「理論」カテゴリーアーカイブ

SAT一陸特講座 質問回答(電子回路における負荷抵抗と信号の受け渡し方法)

トランジスタとFETの説明で、出力の電流の変化を、電圧に変化させるために負荷抵抗をいれるとの説明がありました。通常、高周波信号は、電流変化と電圧変化のどちらで取り扱うべきものなのでしょうか。

信号の変化といえば、電圧の変化のことを言っていることが多いと感じます。また、信号を電流変化で取り出すことがダメな点があればお教えください。

おっしゃる通り、通常、信号の受け渡しと言えば電圧の変化で定義します。

何故かと言えば、電圧の出力は放っておいても(端子を開放した状態にしていても)何も起きませんが、電流出力にすると、端子を開放すれば端子間抵抗が非常に大きな値となり、そこに無理やり電流出力を流そうとするとV=RIより極めて高電圧が発生してしまい、取り扱いづらいからです。

大電流を測定するために用いる変流器は、原理上電流出力にせざるを得ないため端子開放は厳禁であり、このことは強電関係の資格試験でも良く出ています。

高周波信号は、普通は電圧出力でも電流出力でもなく、電力で取り扱います。これは、極めて高い周波数の交流信号に対して電圧や電流を測定することが難しいということと、信号の受け渡しにおいて必要なのはエネルギー(=電力)であり、線路インピーダンスが変わっても不変である電力を基準にして考えるのが合理的という事情があります。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(RLC並列回路が共振周波数で電流最小となる理由)

理論テキストP62  並列共振回路

RLC並列共振回路ではインピーダンスが最大、電流は最小、力率1となりますがなぜそうなるのか分かりません。

流れる電流はRのみになるのなら直列共振と同じように電流は最大になるのではないでしょうか?文章解答だけでなく回路図を使用したり、考察なども含めて質問に解答してください。

それではまず、コイルとコンデンサの基本的な性質をおさらいします。

コイルは、電線を輪のように巻いたもので、周波数が低いほどリアクタンスが小さく、周波数が高いほどリアクタンスが大きくなります。

リアクタンスとは、素子に掛かる電圧を流れる電流で割った値で、単位はΩです。

コイルのリアクタンスを式で表すとjωLとなり、角周波数ω=2πfですから、電源の周波数をf(単位はヘルツ)として、リアクタンスはj2πfLとも表現できます。

jは虚数単位ですが、ここでは「コイルに流れる電流は、コイルに掛かる電圧の波形に対して90°遅れている」ことと等価です。したがって、電圧と電流のタイミングを考えずに各々の実効値だけを見て考えれば、コイルに掛かる電圧をV、流れる電流をIとして、V=2πfLIと表すことができます。

コンデンサは、極板を2枚対向させたもので、周波数が低いほどリアクタンスが大きく、周波数が高いほどリアクタンスが小さくなります。コンデンサに流れる電流は、コンデンサに掛かる電圧の波形に対して90°進んでいます。

コンデンサのリアクタンスを式で表すと1/(jωC)となり、こちらもコイルと同様に考えると、コンデンサに掛かる電圧をV、流れる電流をIとして、V=I/(2πfC)と表すことができます。

さて、このような性質を持つコイルとコンデンサを並列に接続すると、コイル・コンデンサに掛かる電圧は同じですから、コイルの電流はそれに対して90°遅れ、コンデンサの電流はそれに対して90°進みとなり、差し引きするとコイルとコンデンサの電流波形は互いに180°の位相差を持つことになります。つまり、コイルが電流を吐き出している間はコンデンサが電流を吸い込み、コイルが電流を吸い込んでいる間はコンデンサが電流を吐き出していることになります。

並列共振は、コイルとコンデンサがやり取りする電流値が同一になっている状態ですから、電流のやり取りがこの2素子間で完結してしまい、外部からは一切電流が流れ込まない状態です。電圧が掛かっているのに電流が流れ込まないということは、リアクタンスは無限大になるわけです。

では、RLC並列回路で電源周波数を変えたときの挙動を考えます。上記の通り、共振状態ではLC並列部分のリアクタンスは無限大ですから切り離して考えることができ、回路に残されるのはRだけですから等価的に抵抗値Rだけとなります。

この状態から周波数を下げてみます。どこまで下げるかと言えば、極端な場合としてゼロHz、つまり直流の場合を考えます。

すると、コンデンサのリアクタンスは1/(2π×0×C)で分母がゼロとなり、無限大つまり電流は全く流れず切り離されてしまうことが分かります。

一方コイルは、2π×0×LでゼロΩです。結局、ゼロΩとRが並列になっているのと同じですから、回路のインピーダンスはゼロとなり、電流はたくさん流れます。

周波数を無限大まで上げた場合は、コイルのリアクタンスが無限大になるものの今度はコンデンサのリアクタンスがゼロとなり、結局ゼロΩとRの並列ですから、回路全体のインピーダンスはゼロΩです。

上記のような極端な例ではなくとも、共振周波数からずれた周波数においては、コンデンサのリアクタンス>コイルのリアクタンスもしくはコンデンサのリアクタンス<コイルのリアクタンスという状態になり、LC並列のリアクタンスの差し引き分は共振状態の無限大のリアクタンスよりも必ず小さくなり、その小さくなったある値のリアクタンスと抵抗Rの合成インピーダンスは、当然共振状態よりも小さくなり、回路に流れる電流は増加することが分かります。

2017年版 SAT電験3種講座テキスト誤植訂正(理論編17ページ)

理論編のテキストの17ページのBのループの方程式についてです。図を見て考えればテキストに書いてある式になるのは分かるのですが、赤い文字の説明を式にすると、80(i2-i3)になると思うのですが、どうでしょか?よろしくお願いします。

テキストの該当箇所を確認しましたが、ご指摘通り、赤文字の解説文の誤植でございます。

  • 「80Ωの抵抗には下から上にi2、上から下にi1

と訂正の上お詫び申し上げます。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(テブナンの定理の説明における誤り)

理論編のdisk1の 07・テブナンの定理のH25年の問6の説明で60分の10 が3分の5だと言っているのですが意味がわかりません。60分の10は6分の1ではないのですか?3分の5とは何の事を言っているのですが?

 

ご指摘の通り、この問題は最終的に「60Ωの抵抗に10Vの電圧が掛かり、流れる電流は60分の10アンペア、これを約分すると60分の10→30分の5→6分の1となり、1÷6≒0.17アンペアと求まる」ことになります。

3分の5は単純な言い間違いでして、もちろんこれは30分の5が正しいものとなります。

混乱させご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。また、ご指摘いただいたことについて深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(電験3種 平成26年 理論 問15(b) 過去問解説 力率計算の誤り訂正)

この様に解説がありましたが、並列の場合の力率はインピーダンスから求めるのではなく、電流の比か、抵抗の逆数から求めるのでないのですか?解説の通り計算すると、解答と合わないので、確認お願いします。

さて、御指摘の件ですが、おっしゃる通り、並列ですから力率は直列の場合とは反対になります。すなわち、

  • 力率=(抵抗に流れる電流)÷(全負荷合成電流)

または、抵抗・リアクタンス・インピーダンスを用いるのであれば、

  • 力率=(リアクタンス)÷(インピーダンス)

になります。

  • (リアクタンス)÷(インピーダンス)=sinθ

と書いてしまいましたが、御指摘の通り、並列の場合はこれはcosθとなります。動画中、ついいつもの直列回路のことが頭にありsinθとして話をしてしまった訳です。大変申し訳ありませんでした。また、御指摘いただきまして誠に感謝申し上げます。ありがとうございました。

SAT電験3種講座 理論 質問回答(コイルとコンデンサのベクトル図の誤りについて)

疑問点というよりも、恐らく表記ミスだと思いますが一応その個所について質問という形で確認をお願いします。
前回の質問についてご丁寧なご回答をありがとうございます。確かにRLC直列回路のインピーダンスの説明の結論のところでは少し違和感を感じながら説明されている感じがしますね。それで、理論編の14RLC直列回路も拝聴したところ、コンデンサのインピーダンスの説明のところでもDVD画面の説明文の中で途中から、本来コンデンサとあるべきところだと思うのですが、コイルという表記になっています。テキストではありません。コイルのインピーダンス:jwc/1=-j・wc/1とあるのはコンデンサーのインピーダンスの間違いだと思います。
当初はねこ電のところでもコンデンサとコイルの言い間違いではないかというところがありましたので、相当混乱しましたが理解が進むと簡単な間違いなんだなと自分でもわかるようになりました。質問によって確認してほしいとのことでしたので改めて質問しました。

**様

いつもながら恐れ入ります。メール頂きありがとうございます。

今回の講座では、種本となる「丸覚え!電験三種 公式・用語・法規の超重要ポイント」を元に、まずは書籍内の図を外部業者にトレースしてもらい、そのデータを用いて私がPowerpoint上でビデオ収録用の資料を作成して解説しています。さらに、ビデオ収録が2015年の夏、テキスト執筆が2015年暮に初版、2016年暮に改訂版という流れでして、図のトレースミスや私の勘違いなどもあり、100%完璧な講座とはならなかったことは深く反省し今後の改善につなげていきたいと考えております。

重ね重ね、お付き合いいただき本当に有難うございます。今年2017年の夏に講座ビデオ、テキスト共に全面的に改定する予定ですので、反省を踏まえて出来る限りミスや解説漏れなどの無いように尽くしていきたいと考えております。

2017年版 SAT電験3種講座テキスト誤植訂正(理論編)

  • P17の⑥の式

誤:-i1-4i2+5i3=40

正:-i1-4i2+5i3=10

  • P62の中段箇所

誤:共振状態において、RL並列部分の合成リアクタンスは無限大

正:共振状態において、LC並列部分の合成リアクタンスは無限大

  • P95P.55の計算式、上の囲みの2行目

最後の「-j」の前に「=」を追加

  • P105の解説の欄

誤:F=μH

正:F=mH

  • P116の中段箇所の相互インダクタンスの解説

M=μSN1N2/I(アイの大文字)→M=μSN1N2/ℓ(エルの小文字)