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SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成27年 電力 問14 過去問解説 磁性体材料の特性と利用方法)

正解より、鉄心材料は、保持力が大きく、飽和磁束密度が小さくヒステリシス損が小さい材料が選ばれる、とのことです。この理由(関連付け)がわかりません。また、磁性材料は下記2種類に大別されますが、それぞれ、なぜそのものを選ぶのかも、よくわかりません。併せて、教えてください。

(1)磁心材料

透磁率、抵抗率、飽和磁束密度→大きいものを選ぶ

保持力、残留磁気→小さいほうが有利

(2)磁石材料

保持力、残留磁気→大きいものを選ぶ

鉄心は、変圧器において、巻線で作り出した磁束を効率よく低損失で通過させる必要があります。そして、変圧器は50Hzや60Hzの交流で使用されますから、鉄心の中も一秒に50回や60回、磁束の向きが変化します。したがって、磁束を効率よく低損失で通過させる=透磁率が高い必要があります。

また、出来るだけ大量の磁束を通すことが出来る方が好ましいですから、飽和磁束密度が大きいものが有利です。

鉄心の中を磁束が変化して流れると、それによって鉄心には渦電流が発生しますが、鉄心の電気抵抗が小さいと、この渦電流が大きくなり損失が増えますから、抵抗率は大きい方が有利です。

 

磁石材料は、永久磁石を思い浮かべて頂ければ結構です。

磁性体材料は、鉄心なども同じですが、金属の内部には極めて微小な磁石が大量に存在しています。これを外部からの磁界によって一方向に揃えると、その材料は永久磁石になります。このとき、外部からの磁界で揃えられた微小磁石について、その方向の保ちやすさの指標が保持力です。つまり、保持力が大きい材料は、時間が経ってからも強い磁力を保つことができます。

残留磁気は、上記のように外部からの磁界によって与えられた磁気が、外部磁界を取り去った後にどのくらい残留するかという値ですから、これも大きいほうが永久磁石の材料として好都合です。

問題の正解は(2)ですが、この問題は「誤っているものを選べ」という問題ですから、記述中の「飽和磁束密度が小さく」が誤りで、「保持力が小さく、飽和磁束密度が大きく」とあれば正しい記述になります。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成24年 電力 問7 過去問解説 安定度制約の意味と概念)

電力過去問24年問7

安定度制約とはなんでしょうか?直流、交流の安定度の制約の違いについても教えてください。

「安定度制約」ですが、これは交流送電と直流送電の俯瞰的イメージを正しく持つことが必要になります。

電気回路的には、交流だろうが直流だろうが、発電ー送電ー消費、と電線で結ばれているだけです。しかし実際には、複数の発電所から複数の変電所を通り、ときには結合、時には分岐して最終的な電力消費点まで運ばれています。また、発電所から消費地までの距離は数百kmなどの長距離であることも多く、いくら電気の伝わる速度が1秒間に30万kmという高速であったとしても、途中の対地静電容量、送電線のリアクタンス、変圧器の作用などの様々な影響を受けることで過渡的に電流や電圧の揺らぎが発生し、各発電所からの送電電力や位相などが時間的に脈動するという現象が現れます。これを物理的・数学的に解析するのは非常に大変なのですが、身近な例で何か分かりやすい置き換えがないかと考えたところ、次のような例が思い付きました。

 

色々な方面から道路が集まってきて、大きな一つの道路になるという状況を考えます。このとき、集まってくる道路は各々に様々な性質を持っています。

  • 1車線の道路だけど、ここまでに途中2車線になったり3車線になったり、また1車線に戻ったりして最終的に1車線でやってくる道。
  • 2車線の道路だけど、途中1か所で1車線に絞られて、また2車線に戻ってやってくる道。
  • 3車線の道路で、途中車線が変わることなく3車線のままで来る道。
  • 4車線の道路で、途中8車線に膨らんで、最後でまた4車線に絞られて来た道。

これらが集まって合計10車線になったとします。

この10車線の道が渋滞してあまり進まないとき、ここに至る4本の道からは車線数に比例して車が入ってきます。

適度に流れているときも、まあほぼ車線数に比例して車が入ってくるでしょう。

ところが、この10車線の道に全く車がおらず、4本の道から可能な限り最大の車が流入してくるとしたら、それぞれの道の途中の車線の状況が影響し、1:2:3:4で綺麗に比例して流れ込むことにはならないはずです。つまり、10車線を全速力で車が走ることはできず、そこに至るまでの4本の道の途中の性質が影響として出てきてしまいます。

つまり、交流送電線路の途中のリアクタンスや静電容量、変圧器の特性の影響などが存在する(=道路の途中に幅広部分があったり絞り部分があったりする)場合、多数の送電線路を連結して電力を供給するとき、それらの送電線路の能力100%の電力を供給しようとすると、それぞれの経路に過渡的な偏りが生じてしまい、その結果電力供給が不安定になってしまいます

この不安定さを緩和するためには、合流して10車線になった道路に適度に渋滞がある(=その100%の能力を供給せず、ある程度の所で電力を抑える)ことが必要となります。これが安定度制約です。

一方、直流送電の場合は、その「途中の車線の状況」が存在せず、1車線なら最初から最後まで全部1車線、3車線なら常にずっと3車線の道が合流しますから、たとえ10車線の道が可能な限り最大の車を流していても、それは綺麗に1:2:3:4と配分され、それぞれの道が割合ごとに綺麗に車の量を分担することになります。つまり100%の能力を発揮しても安定して送電ができることになります。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成25年 電力 問13 過去問解説 配電線路の電圧降下計算)

H25電力過去問題、問13について質問です。

A-B間の電圧降下E=√3×100×(0.3×0.8+0.2×0.6)は問題ないのですが、S-A間の電圧降下を求める際に、A点での電流が150+100=250Aで算出すると回答が導かれるのですが、なぜ250Aになるのでしょうか?どのように解釈すればよいのでしょうか?お手数ですが、ご教授お願いします。

この問題の図は、電源SからA点までの電線1km、そしてA点からB点までの電線1kmが引かれ、B点での負荷電流はS~A~Bと2km流れ、A点での負荷電流はS~Aと1km流れて供給されています。

従って、S~Aの間は、A点での負荷電流とB点での負荷電流が一緒に流れることになります。

 

 

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成26年 電力 問7 過去問解説 配電線路の電圧降下と負荷電力の計算)

電力 H26-7 掲題の問題ですが、近似式は。v=√3I(Rcosφ+Xsinφ)と公式暗記しているのですが講義の内容の、解答プロセスがよくわかりません。詳細な解答プロセスを、ご教示お願い致します。以上、宜しくお願い致します。

>v=√3I(Rcosφ+Xsinφ)

この式はその通りです。これを用いて答えを求めます。

まず、1km1線あたりの抵抗が0.45Ω、リアクタンスが0.25Ω、配電線路が2kmですから、

  1. R=2×0.45=0.9Ω
  2. X=2×0.25=0.5Ω

となります。また、遅れ力率85%ということはcosθ=0.85ですから、cos^2θ+sin^2θ=1の関係から、sinθ=0.53が求まります。

以上より、

  • v=√3I(0.9×0.85+0.5×0.53)=1.784I

が求まります。

問題の条件から、負荷の端子電圧6.6kVに対して上記の式で計算できる電圧降下がその5%以下ですから、

  • 1.784I<6600×0.05

となり、これを解くと

  • I<185

が求まります。すなわち線電流が185A以下なら良いことになります。

以上、負荷の端子電圧と線電流、力率が求まりましたから、負荷電力は、

  • √3×V×I×cosθ=√3×6600×185×0.85≒1798kW

と求まります。

問題をパッと見るとどのように解いたら良いのか見当がつかない気もしてしまうかもしれませんが、ゆっくり落ち着いて順番に考えれば、それほど難しくないことがお判りいただけたかと思います。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成25年 電力 問15b 過去問解説 汽力発電所の排熱計算)

電力 H25-15(b)

題記の問題ですが、解説の方を、詳しくお願い致します。

まず、エネルギ保存の法則より、発生したエネルギ(熱エネルギ、電気エネルギ・・・etc)の総量は保存されます。燃料を燃やして発生した熱のうち、例えば38%が電気エネルギになるのであれば、残り62%のエネルギは空気中や冷却水などに失われていきます。

次に、火力発電所の構成ですが、燃料を燃やして作った熱エネルギを水蒸気のエネルギ(熱エネルギ等)に変換し、それでタービンを回して機械エネルギを作り出し、その機械エネルギで発電機を回して電気エネルギを得ています。また、タービンの出力に出てきた使用済み蒸気が持つ熱エネルギは、基本的には海水などで冷却することで失われていきます。

さて、題意より発電機効率が98%、そしてこの発電所の発生電力量が186[MW・h]であったことから、発電機の軸に送り込まれる機械エネルギは、186/0.98で約190[MW・h]ということになります。

タービンは水蒸気の熱エネルギ等を受けて機械エネルギに変換する装置ですから、この熱消費率が8000[kJ/(kW・h)]より、タービンで消費される(タービンに送り込まれる)熱エネルギは、

  • 8000×190×1000[kJ]

となります。1000を掛けているのは、タービン出力の機械エネルギの単位をMW・hからkW・hに変換するためです。

次に、タービンの軸出力を求めます。(タービンに送り込まれるエネルギ)-(タービンの軸出力)が、捨てられる熱になるからです。これを求めると、

  • 44000×40×1000×0.38×(1/0.98)

となるので、タービンの出力となる余剰排熱は、

  • 8000×190×1000-44000×40×1000×0.38×(1/0.98)=8.38×10^8[kJ]

となります。

一方、水が吸収する熱量は、比熱×温度差×密度×体積で求められますから、

  • 8.38×10^8=4.0×7×1000×(3600×V)

これを解くと、約8.3が求まり、答えは(2)となります。

ポイントは、(燃料の燃焼で発生した熱量)-(発電した電力量)が海水の廃熱になる訳ではないという点です。燃料の燃焼で発生した熱量のうち何割かが水蒸気のエネルギになり、水蒸気は送られる途中で熱エネルギを失い、タービンの機械的出力が100%電力になる訳ではなく機械的・電気的損失も生じる・・・というわけで、この問題においては、純粋にタービンに送り込まれる熱量と、タービンの機械軸から取り出されるエネルギ量の差を求める必要がある点でしょう。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(汽力発電所のT-S線図)

電力のテキストの15ページの例題でDからEで温度が下がってEとAは同じ温度になっているのですが、冷却前と後で何故同じ温度なのですか?よろしくお願いします。

図のE→Aの部分ですが、これは高温・高圧の水蒸気がタービンで膨張した後、低温・低圧になったものを復水器で水に戻す部分です。

これは、高温と低温は逆になりますが、身近な例でいえば降り積もる雪が水を張った池に降り注いでいるような状態です。

池に着水する直前までの雪は氷点下の温度ですが、大量の水が張ってある池に着水した瞬間に瞬時に溶けて水と同じ温度になってしまいます。厳密にいえば着水した瞬間からの短い時間は、水の温度も若干下がりますが、雪よりも圧倒的に水の量が多いため、すぐに水は元の温度に戻ります。

このグラフも同じで、E点の直前は水蒸気が液体である復水に接触する直前、そしてE点の直後は水蒸気が水に吸収された直後です。E点からA点に向かうほんの少しの間は若干温度は高くなっているはずですが、ほぼ無視できる値であるため、E~A間は完全に等温と近似して描いてしまっているわけです。

もっとも、池に雪が降り注いでいる場合、雪は少しずつ池の水を冷やしますから、どこかに池の水を加熱する温源がない場合、やがて池の水は凍ってしまいます。熱サイクルも同じですが、こちらは海水などの低温源に対して常時放熱していますから、復水の温度は上昇せず一定温度を保っていられる、ということになります。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成23年 電力 問6 出題文の意味)

電験3種電力H23年問6に関しての質問です。(4)、(5)の文章の意味が理解できないので詳細を説明して頂いてもよろしいですか。

(4)ですが、地線とはアースされている電線のことです。つまり、横から見ると、上から電力線・アース線・通信線の順番になっているという意味です。

このとき、電力線とアース線の間がコンデンサ、アース線と通信線との間がコンデンサとなりますが、電力線からの静電誘導はアース線によってアースされてしまい、通信線に対する静電誘導を遮蔽する役割を持ちます。

しかし、文章では「電磁誘導」となっているので誤りです。文中、静電誘導と電磁誘導が逆であれば正しい記述です。

(5)ですが、同軸ケーブルは外皮が接地されて中心線がシールドされている構造になっています。したがって、これは電磁誘導にも静電誘導にも強い構造です。

光ファイバはそもそも電流を通さず光しか通していないので、電磁誘導も静電誘導も受けません。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(地中送電線路の性質とフェランチ効果の生じる原理)

電力編の32ページで、動画の説明で電線は周りが絶縁体に囲まれているから電線はコンデンサーとみなせるとのことでしたが、これは電線と大地が電極で、絶縁体が誘電体とみなすからでしょうか。

その通りです。離れた2点間に導体があり、その間に絶縁体が挟まれている構造になっているものは、全てコンデンサの性質を持ちます。

身近な例は、人間の体とドアノブ(離れた2点間の導体)の間に空気(絶縁体)が挟まれていればコンデンサとなり、そのコンデンサに電荷が溜まることで電位差が発生し、ドアノブに触れた瞬間に放電するのも、人体とドアノブの関係がコンデンサの極板と全く同じだからという事になります。

あと、原理上送電ケーブルの対地静電容量が大きいため、軽負荷時のフェランチ効果による電圧上昇を起こしやすいの部分を詳しく説明いただけないでしょうか。

ケーブルの対地静電容量が大きい場合、それを電源側から見ると、抵抗(送電線路の抵抗成分)とコイル(送電線路の誘導性リアクタンス)とコンデンサ(ケーブルの対地静電容量)が直列に接続されているように見えます。

つまり、これは理論で学んだRLC直列回路そのものです。

例えば、RLC直列回路において、Rが6Ω、Lが+j20Ω、Cが-j12Ω、そして電源電圧が10Vだったとします。

このとき、LCの合成リアクタンスが+j8Ωですから、RLCの合成インピーダンスは√(6^2+8^2)=10Ωです。

電源電圧が10Vでインピーダンスが10Ωですから、この回路には1Aの電流が流れます。

そして、-j12Ωのリアクタンスを持つコンデンサに1Aの電流が流れるということは、その両端に生じる電圧は12Vとなり、なんと電源電圧を超えてしまうことになります。

これは計算上そうなるだけでなく、本当にそうなります。電源電圧を超えるのは一見矛盾するように思えますが、これも理論で解説しました通り、LC直列部分は互いの性質が打ち消し合うため、このような事が起こりえます。

したがって、送電線路においても末端部分の対地静電容量が大きくなると、これと同じことが起こって送電端よりも電圧が上昇し、そのせいで絶縁破壊などの事故が起こる可能性がありますから注意しなければならない訳です。

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成23年 電力 問16 過去問解説 三相短絡時の短絡電流と変圧器の二次側電圧計算)

掲題の解答ですが、講義回答のイメージが、まったくつきません。プロセスがわかるような、式、図等を教えていただきませんでしょうか?以上、宜しくお願い致します。

まず、Y-Y結線で66kV:22kVで、一相当たりについて考えると、変圧器を一次側から見たインピーダンスが0.018+j8.73Ω、そして二次側に接続されている短絡線路のインピーダンスが0.10+j0.24Ωであるところまでは宜しいかと思います。

ここで、「一次側から見た0.018+j8.73Ω」を二次側に移すことで短絡線路のインピーダンスと合計できるようになるため、変圧器の巻数比を用いて変換します。

理論で出てきた通り、インピーダンスは巻数比の2乗で変換されますから、一次側から二次側に移すと1/9になり、変換後の二次側インピーダンスは0.102+j1.21Ωとなります。

ここに相電圧の(22/√3)kVが掛かるため、流れる電流は約10460Aと求まります。

(b)問題ですが、これは「二次側の0.10+j0.24Ωに10460Aの電流が流れるときに発生する電圧」そのものを求めれば良いので、

  • 10460×√(0.1^2+0.24^2)=2719.6V

と求まります。しかし、これは一相当たりについて求めた値ですから、三相電圧の場合はこれに√3を掛けて4710Vが答えとなります。(解答選択肢の1番が引っ掛けになっています)

SAT電験3種講座 電力 質問回答(電験3種 平成26年 電力 問16 過去問解説 ケーブルの充電電流からアドミタンスを求める問題)

一相あたりの対地電圧が38.11になる理由がわかりません考え方を教えてください。

三相交流の電圧は、線間電圧をもって表します。

理論の「三相交流のY結線」で示されたように、線間電圧66kVの三相交流であれば、その中性点(=接地点)に対する電圧は√3で割った値になります。

三相一括のリアクタンスから一線あたりのリアクタンスを求めるのになぜ3倍するのですか?

リアクタンスは、コンデンサ(=ケーブルの対地静電容量)に掛かる電圧を流れる電流で割った値です。

したがって、これは抵抗の並列接続と同様、同じ値のものが2本並列であれば合成リアクタンスは1/2、3本並列であれば1/3になります。

ここでは3本並列の合成リアクタンスが求まっていますから、逆算して1本あたりはその3倍という事になります。