SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルが作り出す磁界と電磁誘導)

理論のテキストp116の図について質問です。

インダクタンスL1に流した電流I1によって、環状鉄心に時計周りの磁界が発生するかと思います。しかしインダクタンスL2では、最初の段階では、過度現象によって磁界の変化を妨げる向き(反時計回り)に磁界を発生させると思います。つまり最初の段階では電流I2の赤い矢印の向きは右向きになると思います。その後、発生し続ける時計回りの磁界にだんだんと根負けして、インダクタンスL2では赤い矢印どうりの電流I2が流れるかと思います。以上が図を見たときに私が考えたことなのですが、どこか誤りはございますでしょうか。あれば、何が間違っているのか教えて下さい。

まず、電流の向きの定義ですが、電気の世界においては、実際にその向きに流れる電流を正として定義するとは限らない場合があります。

例えば4端子回路網の場合、入力・出力ともに、回路の中に流れ込む電流の向きを正と定義したうえで、出力端子にはマイナスの向きの電流が流れる、として計算していくことがあります。

したがって、(感覚的には妙な感じがしますが)実際に流れる電流や発生する電圧の正負とは関係なく定義してある場合もある、とご承知おきください。

さて、それを踏まえてこの図を見ます。

電線に流れる電流が作る磁界は右ねじの法則がありますから、この図でI1の正の向きに電流が流れるとすると、おっしゃる通り鉄心には時計向きの磁界が流れます。

コイルL2に流れる電流は、鉄心に流れる磁界が増加していくときはそれを減少させるように流れ、磁界が減少していくときはそれを増加させるように流れます。

したがって、

「L1の電流が増加していく間は、I2は図の矢印と逆側に流れ、L1の電流が減少していく間は、I2は図の矢印の向きに流れる」

が正解ということになります。

そして、これに関連した疑問なのですが、理論テキストp112下図についてです。磁界の向きはN極からS極へ矢印が向くと思うのですが、電磁誘導を考えるときは、磁界の向きよりも磁界の動きの向きを考えることが正しいということでしょうか?

その通りです。上にも書きましたように、コイルに流れる電流は、そのコイルを通過して流れる磁界の増加や現象を打ち消すように流れます。

そして、これが正しいとすればp116の図において、電流によってコイルから発生する磁界は動いている磁界、逆に永久磁石に発生している磁界は動きが無い磁界ということになるのでしょうか?(実際には動いている磁界、動きが無い磁界、という言葉はないかもしれませんが…

はい、とても鋭い着眼点です。その通りです。もちろん、コイルに流れる電流を一定に保てば「動きがない磁界」になります。

要するに、磁界の強さの変化がない、ということですね。

(なので、永久磁石の場合は、永久磁石自体を物理的に動かしたり回転させることで「動きのある磁界」を作るわけです)

もし、永久磁石から発生している磁界とコイルから発生している磁界が同じものであれば、コイルの両端に永久磁石のN極、S極を置けば永久にコイルには電流が流れてしまいかねないのでは、と思いまして…

永久磁石もコイルも磁界そのものは同じですが、ここまで書いたように、その磁界の変化が電流を生み出すわけです。

なお、何故交流の波形が正弦波かというと、これは磁石を回転させることで磁界の変化を作り、それを元にしてコイルで電流を作っているからです。

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