SAT電験3種講座 機械 質問回答(Y-Δ結線の位相差、変圧器の接地)

電験3種の機械のテキスト、P28にて、Y-Δ結線が、「一次側に対して二次側の位相が30°遅れる」とあり、動画では、当たり前とおっしゃられておりましたが、理論テキストを復習してもその記述がなく、根拠がわかりません。その理由についてお教えください。

まず三相交流の大前提として、これは3つの単相発電機を3つの単相負荷に接続している回路になるわけです。そして、本来なら、合計6本の電線が必要になるところを、3本の線で接続していることになります。

Y結線は、その3つの単相交流をY型に接続し、発電機側の中点と負荷側の中点を接続する合計4本の電線となるところを、互いに120度ずつ位相をずらすことで中点に流れる電流がゼロとなり、中点同士を接続する線が不要になってしまう方式です。

Δ結線は、3つの単相交流をΔ型に接続するものです。下図にあるように、電源と負荷を接続する線には、隣の相の電流も重なって流れるため、単相発電機:単相負荷を1:1で接続した場合に比べ、線電流は増加し、単相の場合の√3倍の電流が流れます。

さて、ご質問の件ですが、こちらは次の図をご覧ください。ここでは、二次側を基準にして解説します。

 


二次側に発生する電圧が、V1・V2・V3です。これに対して、一次側はY結線になっているので、一次側巻線に発生する相電圧はVA・VB・VCのようなベクトルになります。
ここで一相分として、V1とVAの関係を考えると、ベクトル演算は平行移動できますから、V1の始点をVAの始点と同じ位置に持ってくることにより、V1に対してVAは30°進んでいることが求まります。つまり、一次側電圧は二次側電圧に対して30°の進み、つまり二次側は一次側に対して30°の遅れとなるわけです。

また、機械のテキストP27~28の「三相交流の変圧方法」で「接地」がよく出てきます。いまいち接地について、なぜ接地しなければならないのか?理解できていません。洗濯機など接地するのは、感電を防ぐためとわかりやすいのですが、変圧器についても同様の理由でしょうか?

電圧というのは相対的な概念です。例えば、乾電池の電圧は1.5ボルトですが、これは「-端子に対して+端子が、+1.5Vの電圧を持っている」という事であって、例えば乾電池の+端子を基準にして考えると、この乾電池は「-1.5Vを発生する電池」と言うことも出来るわけです。

これは変圧器など交流の装置でも全く同じです。例えば、200Vのトランスと言っても、それはトランスの端子の間に実効値で100V(最大値では、±141V)の電圧が発生するという意味ですから、例えばそのトランスと直列に500Vの直流乾電池を接続したとすると、合計では「最小値359V、最大値641V」を発生する電源になるわけです。

このように、電圧は相対的概念ですから、どこか一か所をゼロVとして固定しないと、何ボルトの送電線などということが出来ないことになります。極端なことを言えば、人間が100万ボルトの高電圧!と言っても、雷様から見ればマイナス数百万~マイナス数億ボルトに見えてしまう訳ですから、変圧器の中性点など、全体的に見て平衡が取れる点を地面に接続してゼロVとし、電圧の基準点を決めるために設置している訳です。

「SAT電験3種講座 機械 質問回答(Y-Δ結線の位相差、変圧器の接地)」への6件のフィードバック

  1. 質問に対していつも丁寧に回答いただき、大変感謝しております。
    電気の仕組みを詳しく解説いただいているので、とても勉強が面白いです。
    また、このホームページで他の方の質問を見れるようにしていただいているので、大変参考になっています。

    さて、質問させていただきました「接地」についてですが、トランジスタのエミッタ接地では、エミッタをグラウンドに接続しているものが、エミッタ接地だと思います。
    このグラウンドに接続とは、回路の基準電位=0Vであることを表している解釈でよろしいでしょうか?電子回路なので地面に打ち込んでいるわけではないですよね?(自分で書いててもあり得ないと思うのですが。。)
    グラウンドに接続=アースをとる=交流的に接地 これらすべて同じ意味でしょうか?

    1. 佐藤様
      こんばんは。コメントありがとうございます。

      >このグラウンドに接続とは、回路の基準電位=0Vであることを
      >表している解釈でよろしいでしょうか?

      はい、その通りです。直接地面に打ち込んでいる訳ではありません。
      私もかつて、「地面はアースで電位がゼロの導体」という話を見て、乾電池と豆電球を接続する電線の一端を地面につないでも電流が通らず、導体なんて嘘じゃないか!と思った覚えがありますが(笑)、地面に埋めるアースっていうのは、豆電球が光るような低抵抗って意味の概念じゃないんですよね。
      どんどん話が逸れてしまいますが、要するに電圧というのは相対的な概念なんです。どこかに絶対的なゼロVというのは無くて、例えば乾電池の-端子を基準にすれば+端子は+1.5V、しかし電池の+端子を基準にすると、-端子は-1.5Vなんです。ですから、どこを基準に取るかによって、乾電池は「+1.5Vを生み出す装置」とも「-1.5Vを生み出す装置」とも言えてしまうんですね。
      そこで、どこかに基準点を作らなきゃいけない、という訳で便宜上決めたのが接地なんです。今は電源の-端子を設置するというのが慣例になっているので、乾電池の-端子がつながっている部分を設置として0Vと置き、電池の+端子は例えば+15Vとか、トランジスタのベース端子は+0.6Vとか、そう考えるようになっている訳です。

      >グラウンドに接続=アースをとる=交流的に接地
      >これらすべて同じ意味でしょうか?

      一般的にはそう思って頂いて差し支えないかと思います。勿論、その言葉が使われるシチュエーションにもよりますが…でも、電圧というのは相対的な値であり、どこかに基準点を作らないと話が面倒くさいので基準点を決めた、という点を押さえて頂ければ良いのではないかと思います。

  2. 回答いただき、ありがとうございます。
    コメント欄で直接質問なので、今後は控えます。

    >はい、その通りです。直接地面に打ち込んでいる訳ではありません。

    一般書籍でトランジスタの解説を読んでいましたが、説明もなく「接地」が使われていて、接地について調べると地面に電気を逃がすとか、感電を防ぐためとか書かれていて???となりました。

    マイナス端子を接地する(=0Vとみなす)ことで、プラス側の電圧をわかりやすく表記できるってことなんですね。
    電子回路の接地とは、解説いただき理解できました。

    重ねてになりますが、ご丁寧に回答いただきありがとうございました。

  3. こんばんは。
    SAT教材では楽しく学ばせてもらっております。私も現行のテキストP58で、スターデルタ結線での変圧器で、暗記せずにどうやって「二次側が30°遅れの位相差になる」ことを導きだそうかベクトル図を書いて考えております。結果、本ブログの毛馬内先生の手書きの図のように、「V1(デルタ結線:二次側)に対してVA(スター結線:一次側)は30°の遅れ」となりました。しかしながら、ブログでの先生の文章での説明では「V1に対してVAは30°進んでいることが求まります。」とアベコベになっており、少し混乱しております。本件に関し、補足説明等いただければ助かります。

    1. NAGA様

      あちゃー!多分何かボケて勘違いしてる事書いてるんですね私。本当申し訳ない…。
      改めてその辺、検証してまとめたいと思います。
      今、深夜に目を覚まして覗いたところですので、後程また改めて…。

  4. こんにちは。
    私も同じくSAT 受講生です。
    真剣に勉強されてきた皆さんもやっぱり今年の理論は難しかったですよね?
    私は受験するまでは理論が一番自信がありました。初めて解く過去問で時間計って解いて55点を下回ったことはありませんでした。いや、唯一平成23年だけが35点でした。今年(平成30年度)も自己採点すると35点でした。個人的には今年は平成23年レベルの難易度だったと感じましたが、実際はどうだったのか毛馬内先生の見解をお聞きしたいです。
    おかげさまで電力、機械は共に65点でした。法規は後々落ち着いて解くとB問題は全問正解できる難易度だったのに本番では焦って自滅してしまい37点でした。ただこれは単なる自分の力不足だったと認識しています。しかし理論に関しては試験後じっくり解いてみてもほとんどが正解にたどり着くことができません。問15に関しては三相交流?だとしたらスター、デルタどっち?それともスイッチが切れたら単相になるのか?など、試験中もだいぶそこで悩みました。ここで悩むということは基本的なことがわかってないような気もしますが…
    私も何か横やりを入れるようで大変恐縮ですが、皆さんのコメントを拝見しているとつい自分もコメントしたくなってしまいました。
    申し訳ありません。
    毛馬内先生、お忙しいところ誠に恐縮ですが何とぞ宜しくお願いいたします。

コメントを残す