SAT電験3種講座 理論 質問回答(RLC並列回路が共振周波数で電流最小となる理由)

理論テキストP62  並列共振回路

RLC並列共振回路ではインピーダンスが最大、電流は最小、力率1となりますがなぜそうなるのか分かりません。

流れる電流はRのみになるのなら直列共振と同じように電流は最大になるのではないでしょうか?文章解答だけでなく回路図を使用したり、考察なども含めて質問に解答してください。

それではまず、コイルとコンデンサの基本的な性質をおさらいします。

コイルは、電線を輪のように巻いたもので、周波数が低いほどリアクタンスが小さく、周波数が高いほどリアクタンスが大きくなります。

リアクタンスとは、素子に掛かる電圧を流れる電流で割った値で、単位はΩです。

コイルのリアクタンスを式で表すとjωLとなり、角周波数ω=2πfですから、電源の周波数をf(単位はヘルツ)として、リアクタンスはj2πfLとも表現できます。

jは虚数単位ですが、ここでは「コイルに流れる電流は、コイルに掛かる電圧の波形に対して90°遅れている」ことと等価です。したがって、電圧と電流のタイミングを考えずに各々の実効値だけを見て考えれば、コイルに掛かる電圧をV、流れる電流をIとして、V=2πfLIと表すことができます。

コンデンサは、極板を2枚対向させたもので、周波数が低いほどリアクタンスが大きく、周波数が高いほどリアクタンスが小さくなります。コンデンサに流れる電流は、コンデンサに掛かる電圧の波形に対して90°進んでいます。

コンデンサのリアクタンスを式で表すと1/(jωC)となり、こちらもコイルと同様に考えると、コンデンサに掛かる電圧をV、流れる電流をIとして、V=I/(2πfC)と表すことができます。

さて、このような性質を持つコイルとコンデンサを並列に接続すると、コイル・コンデンサに掛かる電圧は同じですから、コイルの電流はそれに対して90°遅れ、コンデンサの電流はそれに対して90°進みとなり、差し引きするとコイルとコンデンサの電流波形は互いに180°の位相差を持つことになります。つまり、コイルが電流を吐き出している間はコンデンサが電流を吸い込み、コイルが電流を吸い込んでいる間はコンデンサが電流を吐き出していることになります。

並列共振は、コイルとコンデンサがやり取りする電流値が同一になっている状態ですから、電流のやり取りがこの2素子間で完結してしまい、外部からは一切電流が流れ込まない状態です。電圧が掛かっているのに電流が流れ込まないということは、リアクタンスは無限大になるわけです。

では、RLC並列回路で電源周波数を変えたときの挙動を考えます。上記の通り、共振状態ではLC並列部分のリアクタンスは無限大ですから切り離して考えることができ、回路に残されるのはRだけですから等価的に抵抗値Rだけとなります。

この状態から周波数を下げてみます。どこまで下げるかと言えば、極端な場合としてゼロHz、つまり直流の場合を考えます。

すると、コンデンサのリアクタンスは1/(2π×0×C)で分母がゼロとなり、無限大つまり電流は全く流れず切り離されてしまうことが分かります。

一方コイルは、2π×0×LでゼロΩです。結局、ゼロΩとRが並列になっているのと同じですから、回路のインピーダンスはゼロとなり、電流はたくさん流れます。

周波数を無限大まで上げた場合は、コイルのリアクタンスが無限大になるものの今度はコンデンサのリアクタンスがゼロとなり、結局ゼロΩとRの並列ですから、回路全体のインピーダンスはゼロΩです。

上記のような極端な例ではなくとも、共振周波数からずれた周波数においては、コンデンサのリアクタンス>コイルのリアクタンスもしくはコンデンサのリアクタンス<コイルのリアクタンスという状態になり、LC並列のリアクタンスの差し引き分は共振状態の無限大のリアクタンスよりも必ず小さくなり、その小さくなったある値のリアクタンスと抵抗Rの合成インピーダンスは、当然共振状態よりも小さくなり、回路に流れる電流は増加することが分かります。

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