この問題は、テブナンの定理、重ね合わせの原理、キルヒホッフの法則などが適用できる問題ですが、ここではテブナンの定理で考えます。
テブナンの定理は、「どんなに複雑な回路であっても、その回路から2端子を取り出したとき、その2端子から回路側を見ると、1個の電圧源と1本の直列抵抗に置き換えられる」というものです。これは交流回路でも成り立ちます。
「1個の電圧源と1本の直列抵抗」の値の求め方は、その2端子を開放したときに現れる電圧が電圧源の電圧で、その2端子を短絡したときに流れる電流は、電圧源の電圧を直列抵抗で割った値になることから求まります。学習参考書を見ると、テブナンの定理の直列抵抗の求め方は、その2端子から回路内を見たときの抵抗値であるとよく書かれていますが、それはもちろん正しいのですが結果論であって、本来的にはブラックボックスから出ている2端子を開放・短絡することで挙動を求めるというのが本質論だと思います。
(なお、テブナンの定理を利用するためには線形回路である必要があるのですが、その説明については割愛します)
さて、この出題の回路でテブナンの定理を応用するために、回路左側の60V-40Ω-40Ωの部分で切断して取り出します。つまり、60V-40Ω-40Ωの、2つ目の40Ωの両端から2端子を取り出します。このとき、この2端子を開放したときに現れる電圧は30Vです。また、短絡したときに流れる電流は1.5Aです。したがって、60V-40Ω-40Ωの部分は、30Vの電池と20Ωの1本の直列抵抗に置き換えることができます。
次に、回路右側の80V-60Ω-60Ωの部分で切断して取り出します。つまり、右側2つ目の60Ωの両端から2端子を出すことになります。このとき、2端子を開放したときに現れる電圧は40Vで、短絡したときに流れる電流は4/3Aです。したがって、この部分は40Vの電池と、30Ωの1本の直列抵抗に置き換えることができます。
このようにして置き換えた回路を元の回路に戻して考えると、30V-20Ω-10Ω-30Ω-40Vという回路に置き換えられます。30Vの電池と40Vの電池は互いに逆接続ですから差し引き10V、したがって、回路は10Vの電池と60Ωの抵抗を接続しただけのものと等価になります。
この時10Ωの抵抗に流れる電流は1/6Aですから、10Ωの抵抗で消費される電力はI^2Rより、10/36W、つまり約0.28Wと求まります。