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SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成23年 機械 問16 直流電動機のトルクと界磁電流・電気子電流・端子電圧)

機械テキスト9ページの2個目の例題の下から三行目の 「200×2.2×0.5」の0.5と一番下の「220+40×0.4」の0.4は、どこか ら出て来たのでしょうか?

直流電動機の電機子(回転コイル)に発生する逆起電圧は、ファラデーの電磁誘導の法則により、単位時間当たりに回転コイルを貫く磁束の変化量とコイルの巻き数の積に比例します。コイルの巻き数は回転中に変わりませんから、単位時間あたりにコイルを貫く磁束の変化量に注目すれば良いことになります。

単位時間あたりにコイルを貫く磁束の変化量は、コイル自体の回転数と、外部から与えられる固定磁界の大きさに比例します。外部から与える固定磁界は、他励電動機ですから、励磁巻線に流す界磁電流に比例することになります。

問題の条件より、回転数が600rpmから1320rpmになるという事は、回転数が2.2倍です。もし励磁電流が変わらなければ、巻線に発生する逆起電圧は2.2倍になります。しかし、「界磁電流を半分にして」とありますから、逆起電圧はその半分(0.5倍)になります。これが0.5の数字の元です。

以上をまとめると、600rpmで回転している最初の誘導起電力(逆起電圧)が200Vという事なので、1320rpm回転時の逆起電圧は、200×2.2×0.5=220Vという事になります。

トルクは、電動機の回転軸の出力(平たく言えば、力の大きさ)ですから、巻線の巻き数kと、外部から与えられる磁界の大きさφと、回転コイルに流す電流Iの積で求まります。出題文より、外部から与えられる磁界(界磁)の大きさが半分になっているのに、最初と同じトルクを得る(負荷はトルクが一定、という条件から)ためには、巻き数を2倍にするか電機子電流を2倍にする必要があります。当然巻き数は自由に変えられませんから、電機子電流を2倍の40Aにする必要があることが分かります。

電機子抵抗は、電機子巻線と電動機の端子の間に直列に入っている抵抗成分ですから、電機子自体の誘導起電力が220V、電機子抵抗が0.4Ω、電機子電流が40Aとなれば、電動機の端子に与えるべき電圧は、誘導起電力に電機子抵抗の電圧降下分を足した値となり、220+0.4×40で求めることになります。これが0.4の値の理由です。

2009年7月28日 リアスシーライナー 八戸→仙台

teuもうすぐ3.11の大震災から丸6年経つことですし、いつか公開しようしようと思いつつそのままになっていた、八戸と仙台を三陸海岸経由で結ぶ臨時列車、リアスシーライナー号の写真や録音データを公開します。

2009年7月27日、まずは八戸まで新幹線はやて号で向かいます。今はなき200系新幹線も懐かしいです。

知人からVIEWグリーン券を頂いたので、はやて号はグリーン車に乗りました。

八戸到着後は、まず大湊線に乗車。それについてはまた別途書くかもしれません。

翌2009年7月28日、いよいよリアスシーライナーで八戸から仙台へ。八戸駅前のホテルをチェックアウトし、駅のホームに降りると、出発式典が開かれていました。

今となっては、もう三陸鉄道の車両が「仙台行き」を表示してここに登場することもあり得なくなりましたね。

8時11分、列車は走り出しました。まず、JR八戸線内をJRの列車として走ります。案内放送では、オルゴールまで鳴らすサービス。

久慈~宮古までは、三陸鉄道北リアス線です。3.11の大震災で壊滅的な被害を受けた地区の山間を縫って列車は走ります。

 

田老駅。こんな築堤の上にあるのに、ここまで津波は上がってきて壊滅しました。

間もなく宮古駅到着。宮古駅の駅舎そのものは津波による流失は免れましたが、市内は広範囲にわたって損壊しました。

宮古から釜石までは、JR山田線です。山田線の宮古~釜石間の津波被害は著しく、完全に廃線となるかとも思われましたが、三陸鉄道に経営が移管され、南リアス線・北リアス線が接続され一体となって鉄道による運行が継続されることになりました。

2018年度の開通を目指しているそうです。

釜石駅では、立ち食い蕎麦を食べました。地元で採れた海草がたっぷりと乗っていたのを覚えていますが、その後に訪れたときは蕎麦屋はもう無くなっていました。

釜石から盛までは、三陸鉄道南リアス線です。

綾里駅では、下りのリアスシーライナー号とすれ違います。

私が乗った上り列車は三陸鉄道の普通気動車、下り列車はJR東日本のリゾート列車で運転されていました。どうして八戸からの上りを選んだか良く覚えていませんが、リゾート車両よりも一般型の車両の方が、より地元の空気に触れることができるのと考えていたのかもしれません。

鉄道録音趣味の人は、周囲の乗客の話声などが入るのを大変嫌う傾向がある気がしますが、私は車両のモーターやエンジン、案内放送などだけではなく、周囲の雑踏、地元客の話し声、そしてある時は喧嘩(これは穏やかではありませんが…)や寝台列車の客の鼾なども旅の思い出の要素だと思っているので、その結果だったと思います。(ただ単に、VIEWグリーン券で新幹線に乗れるから、仙台で降りないで出来るだけ長く乗れる八戸にした…なんてのが真相かも知れません。笑)

盛駅からは、大船渡線に入ります。小友、陸前高田、気仙沼…と、3.11で壊滅した地区を行きます。

陸前高田駅では、JRの職員が殉死されたそうです。この方でしょうか…。

色々と思うところはありますが、このまま公開することにします。

気仙沼から前谷地までは気仙沼線です。気仙沼界隈も、3.11で壊滅しました。南気仙沼から乗ってきたおばちゃんたちの声が録音に入っていますが、このおばちゃんたちは無事だったのでしょうか。録音を聞き直すたび、当日の情景が鮮明に浮かんで涙が出てきます。

途中駅ですれ違った反対列車。このキハ48552は、津波によって脱線転覆し廃車になりました。(キハ48552で検索すると出てきます)

前谷地からは、石巻線で小牛田、そして小牛田から仙台までは東北本線です。さすがにここまで来ればだいぶ内陸地になりました。

時刻も夕方となり、日もだいぶ傾いてきました。

小牛田まで来れば、あとは松島に途中停車し、終点の仙台です。

仙台まで乗ってきた車両は、翌日朝の八戸行きとなって仙台を発車していきました。

今は無き、常磐線経由の上野行きスーパーひたちの写真も撮っていました。

三陸鉄道を経由して八戸と仙台を結ぶ「リアスシーライナー」号は、夏の数日間だけ運行される臨時列車ですし、八戸も近い場所ではありませんから、乗りに行くのも気軽にとは行きませんでした。このときは、たまたま使用期限が迫っていたVIEWグリーン券(指定席の料金でグリーン車に乗れる券)を頂いたので重い腰が上がり、乗りに行ったのだと思います。

三陸海岸は、私が乗車した2年後に大地震で壊滅的な被害を受けたわけですが、今でも沿線風景や主要駅での歓迎、ホームの特設屋台の海産物の味、そしてたまたま乗ってきた地元のおばちゃんなど、思い出しては時に涙が滲んでしまう思い出深い旅行となりました。

※念のため書いておきますが、文章・写真・音のデータなどの著作権は私にありますので、無断転載禁止です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成25年 理論 問6 直流回路の計算・テブナンの定理)

60v,80v双方の回路で10Ωに流れる電流値の計算の解説が省かれており、自力では理解できません。詳しい解説をお願いします

まず、60Vを残した回路について考えます。

60Vの電池の+極から順番に見ると、まず40Ωが入り、その次に「40Ωと40Ωの並列抵抗」が入るのと同じことになります。

40Ωと40Ωの並列抵抗は20Ωですから、電池から見ると、これは40+20の60Ωの抵抗が接続されているのと同じに見えます。したがって、電池から流れ出る電流は、オームの法則から1Aと求まります。

さて、この1Aの電流が、「40Ωと、10+30の40Ωを並列にした20Ω」に流れる場合、その両端の電圧は、1A×20Ω=20Vと求まります。という事は、「10+30の40Ω」の両端に掛かる電圧も20Vですから、10Ωに流れる電流は、20V÷40=0.5Aと求めることができます。

80Vの方も同様に考えます。

80Vの電池の+極から見ていくと、まず60Ωが入り、次いで「60Ωと、10+20=30Ωの並列」が入って-極に戻ります。

60Ωと30Ωの並列抵抗を計算すると20Ωですから、電池から見ると60+20=80Ωの抵抗が接続されているように見えます。したがって、流れ出す電流は1Aです。

ここで、「60Ωと30Ωの並列抵抗の20Ω」に流れる電流が1Aということは、その両端に発生する電圧は20Vです。したがって、30Ωに流れる電流は、20÷30=2/3Aですから、10Ωに流れる電流は2/3Aと求まります。

  • 60Vの場合は、10Ωの左→右に1A
  • 80Vの場合は、10Ωの右→左に2/3A

以上を足し合わせることにより、60Vと80Vが両方存在する場合に10Ωに流れる電流は、左→右に1/3Aと求まります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルとコンデンサのベクトル図の誤りについて)

疑問点というよりも、恐らく表記ミスだと思いますが一応その個所について質問という形で確認をお願いします。
前回の質問についてご丁寧なご回答をありがとうございます。確かにRLC直列回路のインピーダンスの説明の結論のところでは少し違和感を感じながら説明されている感じがしますね。それで、理論編の14RLC直列回路も拝聴したところ、コンデンサのインピーダンスの説明のところでもDVD画面の説明文の中で途中から、本来コンデンサとあるべきところだと思うのですが、コイルという表記になっています。テキストではありません。コイルのインピーダンス:jwc/1=-j・wc/1とあるのはコンデンサーのインピーダンスの間違いだと思います。
当初はねこ電のところでもコンデンサとコイルの言い間違いではないかというところがありましたので、相当混乱しましたが理解が進むと簡単な間違いなんだなと自分でもわかるようになりました。質問によって確認してほしいとのことでしたので改めて質問しました。

**様

いつもながら恐れ入ります。メール頂きありがとうございます。

今回の講座では、種本となる「丸覚え!電験三種 公式・用語・法規の超重要ポイント」を元に、まずは書籍内の図を外部業者にトレースしてもらい、そのデータを用いて私がPowerpoint上でビデオ収録用の資料を作成して解説しています。さらに、ビデオ収録が2015年の夏、テキスト執筆が2015年暮に初版、2016年暮に改訂版という流れでして、図のトレースミスや私の勘違いなどもあり、100%完璧な講座とはならなかったことは深く反省し今後の改善につなげていきたいと考えております。

重ね重ね、お付き合いいただき本当に有難うございます。今年2017年の夏に講座ビデオ、テキスト共に全面的に改定する予定ですので、反省を踏まえて出来る限りミスや解説漏れなどの無いように尽くしていきたいと考えております。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成26年 理論 問5 コンデンサ組み合わせ回路の電圧)

10Fの両端が15V、30Vの両端が5Vとなるのは理解できるのですが、「b側を+として5Vとなる」ところで、なぜプラスになるのか理解できておりません。同様にP25のa側をプラスとして2.5Vという符号の部分も理解できておりません。恐らく、電源±の極性とコンデンサの繋がる電極によるもの?と思っているのですが、補足いただけますでしょうか。

上側の20Vの電源だけを残した回路で、10F・30Fともに溜まっている電荷がゼロ(コンデンサの両端の電圧がゼロ)の状態から電池を接続することを考えます。

電流は当然、電池の+端子から-端子に向かって流れますから、10Fのコンデンサは左→右に、30Fのコンデンサは右→左に電流が流れます。コンデンサの極板間に発生する電圧は、電流が流れ込む側が+、電流が流れだす側が-となるため、10Fのコンデンサは左側が+、30Fのコンデンサは右側が+となるわけです。

したがって、a-b間について考えると、b側に+の電圧が発生するわけです。

同様に、10Vの電源だけを残した回路では、電流は電池の+端子から-端子に向かって流れるため、30Fは左側が+、10Fは右側が+になります。

恐らく、電源±の極性とコンデンサの繋がる電極によるもの?

その通りです。電子の流れに沿って正確に言いますと、

  • 電池は-端子から+端子に向かって電子を流す
  • コンデンサの、電池の-端子側につながる極には、電池から電子が流れ込んで溜まっていく。
  • コンデンサの、電池の+端子側につながる極からは、電池の+端子に向かって電子が抜け出ていく。
  • したがって、コンデンサの-端子側につながる極は電子過剰、+端子側につながる極は電子不足になる。
  • 電子はマイナスの電荷をもっているため、電子過剰な極板は-、電子不測の極板は+に帯電する

ということになります。

電験3種講座の理論のテキストP24、25において「すなわち、b側を+として5V、a側を+として2.5Vとなるわけです」とありますがどう考えたらそのような結論に至るのでしょうか。

この問題の解説は、重ね合わせの原理を用いて、

  1. 20Vの電源を残し、10Vの電源を無いものとして(短絡して)求めた、20Fのコンデンサの両端の電圧
  2. 10Vの電源を残し、20Vの電源を無いものとして(短絡して)求めた、20Fのコンデンサの両端の電圧

を足し合わせることで答えを求めています。

まず1つ目です。上側の20Vの電源だけを残した回路で、10F・(20Fと10Fを並列にした)30Fともに溜まっている電荷がゼロ(コンデンサの両端の電圧がゼロ)の状態から電池を接続することを考えます。電池からの電流は、+端子から-端子に向かって流れますから、10Fのコンデンサは左→右に、30Fのコンデンサは右→左に電流が流れます。

コンデンサの極板間に発生する電圧は、電流が流れ込む側が+、電流が流れだす側が-となるため、10Fのコンデンサは左側が+、30Fのコンデンサは右側が+となるわけです。流れた電荷量をQとすると、コンデンサの極板に発生する電圧はQ/Cですから、コンデンサが直列になっている場合、コンデンサに生じる電圧は静電容量に反比例します。

したがって、10Fの両端に15V、30Fの両端に5Vの電圧が発生し、30Fの両端に生じる5Vは右側が+の電圧です。

2つ目は、下側の10Vの電源を残して30Fと10Fが直列になった回路と見なせます。やはりコンデンサに生じる電圧は静電容量に反比例するため、30Fに2.5V、10Fに7.5Vが生じ、30Fの両端に生じる2.5Vは左側が+の電圧です。

以上より、

  1. コンデンサの右側を+として5V
  2. コンデンサの左側を+として2.5V

を差し引きして、右側が+2.5Vという答えが求まります。出題文に忠実に言うと、「+2.5Vのa点から+5Vのb点を見ると、b点は相対的に+2.5Vに見える」ということです。

「この合計が20Vであるためには10Fの両端が15V、30Fの両端が5Vとなることがわかります」これはどのような方式を用いてこのようになるのでしょうか?例えば、

  • 抵抗の分電圧は比例配分
  • 抵抗の分路電流は反比例配分

のような公式はあるのでしょうか?

コンデンサの性質として、Qクーロンの電流が流れた場合、発生する電圧はQ/Cボルトとなりますから、コンデンサが直列の場合、それぞれに発生する電圧は静電容量の反比例配分になります。

オームの法則でおなじみの電圧・電流・抵抗とは別に、「流れた電荷量Qクーロン」が出てくると、一体これは何なのかと難しく思いがちですが、電流×時間=電荷量であることを覚えておけば大丈夫です。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルが電力を消費しない理由)

電圧と電流の位相差が90°のコイルは電力を消費しないのはどうしてですか?

コイルの電圧・電流の様子について図を描きましたのでご覧ください。

まず、

  • 素子の上側を電圧の+
  • 上から下に電流が流れるのを+の電流

と決めます。

抵抗は、電圧が+であれば電流も+、電圧が-なら電流も-です。つまり、

  • 電圧・電流共に同じ符号なら電力を消費する素子

であることを意味します。

電池は、電圧が+であれば電流が-、電圧が-なら電流は+です。つまり、

  • 電圧・電流が互いに逆符号なら、電力を生み出す素子

であることを意味します。

ここでコイルの電圧と電流の波形を見てみます。すると、

  • 電圧+電流-
  • 電圧+電流+
  • 電圧-電流+
  • 電圧-電流-

を1/4周期ごとに繰り返していることが分かります。これは、コイルは電力を消費せず、受け取っては放出、受け取っては放出…を繰り返していることを意味します。

以上より、コイルは電力を消費しないことが分かります。ちなみに、コイルが受け取った電力はどこに行ったのかというと、磁気エネルギとして蓄えられています。電力を受け取る1/4周期では、電気エネルギを磁気エネルギに変換し、電力を放出する1/4周期では、磁気エネルギを電気エネルギに変換している、それがコイルの動作です。

なお、コンデンサの場合はこの図と電流の波形がプラスマイナス逆ですが、やはり働きとしては同様で、電力を消費せず受け取っては放出するだけであることが分かります。コンデンサの場合、電気エネルギを静電エネルギに変換し、静電エネルギを電気エネルギに変換することを繰り返します。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成22年 理論 問7 単相3線式回路の回路電流と消費電力)

理論のテキストp58の例題の質問です。解説に「したがって、重ね合わせの原理より、a→bと流れる電流とb→cと流れる電流が重なるb端子に流れる電流は打ち消し合ってゼロとなります。」の部分が理解できませんでした。重ね合わせの原理をどのように使って電流が重なるb端子に流れる電流は打ち消し合ってゼロになるのですか?そしてどうして電力を消費する負荷は、a端子とc端子につながる右端の縦素子のみなのですか?

a-b間、b-c間は、どちらもR=4ΩとX=3Ωが2個ずつ直列に入って、合計R=8ΩとX=6Ωの回路に見えます。ここに、a~b間とb~c間に同じ電圧・同じ位相の交流電圧をかけているので、a→bに流れる電流とb→cに流れる電流は同じ値・同じ位相になります。

ここで、a→bの電流が流出する値と、b→cの電流が流入する値は同じ値で逆位相(流入と流出を比べているので)ですから、足し合わせるとゼロになります。当然、回路の真ん中に入っている4Ωには電流が流れないため、電力も消費しません。

14章RLC直列回路のp.58の過去問に関してですが、真ん中のb端子に電流が流れない理由について教えてください。重ね合わせの原理より、と記述されてありますが、どのように作用し電流がゼロになるのかいまいち理解できません。また、この回路(単相3線式)において、真ん中の線に電流が流れる場合もあるのでしょうか?電流が流れない理由が重ね合わせの原理ならば、真ん中の線に流れる電流は常に打消しあいゼロとなるのではないでしょうか?

この回路は、a-b間とb-c間の回路に分けて考えます。

a-b間は、8+j6Ωの負荷に100∠0°の電圧、b-c間も8+j6Ωの負荷に100∠0°の電圧が掛かっています。したがって、a-負荷-bと流れる電流と、b-負荷-cと流れる電流は、同位相・同振幅となります。

ここでb端子につながる線について考えると、a-負荷-bの回路では電流の流出、b-負荷-cの回路では流入(もちろん交流ですから、タイミングによって流入・流出は逆転します)ですから、b端子に流れる電流は常に差し引きゼロということになります。

もし、a-負荷-bの回路と、b-負荷-cの回路で負荷インピーダンスの値が異なっていれば、真ん中のb端子に流れる電流が差し引きゼロにはなりませんから、その場合は電流が流れることになります。

理論の交流回路で、フェーザ表示の過去問説明の所です。ab間に交流100Vがかかり、bc間にも位相差無しの交流100Vがかかってます。この時に端子ac間の電圧は200Vにならないのはなぜでしょうか?ここが200Vならば真ん中の回路にある抵抗やコイルにも電流が流れると思います。

58ページの例題の件かと思いますが、もちろんac間の電圧は200∠0°ボルトになります。そして、

  • a→右上の4+j3Ω→真中の4+j3Ω→bと流れる電流と、
  • b→真中の4+j3Ω→右下の4+j3Ω→cと流れる電流

は同一ですので、打ち消しあってbの線に流れる電流はゼロとなり、回路全体で考えると、200Vの電圧に右上の4+j3Ωと右下の4+j3Ωが接続されているものと同一の結果となります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電線に流れる電流と磁界の強さ)

磁界の強さの式で、分母に2a(直径)になりますが、講義の中で、2πrを掛けると2aになると言っていますが、どのような式からそうなるのかを教えてもらえますか?本質が解らないと忘れてしまうためお願いします。

ビオ・サバールの法則をチラッと頭において、中途半端なことを口に出したため混乱させてしまいました。申し訳ありません。

まず、直線の電線の上にIアンペアの電流が流れている場合を考えます。小学校の電磁石の実験でもお馴染みのように、電線の周りには磁界が発生して方位磁針の向きを変えたりする現象が起きます。

このとき、電線を中心として半径rの円を考えます。この半径rの円周の長さは2πrで求められます。磁界は、電線を中心に同心円を描くように発生しますから、この円周の上での磁界の大きさはどこも一定です。離れれば離れるほど弱くなります。

円周上の磁界の大きさをHとすると、

  • H×2πr=I

となり、

  • H=I/(2πr)

です。つまり、電線に流れる電流の値そのものを、円周の長さに沿って分散した大きさが磁界の大きさになるわけです。磁界の単位は[A/m]ですが、これは磁界の大きさ×長さ=電流になることを示しますから、単位からも納得できるかと思います。

つぎに、この電線を半径aのコイル状に巻いた場合を考えます。円の中心部分は、コイル状の電線のどの部分からも距離aであり、1回巻のコイルの円周の長さは2πaですから、

  • I/(2πa)×2πa=I

…になりそうな気がするのですが、実はそうなりません。

これが何故そうなるかというと、ビオ・サバールの法則を用いて証明しなければなりません。

ビオ・サバールの法則(Wikipedia)

直線状の電線から距離r離れた場所の磁界は

  • H=I/(2πr)

になると書きましたが、これは無限に続く直線電流の、ごくごく短い部分が距離rの点に作る磁界を、無限の長さ手前から無限の長さ奥まで全て加算した結果がそうなるのです。つまり、本質的には単純に電線を含む平面を輪切りにし、そこから距離rの点だけを考えれば良いわけではなく、空間的に広く分布した領域を考えなければいけません。

以上のことを踏まえて、電験3種の試験では、

  • 直線状電流:H=I/(2πr)
  • N回巻コイル:H=NI/(2a)
  • 環状ソレノイド:H=NI/(2πr)

を覚えておけばいいよ、という事になるわけです。

SAT電験3種講座 質問回答(DVD内容とテキストの差異について)

電験三種の理論のテキストとDVDで勉強を始めたのですが、テキストとDVDが合っていないような気がしています。章ごとの表示内容はあっているのですが、DVDで説明される図はテキストに載っていませんし、テキストの内容(例題など)がDVDで説明されることがありません。猫電気ではほぼテキストの内容とDVDの内容が沿っていたので、すごく違和感を感じるのですが、これはこういったものなのでしょうか?

おっしゃる通り、DVDで話している内容とテキストの内容が合致していない部分がございます。

これは、DVDの収録には多大な時間が掛かるため(大阪に連続2週間の出張をしてスタジオ収録をしています)毎年改訂するのが難しい一方、テキストの方は比較的改訂しやすいため、収録後にテキストだけ改訂・増補した結果このようになっております。

従って、動画の中だけで出てくる部分につきましては動画をベースにしてノートを取っていただき、テキストだけで出てくる部分はテキストの上だけでご理解いただき、どうしても分からない部分は御質問いただく、という形で宜しくお願いいたします。なお、今年2017年夏は、DVD・テキスト共に改訂(新規収録)の予定となっております。

受講生からの質問返答については、私のサイト

http://wp.khz-net.co.jp/

にも蓄積しておりますので、参考にしていただければと思います。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成17年 理論 問15(b) キルヒホッフの法則の使い方)

理論16-17ページ例題i3のループが4Ωと16Ω(下側)だけになるのか、理解ができません。方程式を立てる為に下側だけにしているのでしょうか?詳しくご教授いただきたくメールいたしました。

キルヒホッフの法則には、

  • 一点から始まって同じ場所に戻ってくるループの中で、電圧の合計はプラスマイナス0
  • 電線の接続点において、その点に流れ込む電流の合計と流れ出す電流の合計は同じ

という2つの法則(電圧の法則と電流の法則)があります。これに照らして、3本の方程式を立てますと、

  • Aのループは16Ωと80Ωと4Ωの両端の電圧の合計がゼロ
  • Bのループは4Ωと16Ωと80Ωの両端の電圧の合計がゼロ
  • Cのループは4Ωと16Ωの両端の電圧の合計が40V

ということになり、未知数が3つで式が3本あるので方程式が解けることになります。

もちろん、例えばCのループの代わりに

  • 上側の16Ωと4Ωの両端の電圧の合計が40V

という方程式を使っても良いですし、

  • 上の16Ωと真中の80Ωとしたの16Ωの両端の電圧の合計が40V

で式を立てても勿論値を求めることができます。しかし、3つの未知数を求めるのに独立な式が3本あれば良いわけですから、何も複雑な式を採用する必要は無く、例としてテキストに挙げたABCの3つを使用することにしたわけです。

問題では、回路全体の電流I3を求めよとなっていますが、解答はi3を求めています。i3は、電源のプラス端子~左下の4Ω~右下の16Ω~電源のマイナス端子の部分にしか流れない電流のように思いますが、何故これが回路全体の電流I3と同じになるのでしょうか。

結論から言いますと、i3=I3で、これを求めれば回路全体に流れる電流I3を求めることができます。しかし、それなら回路の上側の16Ωと4Ω、そして真ん中の80Ωは無関係のような気がしてしまいますが、そうではありません。何故かと言えば、

  • 左下の4Ωにはi3-i1
  • 右下の16Ωにはi3-i2

が流れていて、このi1やi2は、上側の16Ωと4Ω、真ん中の80Ωによって影響を受ける値だからです。もし、i1=i2=0であれば、上の16Ωと4Ω、80Ωは無視してしまって構いませんが、実際にはi2もi3も流れるため、i3もそれらの影響を受け、キルヒホッフの電圧則・電流則に従って各部の矛盾がない値に落ち着くわけです。

なお、キルヒホッフの法則を用いて方程式を建てる場合、ループの取り方は色々と考えられます。例えば、この回路でi3を、電源のプラス~上側の16Ω~上側の4Ω~電源のマイナスと取って計算しても構いませんし、それでも同じ結果となります。

定義が違っても、連立方程式を解いた結果が同じ答えになるというのは妙に感じるかもしれませんが、キルヒホッフの法則を適用するためのループは、本当にその向きに電流が流れているかどうかは重要ではなく(もし計算の結果、定義とは逆の向きに電流や電圧が発生していれば、求めた数値がマイナスになるだけです)、電圧の値や電流の値が理論的に矛盾がない条件であることだけが重要ですから、ご質問頂いたような、肌身との感覚のずれが起きてしまう時もあるわけです。

(以下、2017年7月12日追加)

5のキルヒホッフの法則でループの例題が解からなく、これはテブナンの定理とかでも答えが出せるのでしょうか?ループになること自体が理解できていません。(電流が分流して16Ωと4Ωにaからd側の方向に流れるのでは?)

キルヒホッフの問題ですが、原点に立ち返って考えてみます。

電気回路で電流が流れるということは、必ず周回(ループ)になっているはずです。乾電池でもコンセントでも、出てきた電流は必ず同じだけ戻っていきます。

そして、そのループの中に抵抗や電源が複数含まれていても、それらの発生電圧と電圧降下は必ず辻褄が合っているはずです。

これをもとに考えると、i1のループは、

  • 左上の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+真中の80Ωの両端に発生する電圧(上側を正とする)+左下の4Ωの両端に発生する電圧(右側を正とする)=ゼロV

となるはずです。同様にして、i2のループでは、

  • 右上の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右下の16Ωの両端に発生する電圧(右側を正とする)+真中の80Ωの両端に発生する電圧(下側を正とする)=ゼロV

となります。この時に気を付けるのは、現実の回路で抵抗の両端の電圧がどちらが正であるかは関係なく、あくまでもループを定義した中での合計電圧の辻褄が合う、という事だけに注目しているという点です。

そしてi3のループについては、

  • 左下の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右下の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)=40V

という条件になります。もちろん、

  • 左上の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右上の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)=40V

という条件を用いても構いません。

以上の式を連立させることで各々の電流値が求まることになります。

キルヒホッフの法則を立てる際、どうしても現実に流れる電流の向きに引き摺られそうになりますが、「現実の回路で抵抗の両端の電圧がどちらが正であるかは関係なく、あくまでもループを定義した中での合計電圧の辻褄が合う」という点に気を付けて頂ければ理解しやすいかと思います。