過電流遮断器の定格電流は3倍、電線の許容電流は1.25倍か1.1倍です。ということは遮断器の方が定格電流が高いです。でも図では電線の許容電流が一番高くなっているのはなぜですか?電線の方が定格電流が高くないとおかしい気がします。電線の定格電流になる前に遮断器が作動しないと電線が溶けてしまいそうです。
これについては「法的にそう規定されているから」ではあるのですが、もうちょっと深く突っ込んでお答えします。
確かに、理論的には、可能性として考えられる最大の電流に耐える電線を用意しないと、過電流によって電線は危険な状態になってしまいます。しかし、機械などの科目でも出てきた通り、特に誘導電動機などは起動初期の短い時間に非常に大きな電流が流れ、その後落ち着くという特性を持っています。もしそれに耐えるだけの電線を用意するとなると、極めて大容量の電線を用意しなくてはいけません。
一方、電線の許容電流は、ジュール熱による発熱によって規定されます。したがって、短時間であれば、電線の許容電流を超えて電流を流しても現実問題として特に問題は発生しないという事実があります。
以上のことより、電動機の特性、遮断機の遮断特性、電線の発熱量などを総合的に考慮し、短時間であれば電線の許容電流を超えても問題は発生しないという事情と太い電線は非常に値段が高くなるという事情を加え、このように規定されているわけです。
法律が「電線の過電流」にお墨付きを与えるというのも変な感じがしますが、電線の熱容量(発熱した場合の温度上昇のしにくさ)なども鑑みた上でこのように規定されていますから、現実的に何ら問題は無いわけです。