2020年1月期多摩職業能力開発センター府中校電験3種入門講座

    1. 2020年1月期多摩職業能力開発センター府中校電験3種入門講座に関するメモページです。
  • 2020/1/12(第1回)

・試験傾向分析。すべての基本は理論。まずは理論を理解し、その上で電力や機械を学ぶとよい。法規は近年難化しているものの、過去問をベースにして実際の条文を調べて解答を導き出す、という勉強方法で合格できる。ポイントは実際の条文を読むという点。これによって条文中の文言や数値などが頭に入り、出題方式を変えられても対処できるようになる。

・電気とはなにか。電圧⇔水圧、電流⇔水流、電気抵抗⇔水に対する抵抗。身近な具体的なものと結びつけて勉強すること。

・オームの法則の応用。「抵抗(電流の流れにくさ)=電圧÷電流」⇔「導電率(電流の流れやすさ)=電流÷電圧」。抵抗の直列は抵抗値の和、抵抗の並列は導電率の和で計算するという視点。過去問紹介。

・三角関数の基本。いきなり三角形が出てくるのではなく、太陽と地球の関係から。一周360度なのは一年が約360日から。地球が一日に動く角度が1度。スタートしてから90日・180日・270日の座標は分かりやすいけれども、任意の日付の地球の座標を求めるには?→そこで三角関数が出てくる。太陽と地球の距離を1として、x座標はcos、y座標がsinとなる。円の方程式がx^2+y^2=r^2なのだから、sinの2乗とcosの2乗を足したら1になるのは当たり前の話ということになる。sinとcosの変換も、公式を暗記するのではなく図を書いて座標を求めてみれば簡単。理屈を知っていれば、公式を暗記する必要はない。

・周波数と角周波数。度数法と弧度法。ある角度で切り取られる円弧の長さが弧度法。周波数fは「1秒間に繰り返される回数」で、角周波数ω=2πfは「1秒間に回転する角度」。

・テブナンの定理とノートンの定理。複雑な回路を「1個の電圧源+1個の直列抵抗」に置き換えるのがテブナン、「1個の電流源+1個の並列抵抗」に置き換えるのがノートン。これを活用する問題が出題される。

・クーロンの法則と電場の話。電場と重力場の対比。「場」というのは、「直接接触していないのに力が発生する場所」のことで、地球上の人間も重力場(原子が存在すると、接触していないのに原子に対して力が働く場所)にいるから生きていられる。電場も同じで、ある電荷が存在すると、その周辺に「ほかの電荷が存在すると、その電荷には接触していないのに力が及ぶ」場所。

・力と運動方程式。力は目に見えないが、強い力でこぐと自転車は鋭く加速するし弱いと加速しないことから、「加速度」という形で力は現れる。また、重い自転車は加速が鈍く、軽いほど鋭く加速する。これより、重さ(質量)も加速度に関係することが分かる。これを示したのが運動方程式で、a=F/m(加速度は力に比例し、質量に反比例する)という簡単な式の中に本質が見えている。

・物理学的な仕事の定義。仕事=力×距離。これがエネルギーと同値。

  • 2020/1/13(第2回)

コイルの性質。磁界は保守的なので電圧に対して電流が遅れる。

コンデンサの性質。電流が先、電圧が後。

重ね合わせの原理。

コイルに交流電圧を掛けたときの挙動。時間波形とベクトルの対応。

コンデンサのリアクタンスの性質。LCR組み合わせ回路の波形。

有効電力と無効電力。テキストから電力科目について読んでおくと良い部分のピックアップ

  • 2020/2/20(第3回)

前回の復習。

三相交流のスター結線とΔ結線の原理を説明。

フィードバック線図の解き方、Y-Δ変換の例題。(要するに、外部から見て同じ挙動をする回路を作ればよい)

モータと発電機の基本原理(フレミングの右手・左手は同時に存在する)

直流機の基本を解説。外部磁界(界磁)を作る巻線と回転コイルに発生する磁界との相互作用によって電流を機械力に変換している。

誘導機と同期機の構造。誘導機は回転磁界の内部で無電源のコイルが回転する。同期機は回転磁界の内部で磁石が回転する。→誘導機は必ず滑りが発生する。滑りが無い場合、回転磁界と回転コイルが同一速度なので、回転コイルを横切る磁界の時間変化がゼロとなり、回転コイルには電圧が誘導されない→電流も流れない→その電流による磁界も発生しない→回転力が生まれない

短絡比と同期インピーダンスの解説。同期発電機から見て、内部の巻線などに存在する残留インピーダンスが同期インピーダンス。定格負荷電圧・電流が同じ発電機であっても、同期インピーダンスが大きい発電機は内部発生起電圧が高く、同期インピーダンスが小さい発電機は内部発生起電圧が小さくなる。この発電機を短絡した場合、発電コイルから見て、(同期インピーダンス+定格負荷インピーダンス)と(同期インピーダンス)の比が短絡比になる。

短絡比とは、「励磁電流を調整して無負荷時に出力に定格電圧が出るようにした状態から出力端子を短絡した場合、短絡電流が定格電流の何倍になるか」という値。


講座内では話せませんでしたが、テキストの第3章で試験に出る重要部分を以下にピックアップします。難しい計算式などは後で本格的に勉強するときに改めて取り組むとして、まずは読み物的に目を通してみてください。

P.236~246,248,250,251,253,254,256,258,260,262,266,268,270,272,274,276,278,

280,282,286,296,304,308

これ以外のページは不要という訳ではないですが、優先度は低いです。

「2020年1月期多摩職業能力開発センター府中校電験3種入門講座」への15件のフィードバック

    1. 早速のコメント有難うございます!
      今必死に溜まっている別の仕事を片付けていますが、キリが無いのでそろそろ寝ることにします。明日は交流回路のベクトル図や有効電力・無効電力についてバッチリ理解していただけるよう頑張ります。

  1. 昨日、今日と、ためになる講義ありがとうございました。
    私は今年の9月に電験3種初挑戦の予定なので、まだ勉強を始めたばかりで初歩的な知識すら持っていません。ですから先生の説明がとても分かりやすくて助かっています。
    特に今日の、無効電力がどこに消えるのかという話で、流入と流出という説明でいままで頭の中でモヤモヤしていたものがすっきりした気がします。コンデンサについては電気をためて、そして放出するという働きそのものというふうに解釈できました。
    来週もまたよろしくお願いします。

    1. コメントいただき有難うございます。
      電験3種の勉強の全ての基本は理論なのですが、その理論をどうやって学ぶかが重要です。講座中も散々申し上げました通り、単なる公式の暗記ではダメで、物理現象を正しく理解していることが求められています。実際に試験問題を見ていても、公式暗記だけの人を極力排除しよう、という意図が感じられます。
      全3回、出来る限り「本には書いていないけど、知っている必要がある重要な物理現象」について分かりやすく解説しようと試みました。今後の勉強のお役に立てましたら幸いです。

  2. 本日も、貴重なご講義有難うございました。
    もし中学、高校の時にお話を伺えていたら・・・との思い強く感じています。
    本当に様々な理解が進みます。
    次回も楽しみにしております。
    末筆になりましたが、お体ご自愛ください。

    1. コメントいただきありがとうございました。
      先程、講義の内容まとめのほかに+αも追記しておきましたので、どうぞお役に立てていただければ幸いです。

  3. 毛馬内先生、お世話になります。
    「2020年1月期多摩職業能力開発センター府中校電験3種入門講座」受講生の神田と申します。
    先日は、(2週にわたり)大変熱のこもった講義を誠にありがとうございました。

    お恥ずかしい話なのですが、
    私は現在、電験3種の理論科目と
    電気工事士の電気理論パートの難易度の差に
    かなり面喰ってしまっている状態なのですが、
    私のレベル(進捗度)の場合
    もう一度、電気工事士の電気理論パート(2種⇒1種)に戻って
    基礎からやり直した方が早いでしょうか?
    かといって?電工のテキストは理論パートは軽くやっとけば
    合格できちゃいます!みたいな本(テキスト)が多くて
    困ってしまうんですが…(笑)

    1. コメントありがとうございます。
      結論から言えば、電工にわざわざ戻ることなく、電験3種の基本から取り組んだ方が早いと思います。理由はおっしゃるように、電気工事士の電気理論は「抵抗とコイルが出たら2乗の√」「コイルとコンデンサは引き算」のように、単なるパターンマッチング&暗記でしかない場合も多く、それを暗記してからより深い勉強に取り組むよりも、最初から理屈を学んで行けばいいのではないかな?と思う次第です。

      1. 毛馬内先生、
        返信コメントありがとうございます。

        もうひとつだけ教えてください。
        今回、
        府中校電験3種入門講座で使った本より
        易しい(おススメの)テキストが有るとすれば、
        それは先生が持って来てくださった本でしょうか?

        他にもあれば教えてください。

        1. 参考書については、「全ての人にとって完全に最高の本」なんてものがあったら他の本は全て廃れているわけで、正直言いまして相性が結構あります。したがってほんの参考程度に留めていただき、大型書店などで実物を手に取ってご覧いただくのが基本かと思います。

          と前置きをして

          今回教室の後ろにおいて参考にしていただいた白い大きな本は大変詳細に丁寧に書かれていると思いますが、あの本も癖があるので誰にとっても…とはいかないと思います。
          その他では、
          TACの「みんなが欲しかった! 電験三種 理論の教科書&問題集 」
          オーム社の「完全マスター 電験三種受験テキスト」
          オーム社の「電験三種 やさしく学ぶ」
          あたりが無難なところかとは思います。

  4. 毛馬内先生、精力的に3回の講義を教えていただきありがとうございました。理論がすべての科目の基礎だということ。また、暗記ではなくて理屈をよく理解する。ということがよくわかりました。たくさんのことで目を啓かされた感があるのですが、コイルの性質、コンデンサの性質もそのような説明を聞いたことがありませんでしたので、RLC回路を理解する上でもとても役に立ちました。他にも色々の点で啓発されましたが今はこれ以上申し上げません。

    1. コメントありがとうございます!
      今回講座でお話しした内容は、私自身の経験としても電気の勉強で最も躓きやすい場所を集中的にお話し出来たのではないかと思っています。
      「何故そうなるのか」という基本は、例えば変化を嫌う磁界の性質とか、電荷がたまった結果電圧が上昇するコンデンサのように、正しく理解すればそれこそ小中学生でも容易に分かる内容なんですよね。「小学校の電磁石の実験は、電磁気学の極めて本質の部分」と申し上げましたが、同じ実験をしてもそこから何を読み取るかで、実に深みのある知見を得ることが出来るわけです。
      府中校での電験講座は、私の受け持ちは次回は夏の法規となるのですが、またどこかでお目にかかりましたら宜しくお願いいたします。
      有難うございました。

  5. 思い出された質問したかった事。
    それは増幅器の増幅率を対数で計算できなくても回答できますというお話についてです。対数は少しはだけ理解できますがいまいちです。
    増幅率の常用対数を20倍したものはデシベル[dB]単位で表されますよね。例えば、オペアンプの開放利得が100000倍(105倍)であるという場合、それをデシベル表記すると次のようになります。(とします。)
    20log10(105)=100[dB]
    このように、10をいくつも並べるような大きな増幅度もデシベルを用いて表すと100[dB]という小さな数値で表現できます。このくらいまでしかわかりません。唐突でなにを言っているのかわからんことを急に持ち出さないで下さいと思われるでしょうが、先生が増幅器のこと恐れるに足らない、対数がよくわからなくてもなんとかなるという言葉で質問させていただきました。

  6. コメントありがとうございます!
    デシベルを使う理由は主に2つあります。

    ・大きな数字を少ない桁数で表せること
    ・増幅度や減衰度の計算を、掛け算ではなく足し算にできること

    このうち、実は2番目が最重要な点です。掛け算は大変ですが、足し算は簡単にできるからです。

    例を挙げると、10000倍-500分の1ー20000分の1-2500倍という順序で増幅ー減衰ー減衰ー増幅と信号が流れていくとします。このとき、最初の増幅器に入れた信号(例えば1mWとします)が最後はどの位になって出てくるのかを知りたいとします。
    通常であれば、

    1×10000÷500÷20000×2500

    を計算しなければいけませんが、dBで表記すると、

    10000倍=+40dB
    500分の1=-27dB
    20000分の1=ー43dB
    2500倍=+34dB

    で、40-27-43+34=+4ですから、1mWに対して+4dB、つまり約2.5mW程度が得られることがすぐに分かるというわけです。

    「対数を使うと便利なのは分かった。でも、じゃあどうしてそういう事をするの?」という根本論になってしまうと、これは業界の慣例ということになります。

    1. 毛馬内先生、お忙しい中丁寧に教えてくださりありがとうございます。先生は電子工学のほうがご専門ですが電気工学の方を教えられてもとてもわかり易くといてくださるので本当にまた、夏の講習に参加し
      たいと思いました。

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