SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成24年 電力 問7 過去問解説 安定度制約の意味と概念)

電力過去問24年問7

安定度制約とはなんでしょうか?直流、交流の安定度の制約の違いについても教えてください。

「安定度制約」ですが、これは交流送電と直流送電の俯瞰的イメージを正しく持つことが必要になります。

電気回路的には、交流だろうが直流だろうが、発電ー送電ー消費、と電線で結ばれているだけです。しかし実際には、複数の発電所から複数の変電所を通り、ときには結合、時には分岐して最終的な電力消費点まで運ばれています。また、発電所から消費地までの距離は数百kmなどの長距離であることも多く、いくら電気の伝わる速度が1秒間に30万kmという高速であったとしても、途中の対地静電容量、送電線のリアクタンス、変圧器の作用などの様々な影響を受けることで過渡的に電流や電圧の揺らぎが発生し、各発電所からの送電電力や位相などが時間的に脈動するという現象が現れます。これを物理的・数学的に解析するのは非常に大変なのですが、身近な例で何か分かりやすい置き換えがないかと考えたところ、次のような例が思い付きました。

 

色々な方面から道路が集まってきて、大きな一つの道路になるという状況を考えます。このとき、集まってくる道路は各々に様々な性質を持っています。

  • 1車線の道路だけど、ここまでに途中2車線になったり3車線になったり、また1車線に戻ったりして最終的に1車線でやってくる道。
  • 2車線の道路だけど、途中1か所で1車線に絞られて、また2車線に戻ってやってくる道。
  • 3車線の道路で、途中車線が変わることなく3車線のままで来る道。
  • 4車線の道路で、途中8車線に膨らんで、最後でまた4車線に絞られて来た道。

これらが集まって合計10車線になったとします。

この10車線の道が渋滞してあまり進まないとき、ここに至る4本の道からは車線数に比例して車が入ってきます。

適度に流れているときも、まあほぼ車線数に比例して車が入ってくるでしょう。

ところが、この10車線の道に全く車がおらず、4本の道から可能な限り最大の車が流入してくるとしたら、それぞれの道の途中の車線の状況が影響し、1:2:3:4で綺麗に比例して流れ込むことにはならないはずです。つまり、10車線を全速力で車が走ることはできず、そこに至るまでの4本の道の途中の性質が影響として出てきてしまいます。

つまり、交流送電線路の途中のリアクタンスや静電容量、変圧器の特性の影響などが存在する(=道路の途中に幅広部分があったり絞り部分があったりする)場合、多数の送電線路を連結して電力を供給するとき、それらの送電線路の能力100%の電力を供給しようとすると、それぞれの経路に過渡的な偏りが生じてしまい、その結果電力供給が不安定になってしまいます

この不安定さを緩和するためには、合流して10車線になった道路に適度に渋滞がある(=その100%の能力を供給せず、ある程度の所で電力を抑える)ことが必要となります。これが安定度制約です。

一方、直流送電の場合は、その「途中の車線の状況」が存在せず、1車線なら最初から最後まで全部1車線、3車線なら常にずっと3車線の道が合流しますから、たとえ10車線の道が可能な限り最大の車を流していても、それは綺麗に1:2:3:4と配分され、それぞれの道が割合ごとに綺麗に車の量を分担することになります。つまり100%の能力を発揮しても安定して送電ができることになります。

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