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SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問8 過去問解説 負荷の力率計算)

電験3種講座の理論テキストP68の解説の欄で37.5×(cosΦーjsinΦ) とあるのですが(cosΦーjsinΦ)の部分はどこから導きだせばよろしいですか? プロセスの説明も含めてお願いします。

まず37.5は、力率0.6の誘導性負荷に流れる見かけ上の電流、すなわち抵抗に流れる電流とコイルに流れる電流の2乗平均値です。

cosφは、負荷の力率です。負荷にかかる電圧を位相の基準として、それと同位相つまり力率が1の成分がcosφ、そして電圧と90°で力率が0の成分がsinφとなります。cosφとsinφの間には、cosの2乗+sinの2乗=1という関係がありますから、cosが0.6ならsinは±0.8と決定されます。

何故-jsinθになったかというと、「誘導性負荷」とあるからです。誘導性負荷は、コイルのせいで力率が悪化しています。つまり、遅れ力率の電流が流れるということを暗に言っていますから、そこから-jsinφとなるわけです。

37.5 x (cosφ – jsinφ) = 37.5 x・・・とありますが、なぜ無効電流はマイナスになっているのでしょうか?

この問題の回路図には、「誘導性負荷」とあります。誘導性というのはコイルが入っているということですから(コンデンサの場合は容量性負荷です)、コイルの性質より遅れ電流、すなわち-j方向になります。

また、その下の((22.5 + Ir) ^ 2 + 30 ^ 2) ^ (1 / 2) = 50とありますが、22.5と30はSが開放の時の誘導性負荷に流れる有効電流と無効電流であって、Sが短絡の場合は違うのではないでしょうか?それとも同じなのですか?

結論から言うと同じです。

Sが開放されている場合に回路に流れるのは、37.5×(0.6-j0.8)=22.5-j30アンペアです。

Sが短絡された場合でも、誘導性負荷に流れる22.5-j30アンペアの電流自体に変化はありません。そして、その電流の上に、さらに抵抗Rに流れる力率1の電流が加算されて電源から流れ出すわけです。

このとき、抵抗Rに流れる電流をIRとすれば、

  • 有効電流…22.5+IRアンペア
  • 無効電流…-j30アンペア

ですから、これらの2乗平均を取って50Aという条件からIRを求める、という理屈となります。

「Sが短絡された場合でも、誘導性負荷に流れる22.5-j30Aの電流自体に変化はありません。」

➡何故でしょうか?負荷が変わると電流が変化すると思うのですが。

これは、交流回路の電源が、140∠0°の電圧源だからです。

電圧源は、どんな電流が流れようとも、その電圧が変化することはありません。

したがって、スイッチSが入り、回路に並列にRの抵抗が挿入されようとも、その前後で電圧が変わることはありません。

したがって、Sの投入前後で力率0.6の誘導性負荷にかかる電圧は全く変わりませんから、その負荷に流れる電流も全く変化しないことになります。

もちろん、電源から流れ出す電流は、Sを投入する前(力率0.6の誘導性負荷のみの状態)と、Sを投入した後(力率0.6の誘導性負荷と、Rの抵抗に流れる電流の合計)では変化することになります。

SAT電験3種講座 猫電 質問回答(分数の割り算)

猫でもわかる電気数学講座6ページの(4)の問題分数の割り算は分子と分母をひっくり返して掛け算にするとのお話しでしたがどういう考え方があってそれが成り立っているのでしょうか。教えてください。

まず、掛け算と割り算の基本的な性質についておさらいします。

例えば、掛け算で6倍するというとき、数式では×6と書きますし、10倍なら×10です。
ここで、6や10をわざと分数にすると、(1分の6)や

(1分の10)とも書くことができます。

次に、割り算で6で割るというとき、数式では÷6と書きますし、10で割るなら÷10です。これを分数で表すと、

(かける6分の1)や

(かける10分の1)とも書けます。

つまり、「nを掛ける」のと「nで割る」のは、ともに分数の掛け算で書くことができ、掛け算なら「1分のn」、割り算なら「n分の1」のように、分母・分子を逆にすれば掛け算と割り算を逆にすることができます。

さて、ここで分数の割り算です。例として、何でもいいのですが

 

(わる4分の3)を例にします。上記の掛け算と割り算の性質より、この式は、

 

(かける(4分の3)分の1)と書くことができます。

分数は、分母と分子に同じ数を掛けても成立しますから(例:1/6=2/12=3/18…)、分母と分子に4を掛けます。すると、この式は、

 

(かける3分の4)となり、分母・分子を逆にした掛け算と表せることが分かります。

これは3/4だけでなくどんな分数でも同じですので、色々と当てはめて試していただければ納得できるかと思います。

SAT電験3種講座 猫電 質問回答(コイルと抵抗の直列回路における消費電力)

猫でもわかる電気基礎P43

2番目の例題ですが解答欄でP=20 ^2 × 6 = 2400wなぜ合成抵抗10Ωでなくて6Ωをかけるのかわかりません。教えていただけますでしょうか?よろしくお願いします。

詳しくは電験3種の理論編で詳しく解説していく内容なのですが、電気回路の抵抗・コイル・コンデンサの性質として、

  • 抵抗は、電力を消費して熱に変える
  • コイルやコンデンサは、電力をいったん受け取るものの、それを電源側に投げ返してしまい、電力を消費して熱に変えるなどの働きをしない

という性質があります。この回路のように、抵抗とコイルの両方が含まれた組み合わせ回路は、これらの性質が組み合わさることで複雑な挙動を示すのですが、現段階では上に挙げたことを覚えておいていただければ大丈夫です。

したがって、この問題で求める全消費電力、すなわち抵抗で消費されて熱に代わる電力は、電流の2乗×抵抗の値で求められることになります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成25年 理論 問12 コイルと抵抗回路の過渡現象)

理論テキストP44例題の中で電圧30vを10Ω、20Ωで分圧したら20vという考え方が理解できませんでした。申し訳ありませんが、詳しく教えて下さいよろしくお願いします

コイルというのは、それまでゼロだった電圧が掛けられた瞬間、電流を流さないという働きを持ちます。したがって、その瞬間だけに絞って考えると、回路から切り離してしまって良いことになります。

コイルを切り離してしまえば、回路は30Vの電源に10Ωと20Ωが接続されただけの回路と考えることができます。この回路に流れる電流をオームの法則で求め、その電流と20Ωの抵抗値を掛けたものが、20Ωの両端に発生する電圧ということになります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルとコンデンサの過渡現象)

電験3種の理論の12過渡現象に関する質問です。コイルは直流に対して電流を流しやすく、コンデンサは直流に対して電流を流しにくいと思うのですが、過渡現象の箇所ではコイルは時間変化を嫌うので最初は電流を流さず、コンデンサは時間0の時に電流を流すと矛盾してるような気がします。どこの考え方が間違ってるのでしょうか。

まず、コイルの性質を厳密に言いますと、

  • 流れる電流の時間変化が大きければ大きいほど、両端に大きな電圧を発生させる

という性質を持っています。つまり、短ければ短い時間の間に電流が変化するほど、そして電流の変化量が大きければ大きいほどコイルの両端に発生する電圧は大きくなります

例えば、0.1秒の間に2A変化したとすると、1秒では20A変化する計算になりますが、0.001秒の間に2A変化したとすると、1秒では2000A変化することになります。また、0.1秒間に2A変化すれば1秒間に20Aですが、0.1秒間に5A変化すれば、当然1秒間では50Aの変化になります。

これを数式で表せば、V=L(di/dt)となります。

直流回路において、スイッチを入れた瞬間、それまで電流がゼロだったところに電流を流そうという力が働きます。したがって極めて微小の電流は流れ込むのですが、電流がゼロからいきなりある値になるということは、「電流の時間変化」は物凄く大きな値になります。このときコイルの両端には大きな電圧(与えられた電源電圧と同じ電圧)が発生し、電流が流れ込むのを阻止します。これが、「コイルは時間変化を嫌う」性質です。

その後、徐々に電流が流れるようになると、1Aなら1A、5Aなら5Aで時間的に変化しない電流が流れ続けるようになります。コイルは「流れる電流の時間変化に比例した電圧」を発生しますから、時間変化がゼロであれば両端に発生する電圧もゼロ、つまり単なる電線と同じになります。これが、直流に対しては電流を流しやすいという理由です。

コンデンサは、コイルと真逆の性質を持ちます。つまり、

  • 与えられる電圧の時間変化が大きければ大きいほど、内部に大きな電流を流す

という性質です。数式で表せば、V=(1/C)∫idtです。

直流回路でスイッチを入れた瞬間、それまでゼロだった電圧がいきなり上昇するわけですから、与えられた電圧の時間変化はものすごく大きい値になります。したがってコンデンサは大きな電流を遠し、この瞬間だけは、コンデンサはゼロΩ、つまり導線と同じになります。

しかし、直流回路ですから、だんだんと電圧変化はなくなり、やがて5Vなり10Vなりの一定の電圧になります。こうなると「与えられる電圧の時間変化がゼロ」ですから、電流は通さなくなる=電線が切断されているのと同じ状態、となるわけです。これが「コンデンサは直流を通さない」ということの意味です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(可動鉄片形計器の性質)

可動鉄片形計器についての質問です。直流で使用するには、鉄ブタ部分が磁化する影響で、交流専用とありました。もし、一度直流で使用してしまうと、交流計器での使用は磁化するので使用出来ないのでしょうか?

一度磁化してしまった鉄片でも、その後交流の交番磁界を与えられているうちに、段々と偏った磁化が消えていくという性質があります。したがって、直流で使用して鉄片が偏って磁化してしまっても、交流で使用しているうちに元に戻ります。

このような性質を積極的に活用したのが消磁器(脱磁器とも言います)という装置で、例えば磁化してしまったドライバの磁化を消したい場合など、消磁器を使って交流磁界を与えることで磁化を中和するということが行われています。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成19年 機械 問1・平成23年 機械 問16 直流電動機の性質)

機械編のテキストのP9の例題の質問です。はじめの例題でE=kΦNでこれを機械出力P=EIに代入するとp=(kΦN)Iになり、どうして解答のp=kNI^2になるのですか?

直流直巻電動機は、固定電磁石として回転コイルに対して磁界を与える界磁巻線と、磁界を発生しながら回転し、界磁によって与えられた磁界との間で磁石の吸引・反発力を生み出す回転コイルの巻線とが直列に接続されているのが特徴です。

小学校の理科の電磁石の実験でも分かるように、電磁石の強さは、流す電流に比例します。従って、界磁巻線が作る磁界の強さΦは、比例定数をkとしてΦ=kI(電流に比例する値)として表すことができます。

一方、回転コイルの逆起電圧は、界磁電流をIとして、界磁によって与えられた外部磁界Φ=kIとコイルの巻数Nに比例するのでkNΦ=k’NI(左辺のkとは異なる定数になるのでk’としました)であり、それと回転コイルに流れる電流Iを掛けたものが出力Pとなるのですが、前述のように界磁巻線と回転コイルの巻線は直列ですので、結局k’NI×IでIが2乗になるわけです。

次の例題で逆起電力を求めるのに電動機が600rpmで回転しているときの誘電起電力200Vに2.2と0.5を掛けていますが、電機子に発生する起電力は磁束と回転数に比例するということで2.2をかけているのですか?2.2と0.5を掛けているのはどうしてですか?

2.2を掛けている理由はその通りです。これも小学校の理科の実験で、コイルに棒磁石を入れると電流が流れるという実験があったと思いますが、棒磁石をゆっくり入れると小さな電流、素早く入れると大きな電流が流れました。これは、コイルに発生する電圧は、磁界の変化の速度に比例するからです。電動機の回転数が速いほど、回転コイルから見た磁界の変化速度も速くなりますから、回転数が2.2倍だと逆起電圧も2.2倍ということになります。

0.5は、界磁電流を半分にしたためです。回転コイルに対して与えられる磁界は、固定された電磁石である界磁巻線によって与えられますが、当然この巻線に流す電流が大きければ大きいほど強い磁界を発生するわけです。界磁電流が半分なら、発生する磁界も半分、したがって回転数が同じであれば、界磁電流を半分にした時に回転コイルに発生する逆起電圧も半分です。

そしてトルクT=KΦIより、界磁電流半分で同一トルクをうむためには電機子電流が2倍必要と書いてありますが、ここの意味が理解できませんでした。

最初の項で書きました通り、電動機は、固定された電磁石によって発生する磁界と、回転コイルによって発生する磁界同士が反発したり引きつけ合ったりする力を用いて電力を機械的な力に変えています。したがって、生み出す力は、回転コイルに流れる電流と、固定電磁石に流れる電流の両方に比例することになります。

以上のことより、界磁電流を半分にするというのは、固定電磁石が作り出す磁力を半分にすることを意味していますから、その前と同じだけの力を生み出すためには、回転コイルに流す電流を2倍にしなくてはいけないわけです。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コンデンサの静電エネルギ計算)

理論101ページ例題の8×10の-6乗と、8×10の-3乗がどこから、出て来たのか理解出来ません。答えが、なぜ 2Jになるのかも分かりません。計算方法も教えて下さい。

Qクーロンの電荷が蓄えられ、極板間電圧がVボルトとなっているコンデンサに蓄えられる静電エネルギWは、

  • W=(1/2)QV

で求められます。エネルギとは、物理学的な仕事ができる能力のことで、物理学的な仕事は基本的に力×距離で定義されます。

コンデンサの性質として、Cファラドの静電容量を持つコンデンサにQクーロンの電荷を貯めると、極板間電圧はQ/Cとなりますから、先ほどの静電エネルギの式は

  • W=(1/2)QV=(1/2)CV^2=(1/2)(Q^2/C)

とも変形することができます。

この問題では、まず8μFのコンデンサに1000Vの電圧をかけて充電していますから、Q=CVより8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられることが求まり、次いでこのコンデンサの極板間距離を変えて静電容量を16μFにしていますから、

8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられた16μFのコンデンサに蓄えられる静電エネルギW

を求めれば良いことになります。したがって、W=(1/2)(Q^2/C)の式を用いて、

  • W=(1/2)×(8×10^-3)^2/(16×10^-6)

で値が求まることになります。

式の計算は、図を添付しますのでご確認ください。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成28年 理論 問9 並列共振と直列共振)

電験三種のH28年度の過去問題集の問9の並列共振角周波数ω2の値が求めれません。平方根の指数計算が間違っていると思うのですが、分かりません。教えてください。

この回路の並列共振は、CとL2の部分のみを考えれば求めることができます。もしかしたら、電源電圧Vを通ってC・L2と(L1+R)も並列になっているように見なせる?と思って複雑に考えすぎているのかもしれませんが、この場合L1とRは並列共振に関係しません。

何故かと言えば、並列共振というのは、LとCが直接並列接続されていて、コイルが蓄えるエネルギとコンデンサが蓄えるエネルギが1:1で相互に直接やり取りされる結果、この並列部分に流れ込む電流が見かけ上ゼロになってしまう現象だからです。もしLとCの間に電源が入っていれば(この回路で言えば、C-L1-R-V-Cのループ)、電源はエネルギを供給するので共振とはなりません。

念のため、直列共振と並列共振両方を計算したものを添付いたします。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問16 コンデンサのΔ-Y変換)

電験3種の理論のテキストP35の解説部分の9行目「Y回路を見ると、b-c間はCが2個直列になっています。この合成静電容量が4.5μFとなればよいので、求めるべきCは9μFです」この結論のプロセスがよくわかりません。計算も含めて教えていただけますでしょうか。

Y-Δ変換、またはΔ-Y変換というのは、抵抗やコイル、コンデンサなどの3素子で構成された3端子回路において、それらをΔ型に接続した回路とY型に接続した回路で、相互に変換できることを指しています。

出題の図でいえば、3μFのコンデンサ3個をΔ型に接続した左側の回路と、何かしらのコンデンサ3個をY型に接続した右側の回路で、外部から見た挙動が全く同じものにできるというわけです。

まず1つ目の考え方です。Δ型回路のb-c(あるいはc-d、b-dで考えても良いです)の2端子間を見ると、これは3μFのコンデンサ1個がb-c間に接続され、それにb-d、d-cと2個のコンデンサが直列に接続されたものの並列と見なせます。

3μFのコンデンサを2個直列にすると、直列接続したコンデンサの合成静電容量の式より、1.5μFになることが分かります。したがって、b-c間には、3μFのコンデンサと1.5μFのコンデンサが並列接続されているように見えます。コンデンサの並列静電容量は単純な足し算ですから、b-c間の静電容量は4.5μFに見えることになります。もちろん、c-d、b-d間も4.5μFに見えます。

ここで右のY回路を考えると、b-c間、c-d間、b-d間のどこを取っても、CμFのコンデンサが2個直列に接続されているように見えます。Δ-Y変換は、3端子から見た挙動が全く同じであれば良いので、C=9μFとすることによりb-c、c-d、b-d間どれを取っても4.5μFに見えることになり、これが答えとなります。

2つ目の考え方は、抵抗のΔ-Y変換と同じ式を使う方法です。

もしコンデンサではなく抵抗であれば、Δ型回路の抵抗値を1/3にしてY型に接続すれば変換できます。抵抗の代わりにコンデンサのリアクタンス1/ωCを使えば、1/ωCを1/3にしてY型に接続すれば変換できることになります。

ここで、(1/ωC)×(1/3)=1/ω3Cですから、Cを3倍つまり9μFが答えとなります。