SAT電験3種講座 機械 質問回答(電験3種 平成19年 機械 問1 過去問解説 直流直巻電動機の性質)

機械編9ページの例題「直流直巻電動機」について理解できないので教えて下さい。電磁誘導の法則ということで E=kφN がでてきてNを巻き数と言っています。ところが機械出力P=EI=k’NI^2のあとは、Nのことを回転数と言っています。巻き数と回転数とはイコールなのでしょうか?また機械出力 P=EI と 逆起電力 E=kφN からいきなり N=E/kI となっています。φが消えてしまっています。これはφとIは比例関係にあるためでしょうか。

この部分はご指摘の通り、端折り過ぎたり記号の使い方が適切ではなくて混乱を与えてしまっている箇所と認識しています。

改めて、一から解説いたします。

まず、磁束密度φの中をコイルが回転するときに発生する電圧は、磁束密度φと回転速度とコイルの巻き数に比例します。ここで、巻数も回転速度も記号N(もしくはn)とすることが多いため、ビデオ内でE=kφNのNを巻数と言ってしまいましたが、ここでのNは回転数の誤りです。

従って、E=kφNのkは比例定数(もちろんコイルの巻き数にも比例しますし、コイルが磁束内を貫く断面積にも比例するので、これらを合わせた比例定数ということになります)、φは磁束密度、そしてNは回転数と訂正いたします。

次に、P=EIですが、これは「電力=電圧×電流」に対応しています。つまり、機械的出力は、コイルに発生する逆起電圧とコイルに流れる電流の積と等しいことになります。この式にE=kφNを代入すると、P=kφNIとなりますが、「直流直巻電動機は、界磁巻線に流れる電流と電機子に流れる電流が同一」であることから、界磁磁束の密度φは、実は電機子電流Iに比例します。

従って、φ=aI(aは比例定数)として、P=kφNI=akNI^2となり、ここで定数akを新たにk’として、P=k’NI^2が求まります。

この式をNについて解くと、N=P/(k’I^2)となり、P=EIを代入するとN=E/k’Iが求まり、ここで電機子回路・界磁回路の直列抵抗をr、電源電圧をVとすると、電機子の逆起電圧E=V-rIであることから、N=(V-rI)/k’Iと表すことができます。

この電動機を無負荷で回転させるということは、出力電力P=0であることを意味します。P=EIより、E=0かI=0になればこの条件を満たします。

まず、N=E/k’I=(V-rI)/k’IにおいてE=0とすると、これは電機子巻線の逆起電圧がゼロであることを意味するので、E=kφNより界磁磁束がゼロか回転数Nがゼロである必要があります。ここで回転数がゼロの場合、電機子の逆起電圧はゼロなので、回路には電機子回路・界磁回路の直列抵抗をrとしてV/rの電流が流れます。この電流は界磁巻線にも流れますから、必ず界磁磁束が発生し、回転トルクが生まれて電動機は回転を始めます。したがって、回転数Nも界磁磁束もゼロという条件は構造上成立しません。

次に、I=0の条件を考えます。このとき、N=E/k’IにおいてI=0とすると、Nは無限大に発散することが分かります。つまり、直流直巻電動機は、無負荷で電源電圧を与えるとどんどん回転数が上昇し、やがて回転子が遠心力に耐えられなくなり壊れてしまうわけです。

以上、私の喋り間違いのほか詳しい解説を端折ったためご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

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