「仕事」カテゴリーアーカイブ

SAT電験3種講座 機械 質問回答(誘導電動機の性質と力率・効率)

カゴ型誘導電動機についてご質問があります。

始動時の力率は悪いものの、定格運転時の損失が小さく高効率と記載してありますが、これは定格運転時は力率がいいという意味でよろしいでしょうか?その意味で合ってれば、定格運転時も二次抵抗は低いままなので力率は悪いままのように思えます。なぜ力率が良くなるのでしょうか?定格運転時の損失が小さく、高効率は力率のことを言ってないということでしたら、力率はやはり悪いままなのでしょうか?

お書き頂いた通り、かご型誘導電動機は始動時は大変力率が悪いですが、定格運転時は力率が良くなります。

但し、同期電動機のように力率=1.0にはなりませんから、通常、並列にコンデンサを入れて力率補償しながら運転します。

二次抵抗との関係ですが、これは二次抵抗の値自体はさほど変化しなくても、回転上昇によって一次側と二次側の結合が変化していくことを考慮することでイメージが付くかと思います。

始動時は滑りが1ですから、二次側(回転コイル)に発生する電圧は電源周波数と同じになり、コイルに誘起される電圧は、ファラデーの電磁誘導則によりコイルを貫く磁束の時間変化、すなわち周波数に比例することから、二次側には高い電圧が発生することになり、ここに低抵抗が負荷抵抗として挿入されていることから効率が悪くなります。(高電圧・小電流の回路に小抵抗を入れても消費電力は小さい。無駄に流れる電流は無効電流となって電源側に現れ、力率は悪くなる)

回転が上がってくると、例えば滑りが0.1であれば二次側の周波数は電源の1/10になります。こちらも電磁誘導則から、二次側に発生する電圧は小さくなる分、大電流が流れることになります。低電圧・大電流の回路に負荷抵抗を挿入することになるので、回転開始時に比べると大きなエネルギーを消費できることになり、高効率で運転できるようになります。

以上のようなイメージを持っていただければ、動作がイメージできるのではないでしょうか。

なお、低効率というと、力率が悪くて流れる電流が多いわりに取り出せる力が小さい場合と、抵抗分などで熱になる無駄な電力が多くて取り出せる力が小さい場合の両方を指すことができますが、誘導電動機では後者のような熱損失要因はほとんど無いため、前者の意味で言葉を使っているとお考えいただいて結構です。

SAT電験3種講座 法規 質問回答(電験3種 平成26年 法規 問10 過電流遮断機の定格電流と電線の許容電流)

過電流遮断器の定格電流は3倍、電線の許容電流は1.25倍か1.1倍です。ということは遮断器の方が定格電流が高いです。でも図では電線の許容電流が一番高くなっているのはなぜですか?電線の方が定格電流が高くないとおかしい気がします。電線の定格電流になる前に遮断器が作動しないと電線が溶けてしまいそうです。

これについては「法的にそう規定されているから」ではあるのですが、もうちょっと深く突っ込んでお答えします。

確かに、理論的には、可能性として考えられる最大の電流に耐える電線を用意しないと、過電流によって電線は危険な状態になってしまいます。しかし、機械などの科目でも出てきた通り、特に誘導電動機などは起動初期の短い時間に非常に大きな電流が流れ、その後落ち着くという特性を持っています。もしそれに耐えるだけの電線を用意するとなると、極めて大容量の電線を用意しなくてはいけません。

一方、電線の許容電流は、ジュール熱による発熱によって規定されます。したがって、短時間であれば、電線の許容電流を超えて電流を流しても現実問題として特に問題は発生しないという事実があります。

以上のことより、電動機の特性、遮断機の遮断特性、電線の発熱量などを総合的に考慮し、短時間であれば電線の許容電流を超えても問題は発生しないという事情と太い電線は非常に値段が高くなるという事情を加え、このように規定されているわけです。

法律が「電線の過電流」にお墨付きを与えるというのも変な感じがしますが、電線の熱容量(発熱した場合の温度上昇のしにくさ)なども鑑みた上でこのように規定されていますから、現実的に何ら問題は無いわけです。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成27年 機械 問17 過去問解説 ブロック線図の伝達関数)

機械の問17 (b)問題で、「10倍大きくなるにつれ-20dB変化する」とあるので、(1)、(2)の2択にしぼれますが、なぜ(1)が答えになるのか分からないので、教えて下さい

まず(a)について、1/jωTの出力を1とすると、出力C(jω)はK=10より10になります。

また、逆算すると1/jωTの入力がjωTですから、R(jω)は1+jωTと求まります。

ここでT=0.2なので、これを代入するとR(jω)=1+j0.2ωとなり、答えは(1)が求まります。

これを踏まえて考えます。このブロック線図は低い周波数を通し高い周波数を遮断するLPFですが、フィルタの遮断周波数は出力が入力の半分となる点として定義されますから、周波数伝達関数10/(1+j0.2ω)においてω=0の場合に比べて出力電力が半分となるωを求めることになります。これは式より、ω=5において10/(1+j0.2ω)= 10/(1+j1)になることが分かりますから、変曲点のω=5である(1)が正解となります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成27年 理論 問3 磁性体材料の磁化特性と透磁率)

空欄イの箇所ですが、B/Hの最大値を見るとグラフではHが1〜2のあたりが一番大きくなると思うのですが、なぜ0〜2で考えるのでしょうか。

透磁率B/Hは、「外部から、Hの磁界を与えたときに、磁性体の内部にはBの磁束密度が生じるとき、Hに対するBの割合」を意味しています。したがって、H=0の原点からあるHまでの値を使って求めます。

確かにB/Hの曲線自体の傾きは、H=1.5~2程度の部分が最も傾きが大きいことになりますが、もし仮にこの部分を使って透磁率を定義した材料があったとすると、その透磁率を発揮できるのはH=1.5~2.0の間だけという事になってしまい、これでは磁性材料の特性を示す指標として余り意味がなくなってしまいます。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成27年 電力 問14 過去問解説 磁性体材料の特性と利用方法)

正解より、鉄心材料は、保持力が大きく、飽和磁束密度が小さくヒステリシス損が小さい材料が選ばれる、とのことです。この理由(関連付け)がわかりません。また、磁性材料は下記2種類に大別されますが、それぞれ、なぜそのものを選ぶのかも、よくわかりません。併せて、教えてください。

(1)磁心材料

透磁率、抵抗率、飽和磁束密度→大きいものを選ぶ

保持力、残留磁気→小さいほうが有利

(2)磁石材料

保持力、残留磁気→大きいものを選ぶ

鉄心は、変圧器において、巻線で作り出した磁束を効率よく低損失で通過させる必要があります。そして、変圧器は50Hzや60Hzの交流で使用されますから、鉄心の中も一秒に50回や60回、磁束の向きが変化します。したがって、磁束を効率よく低損失で通過させる=透磁率が高い必要があります。

また、出来るだけ大量の磁束を通すことが出来る方が好ましいですから、飽和磁束密度が大きいものが有利です。

鉄心の中を磁束が変化して流れると、それによって鉄心には渦電流が発生しますが、鉄心の電気抵抗が小さいと、この渦電流が大きくなり損失が増えますから、抵抗率は大きい方が有利です。

 

磁石材料は、永久磁石を思い浮かべて頂ければ結構です。

磁性体材料は、鉄心なども同じですが、金属の内部には極めて微小な磁石が大量に存在しています。これを外部からの磁界によって一方向に揃えると、その材料は永久磁石になります。このとき、外部からの磁界で揃えられた微小磁石について、その方向の保ちやすさの指標が保持力です。つまり、保持力が大きい材料は、時間が経ってからも強い磁力を保つことができます。

残留磁気は、上記のように外部からの磁界によって与えられた磁気が、外部磁界を取り去った後にどのくらい残留するかという値ですから、これも大きいほうが永久磁石の材料として好都合です。

問題の正解は(2)ですが、この問題は「誤っているものを選べ」という問題ですから、記述中の「飽和磁束密度が小さく」が誤りで、「保持力が小さく、飽和磁束密度が大きく」とあれば正しい記述になります。

SAT電験3種講座 機械 質問回答(界磁電流・励磁電流の意味)

機械編テキスト 10P 直流電動機(2)

励磁電流と界磁電流は同じ意味なのでしょうか?

界磁電流・・・固定した電磁石に流れる電流を界磁電流。と先生に習いましたが・・・

この場面では、励磁電流=界磁電流という認識で大丈夫です。

励磁電流というのは、電磁石に電流を流して電磁石にするための電流を指します。

界磁電流は、電動機を回転させるための(通常は、一方向のN-S極を持つよう、直流で)電磁石を磁化するための電流です。

例えば直流電動機の場合、内部で回転する電磁石は、ブラシと整流子の作用で回転によってN-S極が入れ替わりますが、これと吸引・反発させるために回転電磁石の外側に置かれた電磁石は一定の磁極を持ちます。したがって、外部の固定された電磁石に流す電流が界磁電流です。

また、同期電動機の場合は、固定された電磁石に三相交流を流し、それによって作られる回転磁界の中で、一方向のN-S極を持つ電磁石が回転するわけですが、この場合は回転する電磁石に流す電流が界磁電流という事になります。

2017年夏・講座収録の日々

今年(2017年)の夏は、8月2日に大阪入りし、20日までの予定でSAT電験3種講座の収録を行っています。今年の改訂点ですが、電力・機械・法規の教材を大幅に増補したため、今までは必要最小限…いや、それ未満の事しか書いていなかったのが、多少はマトモになったかなと思ってます。

昨日13日までで、理論・電力・機械まで収録し終わりました。相変わらず我ながら良く喋るモノだと思いつつも、喋るのが仕事なのでそれで良いんですけどね。今回、機械の第一章(直流電動機)では、この賞だけで1時間半くらい喋ったんじゃないかと思います。

色々な場所で講義をしていて思うのは、やっぱり本質をしっかりと理解することが王道であって、それに勝るものは無いということです。私の仕事は、相手が何を理解していないかを早く正確に読み取って、どこをどう言う風に説明すれば最も早く確実に、正しく理解できるかを考え、相手の様子を見ながらそれを確実に伝えることです。物凄くエネルギーを使いますが、ただ本を読み上げるだけならわざわざ喋る意味ないですからね。

今日からは法規に入ります。できれば2日間くらいで終わりにして、後は消防設備士の再収録と、一部過去問解説(私が誤った答えを示していたもの…)を収録し、18日には終わりにしたいと思ってます。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成24年 電力 問7 過去問解説 安定度制約の意味と概念)

電力過去問24年問7

安定度制約とはなんでしょうか?直流、交流の安定度の制約の違いについても教えてください。

「安定度制約」ですが、これは交流送電と直流送電の俯瞰的イメージを正しく持つことが必要になります。

電気回路的には、交流だろうが直流だろうが、発電ー送電ー消費、と電線で結ばれているだけです。しかし実際には、複数の発電所から複数の変電所を通り、ときには結合、時には分岐して最終的な電力消費点まで運ばれています。また、発電所から消費地までの距離は数百kmなどの長距離であることも多く、いくら電気の伝わる速度が1秒間に30万kmという高速であったとしても、途中の対地静電容量、送電線のリアクタンス、変圧器の作用などの様々な影響を受けることで過渡的に電流や電圧の揺らぎが発生し、各発電所からの送電電力や位相などが時間的に脈動するという現象が現れます。これを物理的・数学的に解析するのは非常に大変なのですが、身近な例で何か分かりやすい置き換えがないかと考えたところ、次のような例が思い付きました。

 

色々な方面から道路が集まってきて、大きな一つの道路になるという状況を考えます。このとき、集まってくる道路は各々に様々な性質を持っています。

  • 1車線の道路だけど、ここまでに途中2車線になったり3車線になったり、また1車線に戻ったりして最終的に1車線でやってくる道。
  • 2車線の道路だけど、途中1か所で1車線に絞られて、また2車線に戻ってやってくる道。
  • 3車線の道路で、途中車線が変わることなく3車線のままで来る道。
  • 4車線の道路で、途中8車線に膨らんで、最後でまた4車線に絞られて来た道。

これらが集まって合計10車線になったとします。

この10車線の道が渋滞してあまり進まないとき、ここに至る4本の道からは車線数に比例して車が入ってきます。

適度に流れているときも、まあほぼ車線数に比例して車が入ってくるでしょう。

ところが、この10車線の道に全く車がおらず、4本の道から可能な限り最大の車が流入してくるとしたら、それぞれの道の途中の車線の状況が影響し、1:2:3:4で綺麗に比例して流れ込むことにはならないはずです。つまり、10車線を全速力で車が走ることはできず、そこに至るまでの4本の道の途中の性質が影響として出てきてしまいます。

つまり、交流送電線路の途中のリアクタンスや静電容量、変圧器の特性の影響などが存在する(=道路の途中に幅広部分があったり絞り部分があったりする)場合、多数の送電線路を連結して電力を供給するとき、それらの送電線路の能力100%の電力を供給しようとすると、それぞれの経路に過渡的な偏りが生じてしまい、その結果電力供給が不安定になってしまいます

この不安定さを緩和するためには、合流して10車線になった道路に適度に渋滞がある(=その100%の能力を供給せず、ある程度の所で電力を抑える)ことが必要となります。これが安定度制約です。

一方、直流送電の場合は、その「途中の車線の状況」が存在せず、1車線なら最初から最後まで全部1車線、3車線なら常にずっと3車線の道が合流しますから、たとえ10車線の道が可能な限り最大の車を流していても、それは綺麗に1:2:3:4と配分され、それぞれの道が割合ごとに綺麗に車の量を分担することになります。つまり100%の能力を発揮しても安定して送電ができることになります。

SAT電験3種講座 法規 質問回答(電験3種 平成25年 法規 問11(a) 過去問解説 高圧進相コンデンサの劣化判断計算)

平成25年度の法規過去問題の問11の(a)の解説におきまして先生は50kvar/(6600V/√3)で無効電流を出してそれぞれの比にあてて計算すればいいと解説がありましたがいくらやっても導き出せません。分母が√3×6600であれば答えが出たのですが、私の勘違いでしょうか。ご教授お願い致します。

まず、内部素子がY結線ですから、一相分について考えてみます。

一相分の相電圧は、(6600/√3)Vです。

また、コンデンサの全容量が50kVarですから、一相分については(50/3)kVarです。

コンデンサの無効電力は、電圧×電流で求められますから、これよりコンデンサに流れ込む電流を求めると、

(50000/3)÷(6600/√3)=約4.37Aとなります。これが定格電流になります。

ここで、S相とT相はその1.15倍ですから、約5.0A、R相は1.5倍で約6.6Aが求まります。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成25年 電力 問13 過去問解説 配電線路の電圧降下計算)

H25電力過去問題、問13について質問です。

A-B間の電圧降下E=√3×100×(0.3×0.8+0.2×0.6)は問題ないのですが、S-A間の電圧降下を求める際に、A点での電流が150+100=250Aで算出すると回答が導かれるのですが、なぜ250Aになるのでしょうか?どのように解釈すればよいのでしょうか?お手数ですが、ご教授お願いします。

この問題の図は、電源SからA点までの電線1km、そしてA点からB点までの電線1kmが引かれ、B点での負荷電流はS~A~Bと2km流れ、A点での負荷電流はS~Aと1km流れて供給されています。

従って、S~Aの間は、A点での負荷電流とB点での負荷電流が一緒に流れることになります。