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SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成25年 理論 問12 コイルと抵抗回路の過渡現象)

理論テキストP44例題の中で電圧30vを10Ω、20Ωで分圧したら20vという考え方が理解できませんでした。申し訳ありませんが、詳しく教えて下さいよろしくお願いします

コイルというのは、それまでゼロだった電圧が掛けられた瞬間、電流を流さないという働きを持ちます。したがって、その瞬間だけに絞って考えると、回路から切り離してしまって良いことになります。

コイルを切り離してしまえば、回路は30Vの電源に10Ωと20Ωが接続されただけの回路と考えることができます。この回路に流れる電流をオームの法則で求め、その電流と20Ωの抵抗値を掛けたものが、20Ωの両端に発生する電圧ということになります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルとコンデンサの過渡現象)

電験3種の理論の12過渡現象に関する質問です。コイルは直流に対して電流を流しやすく、コンデンサは直流に対して電流を流しにくいと思うのですが、過渡現象の箇所ではコイルは時間変化を嫌うので最初は電流を流さず、コンデンサは時間0の時に電流を流すと矛盾してるような気がします。どこの考え方が間違ってるのでしょうか。

まず、コイルの性質を厳密に言いますと、

  • 流れる電流の時間変化が大きければ大きいほど、両端に大きな電圧を発生させる

という性質を持っています。つまり、短ければ短い時間の間に電流が変化するほど、そして電流の変化量が大きければ大きいほどコイルの両端に発生する電圧は大きくなります

例えば、0.1秒の間に2A変化したとすると、1秒では20A変化する計算になりますが、0.001秒の間に2A変化したとすると、1秒では2000A変化することになります。また、0.1秒間に2A変化すれば1秒間に20Aですが、0.1秒間に5A変化すれば、当然1秒間では50Aの変化になります。

これを数式で表せば、V=L(di/dt)となります。

直流回路において、スイッチを入れた瞬間、それまで電流がゼロだったところに電流を流そうという力が働きます。したがって極めて微小の電流は流れ込むのですが、電流がゼロからいきなりある値になるということは、「電流の時間変化」は物凄く大きな値になります。このときコイルの両端には大きな電圧(与えられた電源電圧と同じ電圧)が発生し、電流が流れ込むのを阻止します。これが、「コイルは時間変化を嫌う」性質です。

その後、徐々に電流が流れるようになると、1Aなら1A、5Aなら5Aで時間的に変化しない電流が流れ続けるようになります。コイルは「流れる電流の時間変化に比例した電圧」を発生しますから、時間変化がゼロであれば両端に発生する電圧もゼロ、つまり単なる電線と同じになります。これが、直流に対しては電流を流しやすいという理由です。

コンデンサは、コイルと真逆の性質を持ちます。つまり、

  • 与えられる電圧の時間変化が大きければ大きいほど、内部に大きな電流を流す

という性質です。数式で表せば、V=(1/C)∫idtです。

直流回路でスイッチを入れた瞬間、それまでゼロだった電圧がいきなり上昇するわけですから、与えられた電圧の時間変化はものすごく大きい値になります。したがってコンデンサは大きな電流を遠し、この瞬間だけは、コンデンサはゼロΩ、つまり導線と同じになります。

しかし、直流回路ですから、だんだんと電圧変化はなくなり、やがて5Vなり10Vなりの一定の電圧になります。こうなると「与えられる電圧の時間変化がゼロ」ですから、電流は通さなくなる=電線が切断されているのと同じ状態、となるわけです。これが「コンデンサは直流を通さない」ということの意味です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(可動鉄片形計器の性質)

可動鉄片形計器についての質問です。直流で使用するには、鉄ブタ部分が磁化する影響で、交流専用とありました。もし、一度直流で使用してしまうと、交流計器での使用は磁化するので使用出来ないのでしょうか?

一度磁化してしまった鉄片でも、その後交流の交番磁界を与えられているうちに、段々と偏った磁化が消えていくという性質があります。したがって、直流で使用して鉄片が偏って磁化してしまっても、交流で使用しているうちに元に戻ります。

このような性質を積極的に活用したのが消磁器(脱磁器とも言います)という装置で、例えば磁化してしまったドライバの磁化を消したい場合など、消磁器を使って交流磁界を与えることで磁化を中和するということが行われています。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コンデンサの静電エネルギ計算)

理論101ページ例題の8×10の-6乗と、8×10の-3乗がどこから、出て来たのか理解出来ません。答えが、なぜ 2Jになるのかも分かりません。計算方法も教えて下さい。

Qクーロンの電荷が蓄えられ、極板間電圧がVボルトとなっているコンデンサに蓄えられる静電エネルギWは、

  • W=(1/2)QV

で求められます。エネルギとは、物理学的な仕事ができる能力のことで、物理学的な仕事は基本的に力×距離で定義されます。

コンデンサの性質として、Cファラドの静電容量を持つコンデンサにQクーロンの電荷を貯めると、極板間電圧はQ/Cとなりますから、先ほどの静電エネルギの式は

  • W=(1/2)QV=(1/2)CV^2=(1/2)(Q^2/C)

とも変形することができます。

この問題では、まず8μFのコンデンサに1000Vの電圧をかけて充電していますから、Q=CVより8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられることが求まり、次いでこのコンデンサの極板間距離を変えて静電容量を16μFにしていますから、

8×10^-3クーロンの電荷が蓄えられた16μFのコンデンサに蓄えられる静電エネルギW

を求めれば良いことになります。したがって、W=(1/2)(Q^2/C)の式を用いて、

  • W=(1/2)×(8×10^-3)^2/(16×10^-6)

で値が求まることになります。

式の計算は、図を添付しますのでご確認ください。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成28年 理論 問9 並列共振と直列共振)

電験三種のH28年度の過去問題集の問9の並列共振角周波数ω2の値が求めれません。平方根の指数計算が間違っていると思うのですが、分かりません。教えてください。

この回路の並列共振は、CとL2の部分のみを考えれば求めることができます。もしかしたら、電源電圧Vを通ってC・L2と(L1+R)も並列になっているように見なせる?と思って複雑に考えすぎているのかもしれませんが、この場合L1とRは並列共振に関係しません。

何故かと言えば、並列共振というのは、LとCが直接並列接続されていて、コイルが蓄えるエネルギとコンデンサが蓄えるエネルギが1:1で相互に直接やり取りされる結果、この並列部分に流れ込む電流が見かけ上ゼロになってしまう現象だからです。もしLとCの間に電源が入っていれば(この回路で言えば、C-L1-R-V-Cのループ)、電源はエネルギを供給するので共振とはなりません。

念のため、直列共振と並列共振両方を計算したものを添付いたします。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問16 コンデンサのΔ-Y変換)

電験3種の理論のテキストP35の解説部分の9行目「Y回路を見ると、b-c間はCが2個直列になっています。この合成静電容量が4.5μFとなればよいので、求めるべきCは9μFです」この結論のプロセスがよくわかりません。計算も含めて教えていただけますでしょうか。

Y-Δ変換、またはΔ-Y変換というのは、抵抗やコイル、コンデンサなどの3素子で構成された3端子回路において、それらをΔ型に接続した回路とY型に接続した回路で、相互に変換できることを指しています。

出題の図でいえば、3μFのコンデンサ3個をΔ型に接続した左側の回路と、何かしらのコンデンサ3個をY型に接続した右側の回路で、外部から見た挙動が全く同じものにできるというわけです。

まず1つ目の考え方です。Δ型回路のb-c(あるいはc-d、b-dで考えても良いです)の2端子間を見ると、これは3μFのコンデンサ1個がb-c間に接続され、それにb-d、d-cと2個のコンデンサが直列に接続されたものの並列と見なせます。

3μFのコンデンサを2個直列にすると、直列接続したコンデンサの合成静電容量の式より、1.5μFになることが分かります。したがって、b-c間には、3μFのコンデンサと1.5μFのコンデンサが並列接続されているように見えます。コンデンサの並列静電容量は単純な足し算ですから、b-c間の静電容量は4.5μFに見えることになります。もちろん、c-d、b-d間も4.5μFに見えます。

ここで右のY回路を考えると、b-c間、c-d間、b-d間のどこを取っても、CμFのコンデンサが2個直列に接続されているように見えます。Δ-Y変換は、3端子から見た挙動が全く同じであれば良いので、C=9μFとすることによりb-c、c-d、b-d間どれを取っても4.5μFに見えることになり、これが答えとなります。

2つ目の考え方は、抵抗のΔ-Y変換と同じ式を使う方法です。

もしコンデンサではなく抵抗であれば、Δ型回路の抵抗値を1/3にしてY型に接続すれば変換できます。抵抗の代わりにコンデンサのリアクタンス1/ωCを使えば、1/ωCを1/3にしてY型に接続すれば変換できることになります。

ここで、(1/ωC)×(1/3)=1/ω3Cですから、Cを3倍つまり9μFが答えとなります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(抵抗とコイルの過渡現象)

Sのスイッチを閉じた状態でコイルが0オームになった際、電流がコイルに3A流れます。その際コイルと並列にある20オームの抵抗部分には電流が流れない認識でよろしいのでしょうか。

おっしゃる通り、コイルが0Ωで3Aの電流が流れているとき、並列の抵抗には全く電流が流れません。

一見、いくら何でも少しは電流が流れそう?な気がしてしまいますが、コイルが0Ωということはコイルの両端に発生する電圧も0ボルトです。ということは、並列になっている20Ωの抵抗の両端の電圧も0ボルトになります。

オームの法則から、抵抗に流れる電流は、I=V/Rで求められますので、V=0であれば電流Iも必ずゼロとなるわけです。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(三相交流のΔ結線とY結線)

理論テキストp77の例題の質問です。①の電源をΔ結線に変換した場合で200VのY型結線電源をΔ結線に変換した場合、線間電圧は200Vの√3倍になるのはどうしてですか?

三相交流というのは、互いに120°ずつ位相がずれた3個の単相交流電源を、Y型もしくはΔ型に接続したものです。具体的な波形をエクセルで作ってグラフにしたものを以下に示します。


ここでは、それぞれの電圧の最大値を1としてグラフにしているので、Δ結線にすれば線間電圧もそのまま最大値が1となります。

これらをY結線にした場合、互いに120°位相がずれた単相交流2つの電圧差が線間電圧となります。したがって、これもエクセルでグラフにしてみました。黒の線が位相差ゼロの電源、赤の線が位相差120°の電源、そして青の線が、それら2つの電圧の差を取ったものです。

グラフからも分かるように、差を取った最大値は約1.7倍になっていることが見て取れるかと思います。

なお、方眼紙に手書きでベクトル図を描いたものも添付します。cos30°の2倍、つまり(√3/2)×2で√3倍になるのが分かるかと思います。

理論のテキストの例題などを復習した後、過去問に取り組もうと思うのですがどのように進めていけばよろしいですか?

勉強の進め方は人それぞれ好みがありますから、このように勉強するのが絶対的に正しい、というものはありませんが、参考までに私なりの勉強方法は次の通りです。

ある程度理解できたと思ったら、過去数年分の過去問をまずは何も見ずに解いていき、今の知識で解けるものと解けないものに分けます。解けない問題については、ある程度途中まで見当がつく問題から順に、解説や資料、ネット上の情報などを活用して解き方を見つつ、何も見ずに解けるようになるまで練習していきます。これを繰り返すことで、次第に何も見ずにほとんどの問題が解けるようになるのではないでしょうか。

言うまでもなく、意味は分からないけど答えは何番、という暗記をしても無意味ですから、きちんと納得できる理屈を理解するというのが大切です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成19年 理論 問17a)

理論123ページの最後の項目の10/1.6×10の-19乗×1.69×10の 23乗の答えが3.7×10の-4になるのか、分かりません。計算方法を教えて下さい。

丁寧に計算したもののスキャンを添付しますので、ご確認いただければと思います。

「10の何乗」とか小数・分数が入り混じってくると計算が大変になりますが、一歩ずつ進めていただければ回答は出ますし、試験にも電卓が持ち込めますので、そう恐れる必要はないでしょう。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成21年 理論 問16 抵抗のΔ-Y変換)

理論P34例題についてですが、解説のデルタ部分をスターにした図で、なぜR/3Ωになるのかがわかりません。またデルタからスターへの変換の仕方がよくわかりません。よろしくお願い致します。

Δ-Y変換あるいはYーΔ変換というのは、抵抗3本がΔ型に接続されている回路とY型に接続されている回路がある場合、その3端子から内部を見た挙動が全く同じに見えるΔ回路とY回路が存在し、それらを相互に変換することができる、というものです。

一例として、例題の前に描いてあるΔ回路やY回路の図について考えます。

もし、仮に30Ωの抵抗3本がΔ型に接続されている場合、a-b端子(もしくはb-c、a-cのいずれでも良い)を外部から見た場合の抵抗値を考えます。

これは、30Ωの抵抗と、a-c-bという経路で30Ω2本が直列に接続された60Ωの抵抗が並列に接続されているように見えます。したがって、a-b間の抵抗値は、並列の計算式を用いて20Ωと求まります。

つまり、30Ωが3本のΔ型回路は、どの2端子間を見ても20Ωに見えるわけです。

次に、Y型回路を考えます。Δ型回路と同様に端子a-b間の抵抗値を求めると、これは端子a-R-中点ーR-bのように、抵抗2本が直列になっている回路に見えます。ということは、端子a-b間、b-c間、c-a間、いずれも2Rの抵抗値を持ちます。

ここでΔ型回路と対比して考えると、R=10Ωであれば、どの端子間も20Ωに見えることになります。

つまり、10Ωが3本のY型回路は、どの2端子間を見ても20Ωに見えるわけです。

以上のように、Δ回路をY回路にする場合、抵抗値は1/3になることが分かります。これを使って、Δ回路の一素子RをR/3に変換してY型にすることで回路を簡略化し、求めやすくしているのが例題の解き方です。