vをこの抵抗値で割ったものですから、答えは(4)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問6

ラッキー問題です。

条件から、電流計と直列の10Ωに流れる電流は5Aなので、50ΩとRの並列部分には差し引き50Vの電圧が掛かっていることがすぐに分かります。

50Ωの両端に50Vの電圧が掛かれば、ここに流れる電流は1Aです。したがって、Rには4Aの電流が流れることになります。以上より、Rで消費される電力は、

50Vの電圧が掛かっていて4Aの電流が流れているときの電力

を求めればいいわけですから、50×4=200Wです。正解は(5)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問5

これはラッキー問題です。

回路全体を見ると、上側が60Ωと(20+20+20=)60Ωの並列、つまり30Ωです。これに下側の(10+4+6)=20Ωが直列なので、回路全体としては100Vの電池に50Ωの抵抗が接続されているものとみなせます。したがって回路電流は2Aです。

さてここで、電池の+極から20Ω-A点-20Ω-B点-20Ωと至る経路について考えます。上側は60Ωが2本の並列で30Ω、そこに2Aの電流が流れるので、20Ω-A点-20Ω-B点-20Ωの部分に流れる電流は1Aです。したがって、3本の20Ωは、それぞれ20Vずつの電圧降下です。

下側の4Ω・6Ω・10Ωは2Aの電流が流れます。したがって電圧降下は、それぞれ8V・12V・20Vです。以上のことから回路全体の電位を考えます。

電池のマイナス端子を基準にすると、

D点…8V

C点…8V+12V=20V

下側の10Ωの右側端子…20V+20V=40V

B点…40V+20V=60V

A点…60V+20V=80V

となりますから、

A-D間…80V-8V=72V

B-C間…60V-20V=40V

となり、正解は(5)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問4

電気回路に置き換えると、「電池に抵抗体をつないだら電流が流れました。抵抗体の抵抗率はいくらですか」程度の簡単な問題です。

まず、磁気回路における起磁力は、コイルの巻き数×コイルの電流です。したがって、8000×0.1=800となります。単位はアンペアターン(電流×巻数)です。

次に、磁路の抵抗を求めます。これは電気回路における抵抗体の式

電気抵抗値=抵抗率×(抵抗体の長さ÷断面積)

と全く同じです。ただし、電気回路では抵抗率(数値が大きいほど電気抵抗が大きい)を用いるのに対し、磁気回路では透磁率(数値が大きいほど時期を通しやすい=磁気抵抗が小さい)を用いるので、

磁気抵抗値=(1/透磁率)×(磁性体の長さ÷断面積)

で求めます。

電気回路における電流は、磁気回路では磁束です。ただし、この問題では磁束密度で与えられていますので、磁束密度×断面積で正味の磁束の値を計算します。(人口密度は単位面積当たりの人数の値なので、それに全体の面積を掛ければ全体の人口が求まるのと同じ理屈です)これを計算すると、磁束φは、

φ=1.28×1×10^-4

となるので、あとはオームの法則を用いて、

800÷(1.28×1×10^-4)=(1/μ)・(0.2/1×10^-4)

が成立することから、μの値を計算すると3.2×10^-4が求まります。答えは(5)です。

電験3種過去問解説 2019年理論問3

磁気回路の問題はとっつき難くて難しいと感じますが、冷静に考えると難しい問題ではありません。

ヒステリシスループのグラフは、横軸に電流による磁界、縦軸に磁性体の磁束密度を取っています。したがって、コイル電流が最大の点は2です。

コイルのリアクタンスはjωL=j×2×π×f×Lですから、コイルにかかる電圧が同じであれば、周波数が低下すると電流は増加します。その際、ヒステリシスループ上の点2は、電流の増大に伴ってさらに右に移動するはずです。したがってヒステリシスループはさらに左右に伸びることになり、面積は大きくなります。この時点で正解は(2)です。

周波数が一定で電源電圧が低下した場合、コイルのリアクタンスは一定ですから、コイルに流れる電流も減少します。すると、上記とは逆になってヒステリシスループの面積は減少します。

コイルの電流が一定の場合、磁性体に与えられる磁界の大きさ自体は変わりませんから、ヒステリシスループの面積自体はほぼ変わりません。

電験3種過去問解説 2019年理論問2

CファラドのコンデンサにQクーロンの電荷が貯まっているとき、極板間電圧は

V=Q/C

で求まります。また、極板面積S、極板間距離d、誘電率εのコンデンサの静電容量は、

C=εS/d

で求まります。

ここで回路を見ると、左の3直列のコンデンサは、極板の形状と大きさは全て同一であることから、静電容量の比は上から順に

3/2:3/3:3/5

となります。一方、V=Q/Cの式より、直列コンデンサ(=流れた電荷量は全て同じ)の極板間電圧は静電容量Cの逆数の比になることが分かりますから、左の3直列のコンデンサの電圧比は、上から順に

2/3:3/3:5/3

となります。ここで電圧比を整数に直すと、分母が全て3なので

2:3:5

と分かります。これらの合計が10kVですから、コンデンサの極板間電圧は上から順に

2kV:3kV:5kV

です。

電界の強さは、二点間の電圧差をその距離で割った値なので、EAの大きさは、

2kV÷2mm=1kV/mm

となり、この時点で正解は(3)しかありません。

EBの求め方も同じです。真ん中の2直列のコンデンサの静電容量比は、

2/4:2/6

ですから、電圧はこの逆比の

4/2:6/2=4:6

です。したがって真ん中上側コンデンサの極板間電圧は4kVです。

これより、EBの値は

4kV÷4mm=1kV/mm

となります。

 

電験3種過去問解説 2019年理論問1

電位を計算する問題です。

点電荷Q[C]があるとき、そこから距離r離れた点における電位の絶対値は、誘電率をεとして

Q/4πrε

で求められます。これは、1Cの単位電荷に発生するクーロン力とその単位電荷を無限遠(r=∞)から距離rの点まで持ってくる仕事(クーロン力×距離)で定義されますが、この計算には積分が必要なため、電験3種の場合は単に式を覚えておけばOKです。

これに則って各々の電位差を求めていきます。(差を比べやすいよう、分母を6にして通分した値にしました)

(a)VAB=(Q/4πr)・|1/2-1/3|=(Q/4πr)・1/6

(b)VAB=(Q/4πr)・|1/1-1/3|=(Q/4πr)・4/6

(c)VAB=(Q/4πr)・|1/0.5-1/1.5|=(Q/4πr)・8/6

(d)VAB=(Q/4πr)・|1/1-1/1.5|=(Q/4πr)・2/6

以上より、電位差が最小のものは(a)、最大のものは(c)と求まります。正解は(2)です。

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