「SAT電験3種講座」タグアーカイブ

平成29年度電験3種問題解説・機械問13

【解答】(4)

誘導加熱は、導電性の被加熱物に対して外部から交番磁界を与え、それによって被加熱物内部に発生する渦電流によるジュール熱を用いて加熱する方法です。誘導加熱の特徴は次の通りです。

  • 渦電流を利用するため、金属の加熱に利用される。
  • 被加熱物の透磁率が高いと、被加熱物内部の磁界が強くなるため加熱されやすい。(銅やアルミよりも鉄やステンレスの方が透磁率が高い)
  • 渦電流の浸透の深さは、導体の抵抗率・透磁率・周波数によって影響を受ける。
  • 印加する交番磁界の周波数が高くなると、表皮効果のため電流が被加熱物表面に集中するため、発熱は表面に集中し内部が加熱されにくくなる。

以上より、誤った記述は(4)となります。

平成29年度電験3種問題解説・機械問12

【解答】(4)

電動機の機械的出力は、仕事の単位で考えるとトルク×角回転数で求めることができます。この回転運動をロープと滑車などで直線運動に変換すると、力学的な仕事は力×距離となります。エレベータなどの鉛直方向の運動体を引き上げるとき、位置エネルギはmghで求められますから、単位時間にした仕事は速度に比例し、トルクは一定であることが分かります。

空気や水などの流体を搬送する場合は、それらの流体に運動エネルギmv2/2を与えることになります。したがって、必要となるトルクは速度の2乗に比例します。

電動機に羽根を設けて送風する場合、空気の流量(体積)は、羽根の断面積×風速で求められますから、風量と風速は比例します。風量と空気の質量は比例しますから、空気に与える運動エネルギがmv2/2であることを踏まえると、電動機に必要な電力は速度の3乗に比例することが求まります

平成29年度電験3種問題解説・機械問11

【解答】(5)

ブリッジ整流回路は、その負荷側に平滑コンデンサが接続されている場合、平滑コンデンサに貯まっている電荷による電圧より、電源側の波形の電圧が高くなっているタイミングでダイオードは通流します。

まずi1ですが、交流電圧波形が正のときに正の電流が流れますから(当然です)、電流波形1しか考えられません。次にi2ですが、回路の電圧と電流の向きを考えると、電流波形3になることが分かります。この段階で答えは(5)と決定されます。

「ダイオードは、その両端の電圧が順方向となっている場合のみ導通して電流を流す」という動作の基本を押さえ、冷静に落ち着いて考えれば易しい問題です。

平成29年度電験3種問題解説・機械問10

【解答】(2)

サイリスタは、電子素子としてはゲート電流で通流開始点を制御できるダイオードとして振舞います。ゲート電流によって点弧すると、ゲート電流を取り去っても順方向電流を流し続けることができますが、当然ながらその後に続く逆方向電流は流れません。

平成29年度電験3種問題解説・機械問9

【解答】(1)

コンデンサの誘電体は、誘電率が高いほどコンデンサを小型化できて有利であるほか、誘電体内部で損失となる誘電正接tanδが小さく、絶縁耐力が高い方が優れています。その他求められる条件についても、出題文の通りです。

電力用コンデンサは、特に高電圧・大電流(大電力)で使用されるため、電子回路用コンデンサと比較して過酷な条件下にあります。コンデンサの劣化要因として主なものは、発熱による誘電体の劣化に伴う損失(熱となる有効電力)の増加ですから、それに伴う内部圧力増加による容器の変形、異常な過熱の有無などは特に気を付ける必要があります。

平成29年度電験3種問題解説・機械問8

【解答】(4)

変圧器が最大効率となる運転条件は、鉄損=銅損のときですから、銅損が250Wとなる条件を求めれば良いことになります。

鉄損は基本的に負荷に関係なく一定の値で、銅損は巻線抵抗のジュール損ですからP=I2Rより負荷電流の2乗に比例します。定格運転時に銅損が1000Wということは、定格の半分の出力(負荷電流が半分)にすれば銅損は1/4の250Wになります。したがって、

  • 出力電力25kW時に入力電力が25kW+250W+250Wであり、その時の運転効率

を求めれば良いことになりますから、効率は

  • 25000÷25500≒0.98

と求まります。

平成29年度電験3種問題解説・機械問7

【解答】(1)

各変圧器の結線を見ると、

  • 図1はΔ―Y
  • 図2はΔ―Δ
  • 図3はY-Δ
  • 図4はV-V

結線になっていることが読み取れます。これより、図2と図4は位相差ゼロです。

図1のΔ-Y結線は二次側が進み30°、図3のY-Δ結線は二次側が遅れ30°となりますから、答えは(1)と求まります。なお、Y-ΔとΔ-Yのどちらが進み、どちらが遅れとなるかは、暗記しなくても作図によって簡単に求めることができます。

 

(2018年2月4日追記:当初の図に誤りがありましたので訂正いたしました。誠に申し訳ありませんでした)

平成29年度電験3種問題解説・機械問6

【解答】(3)

誘導機は、固定磁極が作る回転磁界中に、二次巻線として両端が低抵抗で終端された回転巻線を入れた構造です。回転巻線に流れる負荷電流は変圧器と同じ原理で誘起されますから、誘導機と変圧器はほぼ同じ等価回路で表せます。これをもって答えは(3)に決定されます。

直流機は、回転巻線に誘起される逆起電力によって回転子に流れる電流が変化するため、出力であるトルクは回転速度に依存します。誘導機は、固定巻線による外部回転磁界と回転巻線の速度差によって二次巻線(回転巻線)に誘起される電圧が変化しますから、やはりトルクは回転速度によって変化します。

直流機と同期機は、界磁磁束と電気子反作用磁束による誘導起電力が発生します。

平成29年度電験3種問題解説・機械問5

【解答】(3)

定格出力10MV・A、定格電圧6.6kVという条件から、定格電流を求めます。三相皮相電力Sは

  • S=√3VI

で求められますから、

  • I=S/√3V

より、

  • I=10000/(6.6√3)≒875[A]

と求まります。

1相分を取り出して考えると、負荷両端の電圧は

  • 6600÷√3=3811V

となり、この負荷に定格電流875Aが流れる時の負荷の値は

  • 3811÷875=4.36Ω

です。百分率同期インピーダンス80%ということは、この値の80%、すなわち

  • 4.36×0.8=3.49Ω

のリアクタンスが同期リアクタンス(同期インピーダンス)となります。したがって、三相短絡電流700Aのとき、発電機が発生している正味の電圧の値は、

  • 700×3.49=2443V

であることが求まります。

端子を解放したときに現れる電圧は、発電機の正味の発電電圧です。これが3811Vになるための界磁電流を求めるわけですから、

  • 50×(3811/2443)=78A

と求まります。(ここでは小数点以下を端折りましたが、電卓を使って省略せずに計算するとほぼ78.1Aになります)

平成29年度電験3種問題解説・機械問4

【解答】(4)

同期発電機(同期電動機)は、励磁電流によって発電電圧の大きさのほか電機子電流の力率(位相)などの特性を変えることができます。したがって、「励磁電流の大きさを変えずに励磁電圧の大きさを調整」が誤りで、「励磁電流の大きさを調整する」が正しい記述です。