SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成17年 理論 問15(b) キルヒホッフの法則の使い方)

理論16-17ページ例題i3のループが4Ωと16Ω(下側)だけになるのか、理解ができません。方程式を立てる為に下側だけにしているのでしょうか?詳しくご教授いただきたくメールいたしました。

キルヒホッフの法則には、

  • 一点から始まって同じ場所に戻ってくるループの中で、電圧の合計はプラスマイナス0
  • 電線の接続点において、その点に流れ込む電流の合計と流れ出す電流の合計は同じ

という2つの法則(電圧の法則と電流の法則)があります。これに照らして、3本の方程式を立てますと、

  • Aのループは16Ωと80Ωと4Ωの両端の電圧の合計がゼロ
  • Bのループは4Ωと16Ωと80Ωの両端の電圧の合計がゼロ
  • Cのループは4Ωと16Ωの両端の電圧の合計が40V

ということになり、未知数が3つで式が3本あるので方程式が解けることになります。

もちろん、例えばCのループの代わりに

  • 上側の16Ωと4Ωの両端の電圧の合計が40V

という方程式を使っても良いですし、

  • 上の16Ωと真中の80Ωとしたの16Ωの両端の電圧の合計が40V

で式を立てても勿論値を求めることができます。しかし、3つの未知数を求めるのに独立な式が3本あれば良いわけですから、何も複雑な式を採用する必要は無く、例としてテキストに挙げたABCの3つを使用することにしたわけです。

問題では、回路全体の電流I3を求めよとなっていますが、解答はi3を求めています。i3は、電源のプラス端子~左下の4Ω~右下の16Ω~電源のマイナス端子の部分にしか流れない電流のように思いますが、何故これが回路全体の電流I3と同じになるのでしょうか。

結論から言いますと、i3=I3で、これを求めれば回路全体に流れる電流I3を求めることができます。しかし、それなら回路の上側の16Ωと4Ω、そして真ん中の80Ωは無関係のような気がしてしまいますが、そうではありません。何故かと言えば、

  • 左下の4Ωにはi3-i1
  • 右下の16Ωにはi3-i2

が流れていて、このi1やi2は、上側の16Ωと4Ω、真ん中の80Ωによって影響を受ける値だからです。もし、i1=i2=0であれば、上の16Ωと4Ω、80Ωは無視してしまって構いませんが、実際にはi2もi3も流れるため、i3もそれらの影響を受け、キルヒホッフの電圧則・電流則に従って各部の矛盾がない値に落ち着くわけです。

なお、キルヒホッフの法則を用いて方程式を建てる場合、ループの取り方は色々と考えられます。例えば、この回路でi3を、電源のプラス~上側の16Ω~上側の4Ω~電源のマイナスと取って計算しても構いませんし、それでも同じ結果となります。

定義が違っても、連立方程式を解いた結果が同じ答えになるというのは妙に感じるかもしれませんが、キルヒホッフの法則を適用するためのループは、本当にその向きに電流が流れているかどうかは重要ではなく(もし計算の結果、定義とは逆の向きに電流や電圧が発生していれば、求めた数値がマイナスになるだけです)、電圧の値や電流の値が理論的に矛盾がない条件であることだけが重要ですから、ご質問頂いたような、肌身との感覚のずれが起きてしまう時もあるわけです。

(以下、2017年7月12日追加)

5のキルヒホッフの法則でループの例題が解からなく、これはテブナンの定理とかでも答えが出せるのでしょうか?ループになること自体が理解できていません。(電流が分流して16Ωと4Ωにaからd側の方向に流れるのでは?)

キルヒホッフの問題ですが、原点に立ち返って考えてみます。

電気回路で電流が流れるということは、必ず周回(ループ)になっているはずです。乾電池でもコンセントでも、出てきた電流は必ず同じだけ戻っていきます。

そして、そのループの中に抵抗や電源が複数含まれていても、それらの発生電圧と電圧降下は必ず辻褄が合っているはずです。

これをもとに考えると、i1のループは、

  • 左上の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+真中の80Ωの両端に発生する電圧(上側を正とする)+左下の4Ωの両端に発生する電圧(右側を正とする)=ゼロV

となるはずです。同様にして、i2のループでは、

  • 右上の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右下の16Ωの両端に発生する電圧(右側を正とする)+真中の80Ωの両端に発生する電圧(下側を正とする)=ゼロV

となります。この時に気を付けるのは、現実の回路で抵抗の両端の電圧がどちらが正であるかは関係なく、あくまでもループを定義した中での合計電圧の辻褄が合う、という事だけに注目しているという点です。

そしてi3のループについては、

  • 左下の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右下の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)=40V

という条件になります。もちろん、

  • 左上の16Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)+右上の4Ωの両端に発生する電圧(左側を正とする)=40V

という条件を用いても構いません。

以上の式を連立させることで各々の電流値が求まることになります。

キルヒホッフの法則を立てる際、どうしても現実に流れる電流の向きに引き摺られそうになりますが、「現実の回路で抵抗の両端の電圧がどちらが正であるかは関係なく、あくまでもループを定義した中での合計電圧の辻褄が合う」という点に気を付けて頂ければ理解しやすいかと思います。

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