(1)~(5)について、それぞれなぜ(誤)、もしくは(正)なのか理由がよくわかりません。くわしい、解説を宜しくお願いいたします。
このコンデンサの最初の状態は、極板間距離がdで静電容量がC0、そこに電源電圧V0が与えられています。
したがって、極板AB間の電位は、単純にBからの距離に比例し、極板Bからの距離をxとすればV0・(x/d)です。
これを踏まえて考えると、それぞれ、以下の通りとなります。
(1)正しい
誘電体を挿入すると、極板A側から4C0、(4ε1/ε0)C0、2C0の3つのコンデンサが直列接続されたものと等価です。
コンデンサを直列にした場合の電圧配分は、コンデンサの静電容量の逆比になるので、これを求めるとP点の電位は挿入前の3V0/4よりも低下することが求められますが、この計算は面倒なので、直感的に解説します。
誘電率が大きな誘電体を満たしたコンデンサは、誘電体挿入前よりも静電容量が増加します。コンデンサに流れた電荷をQ、極板間電圧をVとすると、V=Q/Cですから、Qが一定の場合、Cが増加すればするほど極板間電圧は小さくなります。
これはちょうど、バネの強さに置き換えることができます。一定の力を与えて伸ばしたとき、強いバネはほとんど伸びませんが、弱いバネはすぐに伸びます。静電容量が大きなコンデンサは、電荷を蓄えても電圧上昇が小さいですから、電荷を力、電圧上昇がバネの伸びとすると、誘電率が大きな物体を挿入したコンデンサは、強いバネになると置き換えて考えることができます。
この例えで考えると、図のように、最初は一様なバネでAB間を接続していたところを、PQ間を切って、代わりに強いバネを入れたのと同じように考えられます。
このとき、P点は最初よりも右側にずれますから、電位は低下することが分かります。
(2)正しい
これも上の図から、Q点は当初よりも左にずれるので、電位は上昇することが分かります。
(3)正しい
コンデンサの一部にでも誘電体が大きな物体を挿入するのですから、静電容量は当然大きくなります。
(4)誤り
これもバネで例えます。PQ間を導体にしたということは、どんなに電荷が流れてもPQ間の電圧はゼロVのままということになります。これは、当初の状態からPQ間のバネを切り取り、直接PとQをつないでしまったのと同じですから、当然P点は当初より右に、Q点は当初より左に動きます。従って、P点の電位は当初より下降、Q点は上昇します。
(5)正しい
PQを導体にしたときの静電容量は4C0と2C0の直列ですから、当然当初より大きくなります。
最初に書きましたように、確かにコンデンサの静電容量の式を駆使すれば全て求まるのですが、それより一歩進んで添付図のようなイメージを持っていただくことが出来れば、より好ましいのではないかと思う次第です。
「SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成24年 理論 問2 過去問解説 コンデンサに挿入した誘電体による挙動)」への1件のフィードバック